見出し画像

《角を曲がる》歌詞解釈 / 欅坂46 平手友梨奈

我の好きな曲ベスト10にランクインする曲達を、勝手な解釈で表現していく。今回はこのうた。

「角を曲がる」欅坂46 /  平手友梨奈
作詞:秋元康
作曲:ナスカ

アイドルヲタクの回し者かと思われるだろうが実際はアイドルのアの字も知らない。ライブにも行ったことがなければ、正直今でもどのアイドルもみんな同じ顔に見える。ライブDVDとかももちろん買ったことがない。なのに、この曲だけは好きでずっとずっと聞いている。アイドルソングってキラキラしてて基本苦手だが、この曲はアイドルソングよりもボカロ曲に近い。ボカロ曲は個人的に親しみやく、アニソン好きにも積極的にオススメしていきたい。
こら!!リアルアイドル見て逃げるな!!怖くない怖くない!!これ美味いから食ってみろ!!トぶぞ!!


ちゃんとトびます。だってこの曲、みんな大好きド病み曲だもの。まずは解釈を見る前に、一回通しで聞いてみて欲しい。もちろん1番だけでもいい。曲の全体の雰囲気を見てほしい。
これはアイデンティティに悩む思春期のつらさを抱える人たちのうた。人間はどこまでいっても結局ひとりなんだ、と寂しさに苦しんでる人たちのうた。みんな違ってみんないい、なんて耳障りの良い言葉では騙されない。私が求めてるのはそんな答えじゃないんだ、と。ほの暗い部屋にひとりきりで膝を抱えて、ぼんやりと薄汚れた夜の街並みを眺める。そんな気持ちで見てほしい。




決して凄腕のアーティストみたいに歌い方がすこぶる上手いわけじゃない。ふつうの女の子がただひとりで悩んでる曲。そう思えたあなたは天才だ。そして、悩みを抱えてる姿に感情移入してほしいのです。それじゃあ次は、曲を流しながら解釈を読んでいってほしい。そして自分のことのように曲を感じてみることにする。





みんながおかしいんじゃないのか
自分は普通だと思ってた
でも何が普通なのか?
その根拠なんかあるわけもなくて

いつも思っていた。どうしてみんな、いつも平気そうな顔をしているんだろう。どうしてみんな、簡単に空気を読めるんだろう。どうしてみんな、そんなに普通でいられるんだろう。みんなおかしい。変でしかたがない。あんなに自然に笑っていられるなんておかしい。毎日毎日恐ろしいみんなに囲まれて、不出来な私だけが人間の”普通”なんだと思ってた。器用に生きてるみんなに囲まれて、私だけが普通だと思ってた。でも、いつも普通が分からなくなって。普通に笑う方法を教えて欲しくて。でもだれも教えてくれない。世界はそんなこと教えてくれない。

もう誰もいないだろうと思った真夜中
こんな路地ですれ違う人がなぜいるの?
独り占めしてたはずの不眠症が
私だけのものじゃなくて落胆した

そんなことを、深夜に1人で悩んでた。きっと私の周りには、こんな夜遅くに顔をぐちゃぐちゃにしてまで悩んでいる人はいないだろう。こんなに泣いて、こんなに自暴自棄になって苦しんでる人なんて私以外にきっといない。そう思ってたのに。
ある時、私と同じように苦しそうにしてる人を見つけてしまった。これほどのひどい悲しみは私だけのものだと思っていたのに。あぜんとした。がっかりした。私にとって死ぬほど辛いこの悲しみは、実は俗なものだったのか…?こんなに苦しい思いをしてまで悩んでたのに、私だけの特別な悩みでは実はなかったのかも知れない。じゃあ私って何なんだろう。こんなに俗な私って一体他の人と何が違うのか。私には個性が無いのかも知れない。

らしさって一体何?
あなたらしく生きればいいなんて
人生がわかったかのように
上から何を教えてくれるの?

個性ってなぁに?自分らしさってなぁに?自分らしく生きましょう、とか。みんな違ってみんないい、とか。よく学校で聞いたな。でもそんな言葉は綺麗ごとでしかない。なんて無責任な言葉なんだろう。少し私より長く生きてるってだけで、一体どんな有難い教えをくれるっていうの。どうせ、勝手に人生を分かった気になってるだけの人たちの集まりなんだろう。
だって、自分らしくなんて言われたって、私には個性がない。アイデンティティがない。ゲームが好きとか。歌が好きとか。旅行が好きとか。そんなの誰にでもあるような趣味で。自分といえばこれ、が無くて。誰にも負けない特技なんてなくて。自分だけのアイデンティティなんてあるわけないのに。

周りの人間に決めつけられた
思い通りのイメージになりたくない
そんなこと 考えてたら眠れなくなった
だからまたそこの角を曲がる

けどたまに友達に自分を評価されることがある。誰かからの意見なら、私の個性を見つける手掛かりになるのかも。ノリの良い子だとか、優しい子だとか。あれ、どの言葉も全部自分とは程遠い。私はそんな人間なはずがない。でもそんな風に言われてしまったら、誰かの言葉に無意識に合わせてしまっている自分がいる。ノリのいい子と言われたから、ノリの良い子でいなくちゃ。きちんとしてる子と言われたらきちんとしていなくちゃ。だって君の思いを裏切ってしまう。君の考えた私を壊すのはちょっと怖いんだ。私は怠け者だから、人からのイメージを壊すのも億劫で。だからお願い、私の事を勝手に決めつけないでほしい。君の決めつけやイメージを覆すほど、自分のことを知らないんだ。
そんなことを考えていたら目がさえてしまった。今日はまだまだ眠れそうにないな。悩んでないで早く寝なくちゃいけないのに。またネガティブになってるな。また思考がぐるぐる同じところを回ってる、悪いクセだ。
ねぇもしも、今日みたいに真っ暗で指も耳も凍るほど寒い道を一人で歩いていたとして。たまたま曲がり角に出会えたら、もしその曲がり角で曲がったら。その先に幸せが待っていたりしないかな。今がこんなに苦しいから、幸せが待ってると思わないとやってられないんだ。生きていられないんだ。


星空さえも中途半端だ
街の明かりが明るすぎて…
明日が晴れようと雨だろうと
変わらない今日がやって来るだけ

でもあんなに光り輝いている星々だって、都会の夜空だと明るい星には見えない。ビルが立ち並んでいて夜なのに明るい。都会の空だと星空は台無しだ。きっと今日の空が晴れていても雨でも、星の見え方はどうせいつも変わらない。いつでもどんな時でも、星なんかよく見えない空。
私もそうだ。すごい人たちに囲まれて、私は何かができるわけでもない。芸能人みたいに綺麗じゃないしスタイルも良くない。どこかの誰かよりすごい能力があるわけじゃない。スキルがあるわけじゃない。言葉だってどこかの誰かの受け売り。世界規模で見たらどんなに努力しても埋もれてしまう。いや、日本の中でだって同じか。私はどうしたって光り輝けない。


本当の自分はそうじゃない こうなんだと
否定したところで みんな他人のことに興味ないし…
えっ なんで泣いてんだろ?

でも本当は気づいてもらいたい。自分はこんな人間だ、って。昨日やってたニュースを見て悲しむ人間だ、って。昨日の君の言葉に、実はほんの少しだけ傷ついてた、って。明日も明後日も早起きしなきゃって考えるだけで頭がすこし痛くなるんだ、って。自分の思いを知って欲しい。自分の悩みを知って欲しい。でも皆、私の悩みなんて聞きたくはないだろう。暗い話もネガティブな話も聞きたくないだろう。だから皆が楽しんでくれるように空気を読む。皆が楽しんでくれる性格で。皆が楽しんでくれるテンションで。でも本当は私の悲しみを知って欲しい。でも誰も聞いてくれない。あぁ、なんて冷たい世界だ。誰も彼も本当の私には興味ない。きっとみんな私と同じように自分のことばっかりなんだ。一生誰とも分かり合えないんだ、悲しいな。


だって近くにいたって誰もちゃんとは見てはくれず
まるで何かの景色みたいに映っているんだろうな
フォーカスのあってない被写体が泣いていようと睨めつけようと
どうだっていいんだ
わかってもらおうとすればギクシャクするよ
与えられた場所で求められる私でいれば嫌われないんだよね?
問題起こさなければ しあわせをくれるんでしょう?

だって、いつも隣にいる大事な人さえ私の悩みを知らない。ずっと過ごしてきた家族だって私の悩みを知らない。どんなに近くにいる人だってちゃんと私を見ようとしてくれない。街に出ればもっとそうだ。ただの街並みの中の風景で。ただのドラマのエキストラと一緒。顔も声も何も覚えられることはない。たとえスクランブル交差点で泣こうがわめこうが誰も気づかない。誰もかれも、私のことなんかどうだっていい。
それにもしも、自分という人間について雄弁に語ったら変な人に思われる。空気の読めない面白みのない子だと思われる。自分語りするイタイ子になる。そんな風に思われるのは嫌だ。だから、本音を話したくても話せない。私は皆のことそこまで心の広い人だとは信じられない。そこまで安心して話せない。私のこと何でも聞いてくれる人なんていないんだから。
だからやっぱり皆に求められる自分でいたほうがラクだ。求められる私でいれば皆笑ってくれる。親も喜んでくれる。友達も楽しそうにしてくれる。ほら、何か起こすと変な子になってしまうから。変わった子になってしまうから。何もせず、ただ普通に笑顔で生きていよう。そうすれば。いい子でいれば、少しは愛してくれるんだよね?


らしさって一体何?
あなたらしく微笑んでなんて
微笑みたくないそんな一瞬も
自分をどうやれば殺せるだろう?
みんなが期待するような人に
絶対になれなくてごめんなさい
ここにいるのに気づいてもらえないから
一人きりで角を曲がる
Ah Ah Ah Ah

結局、自分らしさってよく分からなかった。自分らしく好きな時に笑って楽しんで生きればいい、って。そんなふうに生きれたらいいのに。でもそんなにずっとは楽しんで生きられない。微笑んでる時より悲しんでるときのほうが多い気がする。本当に、泣いてる日ばかりじゃないって言いきれる?
それでも笑っていなくちゃ。泣いてる人なんて誰も見たくないと思うから。でも笑っていられない日もたくさんある。そんな日も自分を殺して生きなくちゃいけない。これから長い年月の中で、ずっと自分をごまかして生きなきゃいけない。みんな器用だな。みんなよくやるな。頑張ってごまかしていても、私はきっとぼろが出るだろう。きっといい子じゃいられない。遅刻したり、やることが期日までに終わらなかったり。いい案も思いつかなかったり、何もしないまま休みの日が終わってしまったり。面白い話もできないだろう。きっと皆の期待する私じゃいられない。皆に好かれる私でいられない。でも嫌いにならないでほしい。ごめんなさい、謝るから、何度でも謝るから。だからいい子じゃなくても嫌いにならないで。
もしも今日みたいに、真っ暗で指も耳も凍るほど寒い道を一人で歩いていたとして。真っ暗な場所にいることには、やっぱり誰にも気づいてもらえないだろうけど。でももしも、たまたま曲がり角に出会えたら。もしもその曲がり角で曲がったら。その先に幸せが待っていたりしないかな。今がこんなに苦しいから、すぐ幸せが待っていると思わないとやっていられなくて。生きていられなくて。本当は誰かに曲がり道を一緒に曲がってほしい。けどそんな人もいないから、一人で期待して暗い道を曲がってみることくらいしか今はできない。なんでもいいから幸せが待ってないかなとか勝手に期待して。祈ったまま、目をつむったまま、角を曲がってみるんだ。











病み曲バンザイ。また勝手に歌詞解釈していきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?