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百卑呂シ言行録

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日常を切り出して再構築したもの。
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2023年3月の記事一覧

審判の日(2023/03/30)

 うっかり二度寝をしてしまい、少々焦りながら支度をして家を出た。  出社するとネルソン氏が「百さん、落ち着いたらちょっと打ち合わせをしたいのだが」と云う。次年度の売上計画について話したいらしい。あんまりそういう話は好きじゃないから今度にしてくれたまえと言ったが、聞かないからしぶしぶ応じることにした。  本題に入る前にネルソン氏は「君、あの隠し玉は結局どうだったね?」と訊いてきた。  あれはやっぱり畜山生太郎(ちくやま・しょうたろう)の暴走だったと伝えると、眉をひそめて「百さ

諜報(2023/03/29)

 イゴールさんからの密命で、引継先の畜山生太郎(ちくやま・しょうたろう)不祥事疑惑について当人へそれとなく確認したら、果たして畜山暴走の結果と知れた。  当人にはやらかしたという自覚もないのか、「あぁ、それね」とごく普通の調子で語ってくれた。なるほど、こういう感覚でズレて行ったのだなぁ、と思った。  社長に呼び出された際など、散々畜山の悪行話はしてきたが、今回ばかりは報告するのに気分が悪かった。これまでのは見聞きしたことを話していただけだが、今回は陥れる処罰という目的を隠し

畜山の窮地に隠し玉を放つ(2023/03/27)

「百さん、例の隠し玉の件は報告したかい?」と、社長室から戻ったネルソン氏が云ってきた。まだだと答えると「そのネタを出す前に、畜山は終わりかもしれない」と云う。  畜山生太郎(ちくやま・しょうたろう)が異動前に隠していた諸々の悪事が芋づる式に明るみに出て、なかなかの窮地に陥っているらしい。  いつもは定時になると挨拶もせず帰る者が、今日は「お先に帰るね」と力なく云って出て行った。相当弱っているようだ。  3年前に彼が切られかけた時は助けたが、今は庇い立てする義理もない。むしろ

自信、再会、姑獲鳥の夏(2023/03/26)

 終日雨のため、部屋で読書など。  先日ノリスケさんから勧められた資格の本をまとめて読んでみたが、全体これは独学でやれるものだろうかと、読めば読むほど自信がなくなっていけない。  独学だと、やり方が不味ければそれまでである。できるかどうかわからない不安を抱えながら勉強を続けることは大いに苦手だ。 ※  昔知り合いから借りたきりになっているギターがある。いい加減返そうと思うのだけれど連絡先がわからないから、知っていそうな面々にFacebookのメッセンジャーで連絡した。みん

パリピ候補生(2023/03/25の日記)

 朝食後、娘と妻を英会話教室に送って行った。授業の後はクラスメイト親子と遊びに行くいう。自分は一人帰宅して昨日の日記などを書いた。  夕方妻子を迎えに行ったら、何だか娘が不貞腐れている。どうしてうちの近くには遊べる施設が何もないのかと怒っている。  イオンがあるだろうと言ったら、そういうのじゃないと怒る。体育館とか図書館だってあるぜ? と言ったら「もういい!」と云ったきり黙った。  バカ野郎、わしの故郷の安芸郡マチュピチュ町なんてもっと何もなかったぞ、せいぜい "ひろでん"

隠し玉(2023/03/24の日記)

 昨夜娘から「5時40分ぐらいに起こして」と言われていたのでその通りに起こしたが、一度頭を上げたきりでまた寝だしたから放っておいた。 ※  畜山生太郎(ちくやま・しょうたろう)から引き継いだ得意先との商談で、在庫を引き取る引き取らないの問題が持ち上がった。  こちらは貴社に出すつもりでいるのだから取ってくれと言い、先方は作ってくれなんて言ってないし知らんと云う。  一体どうしてこんな行き違いになったものか、先方も担当が交代しておりお互いに伝え聞き同士となってどうにも具合が

憤怒、棚(2023/03/23の日記)

 朝一番で、スカル入道と畜山生太郎(ちくやま・しょうたろう)が揉め始めた。  正確にいうと、畜山が管理するデータの誤記についてリモート勤務のスカル入道がメールで修正を依頼したところ、スカルから仕事を振られること自体が気に入らない畜山が一人でぶりぶり怒り始めた。  畜山はネルソン氏を席に呼び付け、「君、覚えているだろう? これは営業全員でチェックしたデータだぜ?」と捲し立てた。  一方ネルソン氏は何が問題なのか理解しない様子で、「はぁ」と言った。 「チェックしたメンバーにはス

世界と土筆(2023/03/21の日記)

 休みだが、どこへ出かけるという予定もない。ちょうど頭髪が伸びて破戒僧のようになっていたから床屋へ行った。 「WBC、どうなりますかね。家を出る時に見たら1点リードされてたけど」  髪を切りながら、理容師のおばちゃんから話しかけられた。 「あぁ、リードされてた? 佐々木も凄いピッチャーだけど、ダルビッシュとか大谷と並ぶと、まだちょっと貫目が足りない感じがあるものねぇ」と適当なことを言っておいた。  野球にはあまり興味がないからそれ以上踏み込んでこられると困るなぁと思っていた

手紙、言霊(2023/03/20の日記)

 朝5時半に起こしてくれと娘が云うから、その通りに起こしてやった。予想外にすんなり起きて、シマちゃんへの手紙を書き始めた。今日が卒業式なんだそうだ。 ※  畜山生太郎(ちくやま・しょうたろう)から引き継いだQ社の遠方事業所で、またサービスイベントの要請があった。担当交代のことを知らせていないから畜山宛に云ってきた。 「どうするね? 僕が行ってもいいのだけれど、イゴールさんに確認を取ってくれたまえ」と畜山が云う。むしろ行きたそうだ。何なら自ら先方に提案したんじゃなかろうか

重いシュークリーム(2023/03/19の日記)

 冷蔵庫にケーキ屋の箱があり、開けてみるとシュークリームが入っていた。  昨日の午前中シマちゃんと奥さんが持って来たのだと、妻が云っていたのを思い出した。  シマちゃんは、娘が小学校に上がった時からこれまでずっと集団登下校の面倒を見てくれたおじさんである。先日、病気でその役をやめると聞いて、娘が手紙とクッキーと折り鶴を贈った。  余命1年と宣告されたものの、とりあえず卒業式には出られる、と喜んでいたのだそうだ。 「その卒業式って今月のやつか?」 「うーん、多分」 「来年

記憶、降りてくる、明暗(2023/03/18の日記)

 朝、図書館へ寄ってから娘を踊りの稽古に連れて行った。例の柴田教室だ。  2週間ぶりの稽古で、一緒に行っている義母は振りをすっかり忘れて凹んでいた。娘は一通り覚えており、なるほどこれが子供の力だなぁと思った。帰りに「先生は毎回言うことが違う」と嘆くから、ますます子供の力は侮れんと思った。 ※  昔の球撞き仲間ノリスケさんと久しぶりにビリヤードをやってみた。  20年のブランクは思った以上にどうにもしがたく、構えた時点でどこか違和感がある。  それでもたまに昔の感覚がふっと

虚ろな目、連行(2023/03/17の日記)

 畜山生太郎(ちくやま・しょうたろう)がなぜか今になってネルソン氏の引き継ぎバックアップに注力し始め、「販促POPを作ったよ!」とか「先方に送るデータを用意したよ!」といったメールを一々部内全員にCC送信してくる。自分は死んだ魚の目をしながら、それらを読まずに捨てる。  先日の商談時、先方担当者が「決めきれなかったことは金曜にでもリモートで話し合いましょう」と言ってきた。  こちらからは一昨日の時点で時間の希望をメールで伝えておいたが一向返信がない。気付けば今日が金曜だ。ど

朝、ネルソンの闇(2023/03/16の日記)

 朝は自分が一番早く起きて、一人で支度を済ませて出て行くのが通常だが、今朝起きると階下に人の気配がある。  きっと妻が目が眠れずに韓国ドラマを見ているのだろうと思ったら、娘が『東京リベンジャーズ』を読んでいた。  5時前から起き出して漫画を読んでいるとは意想外だ。どうしたと問うたら「なんか目が覚めた」と云う。 ※  休憩中に、非公開のライブドアブログから過去のリアル日記をコピペする作業を進めた。新しいものから始めて、2019年10月分がもうじき終わる。  コピペしながら読

愚痴とサムライ(2023/03/15の日記)

 今週いっぱいイゴールさんとネルソン氏が出張なので、きっと今日も社長から呼ばれるだろうと思っていたら果たして呼ばれた。朝と昼、都合2回呼ばれた。  2回とも、どうでもいいとまでは言わないがわざわざ今呼び出して伝えるほどとも思えない話をしておいて、「百さん、営業部としてどうだ?」などと問うてくる。部としての見解ならイゴールさんかネルソン氏に訊くのがいい。  誰かを呼び付けておしゃべりすることが話の内容よりも肝要で、それが自身の存在アピールになっているように見える。付き合わされる