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あなたは消費者金融を誤解していないか? ~経営の大局を会計を読んで~



〇この本がおすすめな方
・独立して間もない方
・BSやPLに触れたことがない方、苦手意識がある方

こちらの内容は自戒として記載しているものですので、ご容赦ください。


2000年初頭、消費者金融はリーディング・インダス トリー


利益額と利益率で見る限り、消費者金融は日本の花形産業です。武富士は2001年度では経常利益2400億円、経常利益率60%で、利益率では何とすべての企業の中でトップでした。消費者金融や小口事業金融というと、われわれはすぐにマスコミで報道される悲惨な事件を思い出してしまいます。闇金融の苛酷な取立てや、それが原因で起こる一家心中事件です。われわれはこうした事件と、武富士やアコムの成功を結びつけて考えてしまいがちです。でも本当にそうでしょうか?消費者金融が繁盛しているのは、生活苦の多重債務者のおかげなのでしょうか?大手消費者金融についていえば、利用者の半数は二十歳代だそうです。しかも意外にも、大手では焦げ付き(「貸し倒れ」といいます)の比率が少ないのです。

消費者金融のイメージと実態はかけ離れているものがあります。


当時の消費者金融の一番の顧客は若者。消費者像を追うにはCMを見るのが一番です。
2000年代の消費者金融のCMでは
アイフル「おじさんがチワワと話す」
武富士「若い女性ダンサーがキレキレのダンスを踊る」
が良く流れていました。
 ここから言えることは上記の企業は性別、年齢ごとにポジショニングをとっているということです。アイフルは中年男性、武富士は若い女性、レイク若年男性というイメージです。

私は消費者金融に行ったことがないため、武富士の顧客対象となる若い女性がお金を借りるイメージが想定できないのですが、現実はそうなのでしょう。偏見ですが、遊びに行くための借り入れ又は身内がいないために一時的に借りるケースが多いと考えます。
 
 この本では若者は携帯電話や家電、パソコンの購入に、消費者金融を利用したと記述されています。それまで銀行では金を貸すことをしなかった層が顧客になっています。1990年代のポケベルや携帯電話など、ハード製品が若者を中心に浸透した時期と重なっていることが消費者金融の売り上げの伸びに起因したと考えられます。

また立地においても費者金融は銀行と異なっています。
駅を降りると駅前に豪壮な店舗を構えているのが、銀行です。これと比べて、駅から近い横丁のペンシル・ビルに店舗を構えているのが、消費者金融です。高コスト体質の銀行が凋落し、ローコストに徹する消費者金融が繁栄する。


武富士の社長は当時以下のようにも言っております。

「公務員や上場企業、従業員400人以上の会社に勤める人は就業人口の4分の1。残りの4分の3は会社や銀行からお金を借りにくい層だ。そういう人にご用立てしてきたところに武富士の存在価値がある」

中小企業の社員は全員客であるという、かなりオーバーな表現だと思いますが、このくらいの市場があるということを示唆した発言ですね。
ちなみに
2023年現在のアコムの営業収益は2737億円です。 
※りそな銀行の2024年3月決算の営業利益は1500億円。

以上を勘案すると、それまでお金を借りないであろうと思っていた層を顧客にしています。正確に言うと1990年代以降はバブルが弾けた影響で個人に貸し渋りだしたという背景があります。
社会情勢が変わったときは新たな産業が活発化しますね。


「儲け = 使える お金」 では ない


ダイエーは好調な時でも、純利益は成星、数百億円レベルでしたが、1兆数千億円の借金をして、不動産などに巨額の投資をしました。西武にいたっては、利益が出そうになると説明のために、どんどんホテルやゴルフ場を作って、利益を減らす落としました。至っては、利益が出そうになると、節税のためにどんどんホテルやゴルフ場を作って、利益を減らそうとしました。
つまり、本名で稼ぐ利益水準に借金の返済スピードが追いつかなくなったわけです。まして、資産の値下がり損失で、自主的に利益が吹き飛び、支払利息も大きくなると、PLも赤字に変わります。こうして破綻した企業は、挙げればキリがありません。

・節税のためにCFやPLを無視した身の丈に合わない投資は控えるべき。
・永続的に上がりする資産は稀 
 少なくとも、建造物や土地は永続的な利益が見込めるわけがなく、売り時を見据えた投資スタンスが重要だと考えます。事業の売却は良く聞きますが、ホテルやデパートの大型施設では赤字になってから売るケースが多い印象です。 上場企業の場合は資産の売却に際してはステークホルダーの反対が多いに予想され、より一層難しいと思われます。


バランスシートが読めるだけでは意味がない。何が見えて、どう対処できるか。


この本には巻の最後に練習問題があります。菓子屋のバランスシートを見て、なぜ資金が足りなったかの推定と対策を考えるものです。オープン間もなく菓子屋はうまくいってましたが、多店舗展開した途端に現金がなくなるという悲劇です。 独立した方には誰にでも起こりえる話で他人事とは思えませんでした。

他にも貸しビル業のBSとPLを計算する練習問題やイベントの晴天時、雨天時のPL比較問題など、面白い内容が盛りだくさんです。
 



この本を読んで、実際Bバランスシートを作ってみることで財務、会計がより身近なものになりました。
財務の本を10冊ほど読んでいますが、練習問題があり、実際のシチュエーションを想定しながら、計算できます。

良本に巡り合いました。


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