念ずれば、ゴキブリ

変な能力を身に付けてしまった。
俺が「イチ」と言いながらある場所を見つめると、そこに隠れているゴキブリがぞろぞろと溢れてくるのだ。
それも尋常な数じゃなく。
さっきなんか図書館の玄関で、履き込んだ感じの女物のブーツの折り返し部分から2・30匹くらいぶんぶんぞろぞろ出てきやがった。
さすがに恥ずかしいのか、それを脱いでたであろう持ち主は現れなかったがね。
しかし俺が自分のこの能力に気付いたのは、つい数週間前。
ある時、たまたま口からその言葉が出て、その時たまたま自分ちの台所の壁を眺めてた。
そしたらその壁の隙間か何かから、信じられない数のゴキブリがうじゃうじゃと湧き出してきた。
縦40cm、横2m位の範囲くらいにびっしり。
ビビったよ。
そりゃビビるだろうよ、軽くパニックおこしかけたよ(笑)
そんくらいの壁が、アブラ光りして、うぞめくゴキらで埋められたらな。
熱帯のジャングルじゃねえよって!
そりゃ俺はそんなにきれい好きでもないし、掃除もまめはにしない。
いや、ほとんどしないな。
だから部屋の壁の裏とかの見えないところに少しはいるんだろうな、とは思ったこともあったたが、まさかあんなに(坂崎幸之助のアパートくらい)出てくるとは思わなかったし、だいたい自分にそんな能力があるなんて知りもしないじゃないか!?
…しかしまぁ、その瞬間はビビったが、いつまでも驚いてもいられない。
目の前の憎敵をどうにかしなければならないし、なぜかたまたま買い置きしておいたゴキジェット10本くらいで、そいつらを葬ってやったよ。
しかし何でそんなに大量のゴキジェットが買い置きしてあったんだ?
何かを予感していたんだろうか?
まぁいい。
それ以来、俺はいろんな場所でその能力を使ってゴキを出現させてはいる。
最初は皆自分の持ち物やあり得ない場所から吐くほど現れるから、俺のことを理解の外の存在とビビって怖がっていたが、今じゃもう慣れて、ボランティア害虫駆除屋みたいな扱い。
一部の奴らには超嫌われているけど、そんな俺に付き合って、一緒に退治してくれてるアホなやつらもいたりするんだけどね。
まぁだいたい、俺だっていつもそんなことをしてるわけじゃないよ。
誰かから金をもらうわけでもないし、だいたい俺はゴキブリが好きなわけじゃない。
視界に入れば気分悪いしさ。
今はちょっとしたいたずら心(笑)が湧いた時だけかな。
ま、そのうちあんたにも会うだろうから、その時を楽しみにしときなよ(笑)
アディオス、コックローチ!

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