絶対にケンタッキーフライドチキンが食べたくなる映画のワンシーンを翻訳してみた。
陽気で喧嘩っ早いイタリア人。ケンタッキーフライドチキンが好き。運転中。
プロピアニスト。真面目で潔癖症。
絶対にケンタッキーフライドチキンを食べたくない人。
ケンタッキーを注文したトニーが、車内でチキンをかじりながら。
トニー
「これマジで今まで食べた中で一番美味いわ。新鮮さが違う。」
ドク
「よく食べますね。 」
トニー
「なんだよ。お前も食えよ、バケツで買ったんだからさ。」
ドク
「結構です、ケンタッキーフライドチキンなんて食べたことがないですし。」
トニー
「嘘つけよ?黒人はフライドチキンと、コーンミールと、アブラ菜が好きだろ。」
ドク
「……。」
トニー
「軍隊にいた時、黒人のコックがよく作ってくれたぜ。」
ドク
「……あなたはとても狭い視野をお持ちのようですね。トニー。」
トニー
「でしょ、ありがとう。」
ドク
「褒めていません。つまり、人種が同じというだけで食べ物まで同一視する必要はない、ということを私は言いたいのであって、」
トニー
「おい。ちょっと待てよ、怒ってんのか?俺たちイタリア人は別にスパゲッティミートボールが好きだよな。とか言われても怒らないぜ。」
ドク
「論点がずれてます。私が言ってるのは同じ人種であっても……。」
トニー
「もういいから、食べろよ!」
ドク
「いりません。」
トニー、後部座席にチキンを差し出しながら
トニー
「ほら早く!いい匂いだろ?」
ドク
「……匂いはいいけど、油が。ブランケットに落ちそうで。」
トニー
「ブランケットちゃんに油が落ちちゃうかもしれない〜!!」
ドク
「……。」
トニー
「いいから一個食ってみろよ!死にゃしねえよ!!」
ドク
「いや、いい……。」
トニー
「受 け 取 れ よ !!後ろに投げるぞ!?」
ドク
「やめなさい!」
トニー
「だったら受け取れ!ほら!」
ドク
「どうやって!?お皿も、ナイフもないですよ!」
トニー
「手 で 食 べ る ん だ よ!!」
ドク
「できませんよ!」
トニー
「食え!俺は運転中なんだぞ!?10時と2時の位置に手を置かなきゃいけねえんだから早くしろよ!早く!早く早く早く!」
トニーに急かされ、仕方なくフライドチキンを受け取るドク。
ドク
「……。」
トニー
「ったくよ。」
ドク
「……手で食べるなんてできない。」
トニー
「うるせえ、食え。」
大きくチキンをかじるトニーにつられて、ドクも恐る恐るチキンを一口かじってみる。
そして、すぐその美味しさに気づき黙々と食べ始めるドク。
トニー
「どうだ、まずいか?」
ドク
「でも………衛生的にどうなんですか。」
トニー
「うるせえな美味いなら美味いって言えよ。」
ドク
「……。」
トニー
「俺の親父は、何をするにも100%の力を出せっていつも言ってた。仕事の時も、笑う時も、食う時は、それが最後の食事だと思ってな。」
ドク
「……。」
トニー
「もう一個食うか?胸肉もあるぞ、これも美味いんだ。」
トニーに差し出された胸肉を素直に受け取るドク。
ドク
「えっと、骨はどうすればいい?」
トニー
「こうするんだよ。」
トニー、窓を開けて、そこから骨を投げ捨てる。
驚いた表情で道路を見るドクに、トニーはもう一度骨を投げ捨てて見せる。
トニー
「ほら、こうやってな。」
立て続けに突拍子のない行動を見せつけられたドクは初めて歯を見せて笑い、トニーの真似をして窓を開けてぎこちなく骨を投げ捨てる。
トニー
「そうそう。ハハハ。」
ドク
「……ハハハ。」
気の合わない二人だったが、ここで初めて笑い合う。
さらに気をよくしたトニーは笑いながら、空になったドリンクも投げ捨てる。
ドク 「……!?」
トニー「ハハハ……。」
ドク、投げ捨てられたドリンクを見て一瞬で顔色を変化させ、後部座席から道路へと振り返る。
トニー
「なんだよ!?ほっときゃリスが食べるだろ?!」
ドク
「拾いなさい。」
トニー
「……。」
バックで戻ってきた車の運転席が少しだけ開き、投げ捨てたドリンクを拾う描写でこのシーンが終わる。
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