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キーホルダー

 大学時代、プーさんのキーホルダーを使っていた。もう判然しないが、どこかのホームセンターで売っていたのだと思う。
 平らな板をプーさんの形に切り抜いたような案配で、長さが十センチ強あった。これだけ大きければ失くすことはない。キーホルダーとしての効能は十分である。のみならず、「何でプーさんなんだ」とか「でかっ」とか云われるネタ効果も期待できる。
 良い買い物をしたと、大いに満足したのを覚えている。

 外出する時は、それをジーパンの前ポケットに入れていた。
 宮田の部屋で駄弁っていた時、さすがに窮屈になってポケットから出すと、果たして驚かれた。
「そんな物を入れて、君は今までどうやって座っていたんだ?」
「何、プーさんだけポケットに入れて鍵は外に垂らしておくのさ。そうするとポケットの深さと腿の付け根にちょうどフィットして、存外邪魔にはならないのだよ」
 宮田は「成る程」と納得したようだった。

 就職してスーツを着るようになると、そういう仕舞い方ができなくなった。ポケットにまるごと入れることにしたけれど、これだとどうも邪魔でいけない。
 しばらく使っていたが、じきにプーさんは外してしまった。
 その後は、デニーズのレジ前で売っていた、揺らすと光るクマのキーホルダーに替えたと思う。たまたまクマが続いただけで、別段こだわったわけではない。
 勤め先で副店長だった頃で、「副長のクマが光る」とバイトの間で話題になったと聞いた。

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