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ファイアーエムブレム 風花雪月 レビュー・感想(ネタバレあり)

ファイアーエムブレム風花雪月をクリアした

主人公には女性キャラ<ベレス>、担任として担当するクラスには王国の次期国王(王子)ディミトリが級長を務める青獅子の学級<ルーヴェンクラッセ>を選択し、50時間強の時間をかけエンディングに到達した

難易度は標準的なノーマル/クラシックの組み合わせでプレイしたが、あまり遊びごたえがなく、クリア後の引継ぎ要素も気になったため、今度は難易度ハード/クラシック、金鹿の学級<ヒルシュクラッセ>を選択して2週目のプレイを開始している
(引継ぎの名声ポイントを周回プレイに効率よく使うために何度かやりなおした)

ネット上での評価も上々でセールスも好調な本タイトル、個人的には、好評に捉えられている部分の裏で、犠牲になってしまっている面も多く感じた

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私が思うファイアーエムブレムらしさとは

個人的には"手強いシミュレーション"を期待してしまうが、それと併せて、キャラゲーとしての側面が強いことも間違いない
シリーズそれぞれの作品で、人気のキャラクターや思い入れのあるキャラクターが、どのファンにも必ずいるはずだ
また"手強いシミュレーション"で間口が狭くなり過ぎてしまうのはあまりよくないと感じるため、キャラクターロストなしのルールや、低難易度モードはあった方がいいだろうと考えている
"キャラクターの描写に力が入ったSRPG"が今のファイアーエムブレムに私が期待することだ

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風花雪月はどんなゲームだったか

士官学校のクラス担任となった主人公は、担任クラスの生徒8名、他の2クラスの生徒合計16名、その他士官学校が所在する大修道院の司教や、司教の下で働く教師や兵士達と日々を過ごす
ゲームはカレンダーをベースに進行し、週に一度、修道院内を歩いて回り他のキャラクターとの会話などを行うことで支援値などを上昇させる「散策」、特定の技能値(剣、斧、乗馬、飛行など)を上昇させる「講習」、フリーマップに出撃して経験値などを上昇させる「出撃」、何もせずに生徒らのやる気などを回復する「休養」のいずれか1つを選択して実行、その翌日にはキャラクターのやる気を消費して技能値を上昇させる「教育」を行う
これらを4セット(4週分)終えると月末を迎え、そこでメインシナリオとなる「課題」マップを攻略する流れだ

ゲーム全体は上記士官学校での生活を描いた前半の章と、士官学校の登場人物たちのその後を描く後半の章の2部構成となっている
2章は士官学校での日々ではなくなるものの、ゲームのサイクルとしては1章と基本的には変わらない進行で、月末の「課題」が(意味合い的に)本格的な「決戦」へと置き換わる形だ

週に一度の「散策」「講習」「出撃」と「教育」を自分なりの組み合わせで組み立て実行することによって、キャラクターのパラメータや支援値をプレイヤーの好みに合わせて成長させる
そして、支援値が一定の値になると特別な会話イベントが発生し、この会話イベントは他愛のない日常の、キャラの性格が伝わってくる微笑ましいようなものもあれば、物語全体に関わるようなキャラクターや世界の背景が垣間見えるものもあり、風花雪月というゲームにおいて重要な要素となっている

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実感するゲームバランスの逆転

上記の通り風花雪月というゲームは、キャラクターの育成とコミュニケーションが重要な要素となっている
ファイアーエムブレムというゲームには、キャラゲーとしての側面(プレイヤーがそういう面を楽しんでいるところ)がシリーズ初期の頃からあるため、こういった面が強化されるのはある種必然に感じる
しかしながら本作は、これらの要素を強化するのと引き換えに、SRPG部分を大きく犠牲にしているように、実際にプレイしてみて強く思った
ゲーム全体のバランスとして、育成とコミュニケーションが8-9割、SRPGが1-2割、程度の比重になっており、ゲームの主軸はSRPGではなく、育成とコミュニケーション側に大きく偏っている

1章を6ヵ月分ほど進めた辺りで、マップ攻略パートの為に育成やコミュニケーションを行っているのではなく、育成やコミュニケーションの結果確認の一環としてマップ攻略パートが存在している感覚に陥った
単に結果確認の一環でしかないため、戦略マップ上では大したドラマは展開されず、多くのマップは、その殆どが正方形のマップにバラバラと通行禁止や通行しにくいオブジェクトが配置されているもので、どれも似通って見えた

また、カレンダーをベースとしたゲームサイクルに終始するため、2章からは特に、他の国などの陣営と戦争の決戦をする状況であるにも関わらず、毎月決まって月末に、しかも1日だけで終わる決戦を予定調和で繰り返す事になり、RPGの進行としても強引さが浮き彫りとなる

例えば、ルーヴェンクラッセルートの1章の最終戦では旧友の謀反により、帝国が士官学校の所在する大修道院を攻め落としに来る、という話の流れなのだが、月の初めに「帝国が修道院に攻めてきている」という前振りがあった後、4週間はそれまで通りに、釣りをしたり食事会をしたり、授業をしたりティーパーティーを開いたりしながら、いつ約束したのか、もしくは反旗を翻した旧友の優しさなのか、いつも通りの月末に1日だけ決戦を繰り広げることとなるのだ
そしていざマップを確認すると、本陣に攻めてきている相手側はさまざまな設置型の兵器を展開し長距離攻撃を仕掛けてくるのに対し、本陣を守る味方側は設置型の兵器など何もなく、少数の部隊でそれらを迎え撃ち、そしてマップの勝利条件を満たした後、ストーリー的には敗北を喫することとなる

だが、こういったことは風化雪月にとって些細な問題なのだと思う
何故なら、SPRG部分はあくまで前段の育成やコミュニケーションの結果確認の一環でしかなく、ゲーム全体に対する比重が軽いからだ
風化雪月は"SRPGパートもあるキャラクターゲーム"であり、私が期待していた"キャラクターの描写に力が入ったSRPG"とはバランスが逆転したもののようであった

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敷居を感じない間口の広さ

ゲーム全体のSRPG比重が軽い事と併せて、戦略マップパート自体も、これまでのシリーズと比較して随分と遊びやすくなっている
キャラクターの育成の幅を広げるため、特定の武器や魔法のみを扱えたり、決まったクラスにクラスチェンジしたりといった縛りは撤廃されており、斧で殴ってもドーラを使ってもしっかりダメージを出せるユニットや、間接攻撃用の弓を装備している状態でも特定のスキルをセットすることで、近接攻撃に対して反撃が可能なユニット、などを比較的自由に作り出すことが可能になっている
育成次第ではどのユニットもオールマイティに活躍できる状態になるため、敵と味方の位置取りで頭を悩ませる場面は限りなく少ない
また、武器の耐久値を一度にまとめて消費するのと引き換えに「戦技」を使ってまとまったダメージを与えたり、回数限定だが「計略」を使って反撃なしのダメージを与える事も、さらに、思わぬ事故でユニットがやられてしまった時には「天刻の拍動」を発動してバトル中の好きなタイミングまで状況を巻き戻す事も出来る(バトル中回数限定)
このように本作の戦略マップパートは難易度の如何とは別の部分で随分遊びやすい作りになっており、これまでのシリーズよりも大きく間口が広がっているように感じた
これは、キャラクターが目的でゲームをプレイしたいユーザーの事を考えれば当然であるし、間口が広がって多くのプレイヤーがゲームを遊びやすくなることは良いことだろう思う

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シリーズのターゲットから外されてしまった悲しさ

これらの事を踏まえ、私は、私が期待しているファイアーエムブレムは、ファイアーエムブレム自身から否定されたのだという結論に至った
しかし、蒼炎の軌跡や暁の女神でセールスが振るわず、一時期シリーズの終焉を迎えそうになっていたところを、覚醒でリファインしたことによって一躍人気シリーズへと返り咲いた経緯を鑑みれば、当然の方向性だろう

今、シリーズ最新作の購入を検討しているユーザーが望んでいるものは風化雪月のようなバランスのゲームであり、風花雪月はこのターゲットを見出すことに見事成功し、プレイした多くのユーザーは最新作に大満足している

私が期待していたファイアーエムブレムは最早ファイアーエムブレムの系譜からは大きく外れてしまっており、そういった期待は別のタイトルに対して向けるべきものとなったのだ

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今後のシリーズに期待すること

今後ファイアーエムブレムシリーズがどのように展開していくのか、残念ながら今の私には想像することが難しい
だが、今ある好評の声は、ひとたび期待を裏切るようなものが出てきてしまうと、一斉に反対向きのベクトルを持った声へひっくり返りそうな、そういった危うい様相を呈しているようにも感じる
風花雪月では今後半年以上をかけて有料DLCの配布が予定されているが、これらのDLC内でプレイヤーの気持ちを読み間違えたコンテンツが出てしまうようなことがないことを祈りたい

私は今後も、いち(元)ファンとして、ファイアーエムブレムシリーズが末永く続いていくよう、応援していきたい

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おわり

読んでいただきありがとうございます


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