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ニセ関西弁

 ニセモノの関西弁が嫌いだ。あれを使う人はあんまり信用できない。どうにも不自然なのに、当人は上手く擬態しているつもりなのが、聞いていてじりじりしてくる。

 大学入学で大阪に移り住んだ時、広島弁が通じないのに驚いた。
 学生寮でつるむのはたまたま山口や岡山出身の者ばかりで大丈夫だったが、学校はまるで駄目だった。
 ゆっくり話せば通じるだろうと思って無闇にゆっくり話したけれど、やっぱり通じない。
 どうも速さの問題ではないらしいとわかったので、標準語に切り替えたらどうやら通じた。それから段々イントネーションを関西弁っぽくしてみた。
 そうやってニセ関西弁で話していると、何だか今までの恥ずかしい記憶を切り捨てて、違うものになれる気がした。
 これはいいものを見付けたとばかり、郷里に帰った後もずっとそれで通した。今思い出すと随分恥ずかしくて、体の中を毛虫が這いずり回るような心地がする。
 大阪を離れて十年後にようやく不自然だと気が付いて、それからは使うのを止した。

 先日、職場で対応した客人が関西訛の人だったが、どうも何だか耳につく。よくあるニセ関西弁より随分上手だけれど、わざとらし過ぎるからきっとネイティブではないだろうと当たりをつけた。
 後から訊いたら、やっぱり違う。
「出身は名古屋ですが、大学時代に京都にいたものだから、すっかり染まったんですよ」と、昔の自分と全く同じことを言うのでうんざりした。

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