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【fromラボ】ビールの苦味成分、認知機能とストレス状態を改善? キリン研究所リポート

 キリンホールディングスの研究部門であるキリン研究所は14日、順天堂大学と連携し、ビールの苦味成分として知られる「熟成ホップ由来苦味酸」が物忘れの自覚症状がある中高齢者の認知機能の一部である注意力やストレス状態を改善することがわかったと発表した。キリングループではこれまでに培ってきた「発酵・バイオ」の技術をベースに、人々の健康に貢献していく「ヘルスサイエンス領域」に経営資源を充て、収益の柱に育てようとしている。同グループは今後、熟成ホップ由来苦味酸を活用し、大学と自治体などと連携しながら脳の健康サポートが可能な社会の実現に向けた取り組みを目指す。

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ホップ

 同社はこれまでの取り組みで、ビールの苦み成分であるホップ苦味酸に認知症の予防効果や認知機能を改善する効果、抑うつ改善効果があることを突き止め、その研究成果を発表してきた。しかし、ヒトでのエビデンスが十分ではなかった。そこで今回の研究では順天堂大学と連携し、物忘れの自覚症状がある健常な中高齢者を対象に、熟成ホップ由来苦味酸を含むサプリメントの摂取が認知機能や気分状態におよぼす作用を検証することにした。

 試験方法は参加者を無作為に偽薬と実薬の群に分け、試験が完了するまでいずれの群か分からない、治験で用いられる「ランダム化二重盲検比較試験」を実施した。その結果、摂取12週目に分配性注意機能を評価する符号数字モダリティ検査の結果が熟成ホップ由来苦味酸の摂取群ではプラセボ群と比較して有意な高値を示したという。また、唾液中ストレスマーカーの一つであるβエンドルフィン濃度が熟成ホップ由来苦味酸の摂取群で、プラセボ群と比較して有意な低値を示したという。さらに、アミロイドβと結合してシナプス毒性の抑制などに関するトランスサイレチンの血中濃度が摂取12週目に熟成ホップ由来苦味酸の摂取群で、プラセボ群と比較して有意な高値を示したとしている。これまで東京大学などと行った研究では、熟成ホップ由来苦味酸は脳腸相関の活性化を通じて認知機能改善やアルツハイマー病の予防効果を示していると報告していた。

 今回の研究成果は3月18~21日に開催された「日本農芸化学会2021年度大会」で発表した。同社は3年前の18年に開催された同学会でホップ苦味酸イソα酸の認知機能に関する取り組みとして「ビール苦味成分イソα酸の海馬ドーパミン産生を介した記憶学習機能改善作用」を発表している。


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