それでも私達はつくり続ける~第26回うしく現代美術展③
メイン会場を出て、少し離れた所にある多目的ホール。こちらでは、大型の迫力ある展示が並んでいました。
福田玲子『ground』
コロナの影響が、多大に作品に影響した画家もいます。福田さんは、コロナ禍中に自分の作品から、色が消えてしまったことに気づきます。戸惑いながらも、その真実をキャンバスに置くことを決意した作品が、この大作『ground』です。
利根川堤の曼珠沙華の群生を描いた物でありながら、荒涼たる世俗から離れた様子は、黄泉の国を垣間見た人にしか描けない壮絶な風景です。この1、2年で沢山の人の死を、私達は見送って来ました。この絵は、作者の失われた心への鎮魂歌、叫びなのではないでしょうか。
それにしても、何という数の曼珠沙華でしょう。大地に埋め尽くすそれらは、志半ばで奪われた命の一つ一つに、手向けられる花々なのかもしれません。今、花畑の広がる険しい山を上って行く私達。その先に広がるのは絶景なのか、それとも。誰にも予測が出来ない、黒い空の向こう側。
早く、このパンデミックが収まってくれるようにと願いながら、この心がざわつく絵から、しばらく目が離せないでいました。
石村雅之『土へと』
親が倒れて子を育てる。『倒木更新』を描いた日本画です。“死の中にも新しい生あり、命は続いていく”。未来への希望が感じられる石村さんのコメントに、心が救われる思いです。枯れた古木から、また緑が芽吹き新木になっていく。植物たちは自然に抗うことなく、その一生を静かに始め、終わります。子という希望に託して。
人の目に触れることの少ない自然の神秘、母なる大地が産んだ生命の一コマ。素晴しい瞬間を、細密で清廉な絵画に落とし込みながら、何処か母性を感じさせる柔らかな色調に癒される。清々しい画風でした。
以上、出展作品56の中から、10作品をピックアップしてみました。今回、私が紹介したのは、地方の入場無料の小さな美術展です。展覧会は何人かの有志ボランティアや、地方企業の協力で成り立っています。昨年は感染拡大のため開催されず、二年ぶりの開催となりました。その分作家の熱量が感じられる、中身の濃い展覧会になっていると思います。
『それでも私達はつくり続ける』。芸術が不要不急と見なされる事へのやるせなさや、怒りすら感じられるキャッチフレーズに意地を感じました。
会期は11/28まで。お近くの方は是非。
おすすめです。
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