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本(ZINE)の作り方

西武新宿線武蔵関から徒歩7分ほどのブックカフェ「100BOOKCAFE」のワタナベです。

今回は当店の企画で本(ZINE)を作ったので、どういう風に製作したのかを少し書いてみようと思います。

そもそも何のZINEを作ったの?って思った方に説明しますと、5人の学生に旅をしてもらって、その旅の思い出的なモノを書いて貰ったZINEです。詳しくは前回の投稿で。

前回の投稿はこちらから。

まず、ZINEとは個人で製作する本です。いわゆる同人誌もZINEの中のカテゴリーっていう事だと思います。出版社とかで作らずに自費製作した本全般をZINEって考えて良いと思います。

そんなZINEを今回初めて作りました。今回の経験で分かった本作りに必要な工程はざっくりとこんな感じ。

・内容を決める。
・構成を決める。
・印刷所を探す。
・掲載するお店などの許可を取る。
・印刷用紙を決める。
・デザイナーさんを探す。
・校正をする。

順番に関しては特に無いような気がします。最初に印刷所さんを探しても良いでしょうし、もし掲載するお店とか決まってたら本文を書く前に許可の連絡しても良いでしょうし。お店とか著作権が絡まない本だったらそもそも許可取り要らないでしょう。

ただ、基本的には「こういう本を作りたい!!」から始まると思うので、最初は内容とか本の構成からスタートするものかなと思います。

当店の場合

じゃあ、実際のウチの流れはどうだったかと言いますと

1)内容、構成を決める。
2)許可取り
3)印刷所、印刷用紙
4)校正(最終チェック)

大体こんな感じだったと思います。デザイナーさんは最初から決まってました。あと、2と3は同時期ぐらいだった様な気もします。

まず、今回のZINE製作の前提を説明します。

ZINE製作は自分含め7人でやっていました。

自分とデザイナーさん、それと執筆担当の学生5人です。全員住んでる所も学校、学科、学年もバラバラです。自分とデザイナーさんはこの企画の前から知り合いでしたが家は遠いです。

そしてこの企画はクラファンも立ち上げてた事もあり執筆の締め切りもありました。まとめると

・ZINE製作は7人。
・締め切りはある。(執筆期間約2ヶ月)
・全員住んでる場所がバラバラで集まって作業は出来ない。
・本製作の経験者はいない。

こういう環境で製作していました。

大変だったこと。

自分がやって特に大変だった事は許可取りです。
むしろ許可取り以外に大変と感じた所はないかもしれないです。

掲載店は40ぐらいあるわけですが、連絡手段がメール、問い合わせフォーム、SNS、電話、手紙とバラバラで結構大変です。ただ、ほとんどの所が連絡すると「掲載して貰って全然良いですよ!!」って言って下さったので嬉しかったです。

あとは印刷所をどうしようって言うのがありました。というのも表紙がこんな感じで

旅ZINE表紙

少しキラキラしてるんですが写真で伝わるでしょうか?
この「旅」という題字は本を執筆してる学生に書いて貰ってるんですが、ギルディングという金属箔を使用した技法と書道を掛け合わせて書いていて、その字をカメラで撮影して表紙にしています。

で、このキラキラは普通に印刷しても出せません。正直、本を作り始めた時は「5人×16ページで80ページの本になる!!」っていう所で思考停止してたので「良い本を作る」っていう意識はほとんど無かったです。というより学生が1人旅をして、それを何のフィルターも通さず本にしたらそれだけで面白い本になりそうっていう考えでした。ただ、この表紙のアイデアが出て、題字のデータが送られて来た時に「良い本にしたいな」っていう意識が少し出て来たような気がします。

そして、一番最初に問い合わせた印刷所が藤原印刷所さんって言う所で、ここはkami/ さんの本を印刷した所です。(※kami/さんには一回ウチでトークイベントをして頂いてます。)藤原印刷所さんに問い合わせしたらコールドフォイルという特殊印刷ならこのキラキラも再現出来るかもしれません。コールドフォイルなら情報印刷さんっていう所で出来ますよって教えて頂きました。

そもそもコールドフォイルって何?っていう所からだったので、ネットで色々調べてみると、ざっくり言うと箔押しに着色出来る技術らしいという事が分かって確かにこれならと思って情報印刷さんに頼む事になりました。

情報印刷町田さん

完成した本を情報印刷さんに送ったら「素敵な本ですね!今度伺います!」という連絡が来て、後日本当に情報印刷の担当者さんがお越し下さいました。正直、本当に来て下さるとは思って無かったのでめちゃくちゃ驚きました。

本文用紙

表紙カバーはそんな感じで決まりました。で、肝心の本文用紙ですが紙の種類って物凄く沢山あります。とりあえず現物を見ようと思ってお茶の水ペーパーギャラリーっていう所に行って紙見本を色々取って来たり

IMG_1724のコピー

印刷会社から紙のカタログ取り寄せたり

IMG_3010のコピー

分からないので色々な紙を触って確かめてました。結果よく分からなかったです。笑
そんな一朝一夕で最適解の紙を選べるような世界では無いんでしょう。最終的に選んだ紙は「b7トラネクスト」という紙です。正直、どういう立ち位置の紙か分かってないですが、恐らく普通紙より少し上等っていうぐらいの紙かなと思います。物凄く高級というわけではなくて、かといって安っぽい質感でも無いっていう感じです。今回の本は写真多めの本になると思ってたので、写真が映える紙で考えてたんですがデザイナーさんと相談して、それよりもせっかく本にするから本らしい温もりのある紙の方が良いのでは?っていう結論になってこの紙に決まりました。

内容、校正

基本的に学生に執筆して貰った16ページに関しては自分はほぼ口出ししていません。というのも自分が口出しするとそれは自分の本になってしまうかなと思って全部学生とデザイナーさんに任せました。デザイナーさんにもそれは伝えてて、文章、写真、レイアウトは学生に考えて貰ってそれをデザイナーさんが専用のソフトで整えていくっていうやり方です。こう書くと学生の負担が大きい気もしますが、今回のZINE製作で一番の功労者は間違いなくデザイナーさんです。勿論学生の5人も頑張ったと思いますが。そして一番楽なポジションは恐らく自分です。

まぁ、誰が大変だったかは良いとして、そんな感じで少しづつページが出来て来ます。最初の頃はレイアウトだけで文章はダミーテキストが入ってたり、写真が入る所は塗り潰した四角が入ってたり。

スクリーンショット 2022-03-22 22.29.18

↑こんな感じです。

そら君ページ

それが少しづつ文章が出来てきて、写真も入って来て、↑が本になった時の実際のページです。進捗は5人バラバラでして、新しいテキストが入ったり写真が入ったりするとデザイナーさんからデータが送られて来ます。その度に全文チェックするのは結構しんどいので、ちゃんと読んで確認したのはその学生の担当ページの文章が殆ど完成してから読んでました。そこで誤字脱字の確認と特に固有名詞の間違いが無いかのチェックをします。PDFで見てたので怪しい漢字とか単語は検索して調べて、一つ見つけたら同じ間違いをしてる所が無いか確認したり。

5人とも文体が全然違くて、少し直そうかどうしようか考えたりもしましたが、まぁこれが味かなと思ってほぼそのままです。

印刷

データが完成したら印刷所さんへ送って印刷、製本して貰います。ただ、いきなり本番の印刷ではなく安いネットプリントで1部だけ印刷しました。本はアナログなので100ページとかになってくると裁断でズレが出たり、見開きの所とか中心部分が読みづらくなったり、色味も印刷すると変わるので、そういう所を確認する為にはデータではなくて実際に印刷、製本しないと分からないです。これはデザイナーさんに教えて貰いました。そうして確認してから印刷所さんへ入稿します。

振り返り

ざっくりとこんな感じで製作してました。これはあくまで自分のポジション(ディレクション?プロデューサー?)だとこうっていうだけでして、執筆してくれた学生目線やデザイナーさん目線だとまた違うと思います。

最後に「もっとこうすれば良かった!!」っていうのがあるので、ちょっと書こうかなと思います。

全員バラバラな場所に住んでて、コミュケーションが取り辛かったけど、もう少しやりようはあったなと思います。ただ、環境もバラバラでPC持ってたりスマホだけだったりタブレットだったり、使えるソフトもバラバラだったりしたので、うーんっていう感じですね。とは言え一昔前だったら今回みたいに皆んな集まれない距離に住んでると製作自体無理な気がします。
学生が書いたページに関して一切口出ししない方向でやってたんですが、もう少しコミュケーションが取れてれば何かしら口出ししてたかもしれないですね。それが良い方に進んでたかどうかは分からないですが。

あと個人的に一番こうすれば良かったっていうのが本の構成です。これはもう、スタート時の意識と終盤の意識が全然違ったので仕方ないですが。途中で書いたように最初の頃は「5人×16ページで80ページの本になる」っていう考えで、それ以上の事は考えて無かったわけです。というのもページ数が増えるとその分印刷コストも増えて、どんどん赤字になります。このZINE企画はそもそも黒字にはならない企画なので最初の頃は出来るだけマイナスを抑えたいなっていう考えでした。それが表紙カバーの件から少し勘定がザルになって最終的に製作費の合計金額は140万ほどになってます。超赤字。で、そうなるならいっそページ数とか気にせず学生のページ以外の所ももっと作り込めば良かったなーっていうのが正直な所です。ただ、そうすると流石にデザイナーさんの負担が半端ないので、増やせてもあと2ページから4ページぐらいかなと思いますが。それ以上になるともう1人デザイナーさんを探すか、製作期間を半年とか1年にするとかしないと無理ですかね。

そんなわけで何だかんだとありましたが、結果としては最高の本が作れたんじゃないかなと思います。今回の経験を経た上で同じような本を作ったらもっとクオリティの高い本を作れる自信はありますが、何というか、勢いとか熱量は読んで頂くとかなり感じられる仕上がりになってる気がします。

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本の完成は2022年1月末でしたがコロナの再拡大などがあり中々皆んなで集まれず、3月21日に執筆してくれた皆んなとやっと集まって集合写真が撮れました。改めて良い学生達に巡り逢えたなと思います。

本単体

本は当店かネット(メルカリorBASE)にてご購入頂けます。

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コニシさん

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是非とも現物を手に取ってみて下さい。

100BOOKCAFE 渡部

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