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幻の牛乳「阿蘇の雫」と、

昨日はリモートワークだったので、近所の友人とサクッとランチに行った。彼女はわたしに会うなり「ランチ後に秋葉原に行きたい」と。

秋葉原の、駅のホームに用事があるらしい。

「秋葉原のミルクスタンドで激レア牛乳が…午後から発売になるんです…!まだ飲んだことないからどうしても飲みたくて…!!」

彼女の興奮っぷりと情報量の多さに、一瞬何の話かわからなかったが、彼女が筋金入りの牛乳オタクだったことを思い出した。

飲みたいあまり、販売している会社をTwitterでフォローしているという。彼女の牛乳に対する情熱は並大抵のものではない。

お目当ては秋葉原の駅ホームにあるミルクスタンドで、2週間に一度くらい入荷する「阿蘇の雫」。あまりの人気で即完売する幻の牛乳だ。ぶっちゃけ牛乳は得意ではないけど、そこまで聞いたら飲んでみたくなり、ついていくことにした。

電車に揺られながら「牛乳は何をもって美味しいと感じるの?」って聞いてみた。「それは人間の味覚の構造の話か、それとも牛が食べる飼料の話か」と、たいへん真剣な顔をして聞き返された。

わたしは口に入れてからのことしか考えてなかった。「美味しさ」という普遍的なものに「好き」の要素が加わると、話のスケールがこんなに膨れ上がるのか…とただただ感心してしまう。

人の味覚のちがいはともかく、牛が食べる飼料や殺菌方法によって味が変わるらしい。スーパーで買う牛乳も同じものでも季節によって味が違うんだとか。「わたしは秋冬の牛乳のほうが好きですけどね」とのこと。ここだけ聞いても牛乳愛が溢れている。

牛乳の味について非常にライトに聞いてしまったが、絞る前の、それも牛のごはんの話まで遡ってしまった。牛乳の世界は相当深いことだけはよくわかった。

実は牛を飼ってるんじゃないかと疑うくらいの知識と、溢れんばかりの牛へのリスペクト。いつかマツコの隣で彼女が牛乳愛を語っている姿が思い浮かぶ。間違いなくコイツはガチ勢だ。大好きだ。

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総武線の秋葉原駅ホームにある、ミルクスタンド。前から知ってはいたけど、改めて見ると圧巻。

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お目当ての牛乳が売っていた。彼女いわく、コーヒーよりプレーンのほうが先に売れてしまうらしい。私たちのあとに買った人も「阿蘇の雫」を買っていた。

牛乳に雫とつけるあたり、センスがぶっ飛んでいる。搾乳でピューっとするんじゃなくて、ポタポタしたたり落ちるイメージ。レア感と高級感があって、期待度が一気に上がる。

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迷うことなく両方買った。友人は、買ったそばから光の速さでフタを開け、グビグビ飲んでいた。

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あんまり牛乳を味わって飲んだことはないが、素人でもわかるくらいには美味しい。コクがありつつ後味がスッキリしている。

牛乳を飲み終えたあとの「牛乳ここにいるぜ!」的な口の中に居座る感じが苦手だったんだけど、これは後に残らない。雫というネーミングにぴったりな、とても上品な味。

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いつかみたカウントダウンジャパンのKing Gnuのステージを思い出した。ものすごく盛り上がった演奏も、終わった瞬間に何事もなかったかのようにスッと引く潔さが印象的だった。美しくて、カッコよかった。あの潔く去る心地よさが余計に鮮明に、そしてビビッドに脳裏に焼きついているのだろう。あのときに似た感動が、この牛乳にはあった。そう、これは牛乳の話だ。

さすがのKing Gnuもまさか牛乳に例えられるとは思ってもいないだろうし一緒にするなと言われるかもしれないが、わたしの中で繋がってしまったからには仕方ない。いずれにしても、またあの感動のステージを観たいし、味わいたい。難しいのは百も承知だが、阿蘇の雫を飲みながら参戦できたら感無量だ。

わたしより先に牛乳を飲み干した彼女は、「美味しい…」と恍惚とした表情を浮かべながらなにかを呟いていた。彼女なりにこの美味しさを分析していたらしい。

「わたし、牛乳の後味が苦手だったんだけど、この牛乳は口の中に残らない感じが好き」と伝えると「それは高温殺菌でホモジナイズされている牛乳が好きってことだと思います」とズバリ。やはり彼女はタダモノではない。

これからきっと、秋葉原を通るたびにミルクスタンドと彼女を思い出すのだろう。

ごちそうさまでした。




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