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高山羽根子「首里の馬」

 沖縄を舞台にした芥川賞受賞作品ということで祖父がくれた。寝物語に揉みくちゃにしながら読んだ文庫本には孤独が綴じ込められていて、物語と言えるほどの筋がない。
 読み終えてしばらくしてから、あ、ちゃんとこの本、私の孤独に寄り添ってくれてたんだなと気づいた。
 寝坊した土曜日の朝、婚約者といつものビデオ通話、友達は全然いなくて、家族は弟が大学受験の当日で。私は主人公と同じ島国で一人ぽっかり浮かんでいる。選んでいない孤独だけど、別に寂しくはない。ここが私の居場所で、人々からほっとかれる場所なのだと思った。
 クイズと宮古馬と、モチーフを散りばめた小説は、紙切れやシールばかり入っていた子供の頃の宝箱に似ている。
 ラブ&ベリーの上履き入れを宝箱代わりにしていたことを思い出した。

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