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WBC日本代表 #26 宇田川優希投手を知ろう

 みなさまごきげんよう。ご存知の通り、野球における世界最大の国際大会、World Baseball Classic(WBC)の開催まであと数日となりました。筆者も1人の野球ファンとして大変ワクワクしているところです。
 ところで、野球は普段見ないけど国際大会なら何となく見る、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。もしくは野球ファンでも贔屓チーム以外の選手は知らない、という方も多いと思います。この記事は主にそんな方々に向けたものです。

 今回はWBC日本代表(侍ジャパン)の選手の1人、オリックス・バファローズ所属の宇田川優希(うだがわ ゆうき)投手について簡単にご紹介します。これを機にぜひ興味を持っていただければ嬉しいです。

わずか半年で駆け上がった"シンデレラボーイ"

試合前練習中の宇田川
(2022年9月8日 ベルーナドーム)

 宇田川優希投手は1998年生まれの24歳、2020年のドラフト会議でオリックスから育成3位で指名を受けたプロ3年目の選手です。同世代にオリックスの山本由伸投手、DeNAベイスターズの牧秀悟選手がいます(いずれも侍ジャパンメンバー)。  
 今回の侍ジャパンは史上最も平均年齢が低く、特に投手は実績が少なくても2022年にブレイクした選手が多く選ばれています(阪神・湯浅京己投手、中日・髙橋宏斗投手、巨人・大勢投手など)。宇田川投手はそんな投手陣の中でも最も短期間で注目を浴びるようになった選手なのです。 

 まず育成選手として始まったプロ1年目はウエスタン・リーグ(二軍公式戦)での登板すらわずか1試合のみ、所謂三軍スタートでした。ですが2年目の夏頃から中継ぎ投手として頭角を現し、大きく飛躍することになります。 
 ここで宇田川投手の2022年7月以降の出来事をまとめてみます。

2022年
07/23 フレッシュオールスターに代替選手として出場。
07/28 支配下登録を受け、背番号013→96に変更となる。
08/03 一軍初登板
09/08 プロ初勝利
10/02 シーズン最終戦で救援登板し2勝目、オリックス優勝。
10/26 日本シリーズ第4戦で火消し登板、勝ち投手に。
10/30 日本シリーズ第7戦に登板し無失点、この日オリックスの日本一が決定。

2023年
01/26 侍ジャパン登録予定選手に選出。
02/09 侍ジャパン入りが正式に決定。背番号26。

 なんと支配下登録されてから約半年後に日本代表に内定しているのです。数多のメディアでシンデレラボーイと呼ばれるのも納得のスピード出世です。
 2022年の一軍登板はポストシーズンを含めて25試合。活躍した期間はごくわずか。何故この選手が代表に?と思われるかもしれません。しかし間違いなく、世界に通用するピッチャーとして選ばれています。その理由は「ピンチを任せられる、圧倒的な奪三振力」に尽きるでしょう。

剛速球、そして2種の"弾丸フォーク"

※ここで挙げた成績は全て2022年レギュラーシーズンのものです。データはプロ野球データFreakおよびslugger社『2023プロ野球写真&データ選手名鑑』より引用しております。

如何にも強い球を投げていそうなフォーム。
(2022年9月27日 京セラドーム)

 宇田川投手の特徴は身長184センチ、体重92キロの恵まれた体格とゆったりしたフォームから放たれる速球が約6割、フォークが約3割とほぼ2球種のみを投げているところです。ストレートの球速は最速158キロ、平均は152.3キロを記録しています。

 ですが彼の最大の武器は「魔球」や「弾丸」と称されるフォークボールです。握りを変えることで落ち幅を調整して、「カウントを整えるための小さいフォーク」と「空振りを取るための大きいフォーク」の2種を使い分けているのです。特に大きいフォークの落差は凄まじく、ブルペン捕手をして「宇田川のボールだけは取るのが怖い」と言わしめる程の力を持っています。

 パ・リーグTVがYouTubeに投球動画をいくつか上げてくれていますので見てみてください。

 速球とフォークを組み合わせたピッチングによる奪三振力は凄まじく、奪三振率(1試合=9イニング投げた際に奪える三振の数)は12.90で、パ・リーグの中ではソフトバンク・モイネロ投手(WBCキューバ代表)、楽天・松井裕樹投手(侍ジャパン)に次ぐ高さを誇ります。

 ゴロを打たせる、フライを打たせるなど、打者の打ち取り方には色々あります。しかし最も確実なアウトの取り方が三振なのは言うまでもありません。狙って三振を取れるのが、1点も与えられない、まず打球を前に飛ばさせてはいけない状況では最も信頼できる投手なのです。それを象徴するのが昨年の日本シリーズ第4戦でした。この試合で宇田川投手は1点リードの5回に1死3塁のピンチで救援登板し、打者2人を三振に切って無失点に抑えました。

日本シリーズ第4戦で勝ち投手になり、ヒーローインタビューを受ける宇田川(写真中央)
(2022年10月26日 京セラドーム)

 昨シーズン中に宇田川投手は様々な場面で登板しました。勝ちパターンで1イニング投げるだけではなく、火消しや回跨ぎもなんのその。肩を作るのが早いことから、2回からの緊急登板で2.2回完全投球を見せた試合もありました。

 WBC本戦でも"便利屋"としての活躍が期待されています。


極度の人見知り?でも……

 圧倒的なパワーピッチャーである宇田川投手。ですがマウンド上で見せる力強さに反して、普段はとても穏やかかつ人見知りで大人しい性格であることが見受けられます。
 その人見知りゆえに侍ジャパン合流直後はチームに馴染めていないという報道もありましたが、ダルビッシュ有投手の計らいなどもありもう大丈夫なようです。全オリックスファンがダルビッシュに感謝した瞬間。

 オリックス春季キャンプ~代表合宿開始当初は調整不足も指摘されていましたが、既にWBC球に適応し強化試合などでも好投を見せています。中継ぎは先発投手や野手に比べて目立たないポジションですが、きっと本戦でも世界中の打者を制圧してくれるでしょう。期待して見ていてください。
 そして3月末から始まるペナントレースでも去年以上の躍進が見られるはず。実はまだ新人王資格も残っています。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。少しでもWBCを楽しむきっかけになれれば幸いです。


おまけ

 オリックス公式YouTubeや本人のInstagramを見る限り、実は結構愉快な人なんだと思います。とんでもない大食いで、体重を増やしすぎて減量を命じられることもありました(笑)。

昨年のファンフェスタにて「吹田の主婦(山﨑颯一郎投手・写真左)」と一緒に「芦屋のマダム」として登場しました。(写真中央)


 この記事を読んで宇田川投手についてもっと知りたい、と思って下さった方におすすめの記事を紹介しておきます。 

 コーチによる"魔改造"の詳細が語られています。

 入団拒否の選択肢もあった中でオリックスに入団を決めた経緯について。

 大学時代について。

 筆者の観戦記録ですが、2022年9月8日にプロ初勝利を挙げた試合の記事です。

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