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老いとロック

 10年ばかり前、人間ドック受診の際に病院の待合室で雑誌を読んでいたら、つけっぱなしのテレビでハズキルーペか何かの紹介をし始めた。
 老眼というのがどういうものかよくわからないからピンとこないいまま、ただ「歳をとると面倒だねぇ」と思ったのだけれど、その直後、雑誌を持つ手が随分遠くなっているのに気が付いた。
 あ、と思って近寄せたら何だか見づらい。なるほど、これが老眼かと得心した。そうして、「俺、老いてるじゃんww」と思ったら何だかじわじわ笑えてきた。

 それ以降、時の流れとともに目の按配は段々笑い事で済まなくなってきた。
 元が近眼だから老眼鏡に掛け替えたってそもそもピントが合わない。近眼鏡の上から老眼鏡を掛ければ見えるけれど、それではちょっと格好が悪い。幸い裸眼で近くだったら見えるから、近頃では本などを読んだり、字を書く際には眼鏡を外す。これで一応の用は事足りる。ただし、掛けたり外したりが甚だ面倒くさい。

 数年前、バンドでライブをやった。
 眼鏡でなくコンタクトレンズを着けて行ったら、リハーサルでギターアンプの目盛が全く見えなくて驚いた。眼鏡だったら外せば見えるが、コンタクトではそうもいかない。しようがないから近くにいた若いスタッフをつらまえて、「君、すまないが、この目盛が今いくつに合わせてあるか読んでくれたまえ」と云って教えてもらった。
 それから、20歳の頃に作った曲を演奏した。あの頃は、まさかアンプの目盛が見えなくなるなんて思いもしなかったなぁ、と思った。

 リハの後、さすがに不便だから近くの百均で老眼鏡を買ってきたが、別段使うこともないままどこかへやってしまった。

よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。