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歌のカバーは邪道か――否、鉱脈である

矢野恵子だったか、「自分で作った曲も人の曲も同じだろ」みたいな話をしていた記憶がある。いい曲であれば自分で頑張って作るのではなく素直にカバーすればいいということで、矢野恵子はたくさんの曲をカバーしている。

一部にはカバー曲は邪道であり、売れている曲をカバーしているだけであれば傍目には「勝ち馬に乗っている」ように見えるという声もある。
まあそういってしまえばそれまでなのだが、私自身は「いい曲がいろんな人の声・いろんなアレンジで聴けるならそれはそれでいいじゃん」という考えなので、結構カバー曲を聴くのは好きである。

小田和正が「クリスマスの約束」という番組を冬にやっているが、あれも別の人の歌を小田和正がカバーするからよいのである。小田さんではない別の人がカバーしていることもあるが、私はあくまでも小田さんがカバーをしている歌を聞きたいので、こうしたことが増えていることは個人的に非常に不満である。

さて、これまで数多くの歌が数多くの歌手によってカバーされてきたわけだが、私が地味に注目しているのが「発掘系のカバー曲」である。

これは、人気のある現代の曲をカバーするのではなく、知る人ぞ知る隠れ名曲や昔の曲をカバーしたものである。
例えるならばこれは、現代人にとっての懐メロと出会うための「鉱脈としてのカバー曲」である。

不思議なことにこういう取り組みはアニメの主題歌なんかに多い。
一例を挙げれば「夏のあらし!!」とか「そらのおとしもの」の主題歌は話ごとに異なり、そしてどれも昔の歌のカバー曲であった。
制作陣の趣味みたいなものでもあるのだろうが、私のような懐メロ大好きマンからすれば垂涎のアルバムであった(というか当時買った)。

最近になってもこうした取り組みは続いているようで、ユーチューブで突然「ウタヒメドリーム」なるコンテンツの広告が出てきた。
昭和、平成、令和の神曲をお届け」という謳い文句だったので漫然とみていたところ、いきなりBaBeの"She has a dream"のカバーが流れだして「おっ、わかってるじゃねーか」と思ったが最後すっかりグリップされ、2分程度の広告をしっかり見てしまった。

見終わってふと思ったのだが、現代のアーティストなり声優に、人気の有無にかかわらず昔の曲をカバーしてもらえば、現代に歌が蘇るのではあるまいか。
シティポップ隆盛の今にあって懐メロを見直す動きは進んでいるし、昭和の曲たちのあの何とも言えない、今にはない旋律と歌詞は今でも――いや今だからこそ、目新しく価値があるように思う。
それだけに、いまを生きるおじさん方でコンテンツに関わっている方々にはぜひ「この歌は残したい」と思うものを若い子たちにでも歌わせてあげてほしい。
ネットにさえ残っていれば、その音を聞きに来る人は必ずいるはずだ。

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