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~忍者増田の『QUESTER』制作者インタビュー~前編でござるよ

『QUESTER』のゲームデザイナー・加藤ヒロノリさんと、プロデューサー・桑原敏道さんに、本作に関するいろんなお話を伺いました。ここでしか聞けない貴重な話が満載! 取材日は2022年11月25日なので、V3完成後に話している想定でお読みください。

登場人物

インタビュイー/加藤ヒロノリ(ゲームデザイン)、桑原敏道(プロデュース)
聞き手/忍者増田(ライター)

ダンジョンRPGを一緒に作るなら、加藤ヒロノリ一択だった

―― まずは、『QUESTER』を制作することになった経緯をお聞かせください。
桑原 最初は僕と萩原一至先生とで「何か一緒にやりましょう」みたいな話があって、いろんな案件を模索したんです。萩原先生ってすごくゲームが好きで、その熱意がとても素敵だなと感じていて。その時は2つ案があって、ドット絵のRPGみたいなものか、もしくはさらに落とし込んだもので言うと『ウィザードリィ』ライクなもの……。
―― 最初から現在の『QUESTER』のような形がはっきり定まっていたわけではなかったんですね。
桑原 はい。そして、次にゲームデザイナーを探そうという話になって。『ウィザードリィ』の職業システムや、ボードゲーム的な要素を持った作品を作れる方だと、真っ先に頭に浮かんだのが加藤ヒロノリさんだった。加藤さんは以前にもお仕事で絡んだことがあったんですけど、とにかく熱い人で(笑)、また一緒に仕事できないかなとずっと思ってたんで、いい機会だと連絡させてもらいました。ゲームデザインに関しては、原案・世界観は萩原先生ありきで、システムは加藤さんありきで今進んでるっていう、そういう役割分担です。
加藤 僕に任していただけるって話になって、予算的にあんま派手なことはできないことも伺いました。最初はワイヤーフレーム型の3DダンジョンRPGって聞いていて、僕もファミコンで『ウィザードリィ』にハマったクチだからワイヤーフレームは嫌いではないんですけど、3Dダンジョンで迷うタイプだし、マップ書くのも面倒で好きじゃないんですよ。そこで、同じように低予算でできそうな違う見せ方を考えた時に、昔『覇邪の封印』というゲームがあったのを思い出しまして。最初は見える範囲が狭いけど、アイテムで視界が広がると面白かったイメージがあったんですよね。ああいうのって最近のゲームじゃなかったから、これやったら予算もかけずにできるんじゃないかと桑原さんに相談したら「いいんじゃないですか」と言ってくれた。そういう経緯で、今の見下ろし型の2Dダンジョンになったんです。

戦闘画面。ここに到達するまでにも、幾多ものディスカッションがあったに違いない。

―― 加藤さんは、『QUESTER』制作のお話がある前から、ダンジョンRPGを作ってみたいという思いがあったのでしょうか?
加藤 ありましたね。僕は元々アナログゲーム……TRPGやTCGなんかを作ってる人なんですけど、デジタルゲームのほうが好きなんですよ(笑)。昔から、『ウィザードリィ』で自分の好きなパーティ構成で冒険に挑戦する遊び方が好きで、そういうことが一番楽しめるダンジョンRPGをずっと作りたいと思ってたんですね。その時に声かけていただいたんで、「あ、これはすげえ。嬉しい。神様が見ていてくれたのかな」と(笑)。
―― お互いに「渡りに船だった」ということですね。パッと『QUESTER』を見た時に、ダンジョンの印象が『ドラゴンスレイヤー』を彷彿させますが、あえて狙ってオマージュされてるっていう?
加藤 そうですね。色合いもほぼ一緒にして。『覇邪の封印』みたいなマップ全体が見えない視野にしようと思った時に、僕はグラフィックデザイナーではないので、具体的な地形イメージが上手に掴めずにいたんですけど、『ドラゴンスレイヤー』風の雰囲気やったら、レトロ感もあっていいんじゃないかなって。

グラフィックといいBGMといい、’80年代のPCゲームを連想させる狙いが見える。

『ドラクエ』のまんたんや『WIZ』のマディより嬉しい自動回復?

―― 『QUESTER』は、最初に各キャラに複数のアクションをあらかじめ組み込んでおき、ワンボタンで戦闘を済ますというシステムがとても新鮮ですね。
加藤 普通に戦闘してもよかったんですけど、ちょっと変わったことがしたくて。それに僕、毎回コマンド入力するのが面倒くさい人なんですよ。自分でゲームをしてても結局、最終的に肉段戦でほぼオートで勝てるパーティを構成していくタイプなんですよね(笑)。だから、できるだけコマンド入力が簡単なゲームにしたいっていう思いもあって、今の戦闘システムに落ち着いた感じですね。

各キャラに組み込めるコマンドは、スキルや装備品により変わる。

―― 今までお話を伺っていて「面倒」というワードが何度か出ましたが(笑)、なるほど、腑に落ちました。僕が最初『QUESTER』をプレイした時に、実は「省きっぷりが潔いな」というのを強く感じたんですね。
加藤 あははは。
―― もう本当に「ハック&スラッシュ」に没頭できるというか。回復や蘇生も自動じゃないですか。キャラの回復や蘇生ってどのみち絶対やるので、自動的にやってくれるっていうのは、この手のゲームには向いていて、すごくありがたい。
加藤 そうですね。『ドラクエ』の「まんたん」も僕好きなんですけど、結局、ホイミなのかベホイミなのかを勝手に判断されるじゃないですか。それなら、「自動回復です」って割り切ってる方がいいんじゃないかなっちゅうのが始まりでもありますね。
―― 僕は『ウィザードリィ』の「マディ」という、状態異常もHPも全て回復する呪文が好きで。『QUESTER』はそのマディすらいらない(笑)。もう戦闘終わったら回復も蘇生も済んでるというのが、この手のゲームとしても、僕の年齢的にも(笑)快適だなと。あと、自キャラの「前衛」も「後衛」もないですよね。
加藤 初めはあったんですけど、色々やってるうちに、「もうヘイトで管理したら同じことじゃね?」と思ってなくしたんです。
―― いいですねえ。特にアラフォー・アラフィフになると、忙しい中で、いろんなこと省いてさくさくゲームやりたいなっていう体になってるので、そのあたりの年代に優しい操作性かなって気がしますね(笑)。ほんと省きっぷりの潔さを挙げればキリがなくて、自キャラの攻撃の順番も自動で決まるじゃないですか。攻撃する敵も指定しなくていいし、バトルリソースも自動で回復しますし。そして、会話やアニメとか、戦闘を遮るような演出もないですし……。
桑原 (食い気味に)ふふふふ。
加藤 最後のは予算的な問題も……(笑)。
―― あと、戦闘で絶対に敵から逃げられる(撤退できる)っていうのも面白いなと。
加藤 ああそうですね。もう僕、「逃げられない!」とか「回り込まれてしまった!」みたいなのがめっちゃ嫌いなんです(笑)。イライラするんですよ。「逃げられないなら作んなよ、こんなコマンド」って思っちゃう(笑)。このゲームでそのへんを全部担保するものが「浄化燃料」ですね。「逃げてもいいけど、回復もしてあげるけど、今後の行動範囲が狭まりますよ」っていう風に作ってありますね。
―― やっててすごく感じたのは、『QUESTER』において逃げるのって大事ですね。
加藤 はい。もう勝てないと思ったら、さっさと逃げたほうがいいです。
―― 逃げる時の判断を1ターン遅らせたおかげで、何度泣いたか……(笑)。
加藤 1ターンが普通のゲームより長いんで、余計にそうですね。ラスボスでも確実に逃げられるようにしています。「負けそうだったらまた出直してください。浄化燃料減るけど」っていうだけです。
―― 1回逃げて、もう1回遭遇すると、敵の構成が変わったりしますよね。
加藤 変わります。だから、例えば「アカキニクノカベ」は3、4匹出るところあるんですけど、あの画面内のマス目に配置できなかったら消されるんですよ。だから、4匹出てしまったら逃げて、何度も頑張ったら、真ん中にポンと出て1匹だけになる可能性もある。なので、好きに戦ってくださいと。ただ、4匹倒した分のご褒美(ドロップ品)はありますけどね。
―― 楽して倒すやり方もあるけど、頑張った人にはそれなりの見返りがあるのですね。敵の配置といえば、火炎放射は配置が関係してますけど、それ以外って、ほぼ戦闘に敵の配置は関係ない感じでしょうかね。例えば、前にいるから当たりやすいということもない。
加藤 対象が横一列で設定されているもの(火炎放射など)以外は、配置に意味はないですね。プレイヤーからの攻撃は、HPの少ない敵から殴ってるんで。
―― その点も、普通だったら敵の位置関係が戦闘に関係しそうなところ、省きっぷりが潔いです。火炎放射が一直線で当たった時は気持ちいいですね。
加藤 はい、そこだけ、一番数の多いところを見るようになってますね。

一直線上に飛んでいく火炎放射が、3体の敵に当たった瞬間。快感!

「ハック&スラッシュ」だけじゃない! 「探索」の楽しさも味わえる

―― 作り手として、ズバリ『QUESTER』のウリはどこですか?
加藤 初めは「マップの雰囲気」とか思ってたんですけど、今あえて見直すと、全体的にあんまり類を見ないゲームになってるのが気に入ってます。探せばあるかもしれないですが、僕の経験の中にはなかったので。
―― 確かに。ある意味『ローグ』ライク、『ウィザードリィ』ライクとも言えますが、言い切れないところもある。すごく麻薬的なゲームですよね。拠点もだんだん増えて少しずつ行動範囲が広がって、探求心がくすぐられ続けて、やめ時がわかんなくてヤバい……。

新しい拠点を見つけた、嬉しい瞬間。これで行動範囲がさらに広がる。

加藤 そう言ってもらえると嬉しいです。僕はもうマップがわかってるから、その感覚に陥れないんですよね(笑)。
―― そっか。制作サイドはそうですよね(笑)。
加藤 誰か違うマップ作ってほしいです(笑)。
一同 (笑)
桑原 ランダム生成ダンジョンにしたいって、加藤さんおっしゃってた時ありましたよね(笑)。
―― 桑原さん的には、「ここを見てほしい!」っていうポイントはどこでしょう?
桑原 実は最初、戦闘中心のゲームかなと思ったんですよね。でも、東京ゲームショウで来場者にプレイしていただいた時もそうだったし、『女神転生』シリーズで知られる上田和敏さん(現サウンドゲームズ取締役)の感想もそうだったんですが、みんな「探索が面白い」って言うんですよ。じわじわ探索してって、それで何か見つけて、何かやって、何が起こるんだろう、みたいな。そういうドキドキを楽しんでいた方が多かった。だから、「探索が楽しいぞ!」っていうのは一番感じています。見た目はレトロな画面なんだけど、行ったことないところが明確にわかるインターフェースだと思いますしね。

戦闘だけでなく、探索も楽しい。まだ見えぬ壁の向こうにあるものは……?

―― 確かにそうですね。僕さっき「ハック&スラッシュ」に没頭できるって言いましたけど、正確に言えば、「ハック&スラッシュ&探索」がこのゲームの大きな醍醐味と言えるかもしれないですね。付け足すと、僕がすごく光栄だったのは、桑原さんが、僕が『ウィザードリィ』の魅力について喋ってる動画を熱心に見てくれていて、『QUESTER』制作の参考にしていただいたという話を伺いました。僕が考える『ウィザードリィ』の4つの魅力は、「生死ギリギリの戦闘」「キャラクター育成」「アイテム探し」「想像力でのストーリー補完」。『QUESTER』では今「転職」は実装されてないので(次回で詳述)、『ウィザードリィ』に比べると「キャラ育成」に関してはこれからという感じですけど、他の3つの楽しさは、一応全部入ってるかな、という印象でした。
加藤 ありがとうございます。
桑原 やった、太鼓判(笑)。
―― 大小はあると思うんですけどね。例えば戦闘でいえば、『ウィザードリィ』のエナジードレインのような厳しい攻撃はないですけど(笑)。
加藤 作ってもいいんですけどね(笑)。
―― まぁでも、『QUESTER』はそこまで凶悪にならなくてもいい気がします(笑)。

次回、インタビュー後編は12月19日更新予定。
今後の修正点についても語ってもらったのでお楽しみに!

※記事の内容はクローズドβテスト中の仕様を元に書かれております。今後変更になる可能性がございます。


QUESTERとは?

 『QUESTER』は、漫画家・萩原一至が新たに構築した退廃未来の世界観です。ゲームデザイナー・加藤ヒロノリと共に、サウザンドゲームズは1年間かけて、ダンジョン探索RPGのプロトタイプをつくりました。

 現在、クローズドβテストを開催中です。今回は、その中間報告として、この「制作者インタビュー」を公開させて頂きました。

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