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やはり直接会うのがいいねって話

新型コロナウイルスでいろいろと騒ぎ始めてから、あっけなく2年半が過ぎてしまった。
いつぞやは緊急事態宣言で町がすっかり閑散としていたものだが、いまでは賑わいを取り戻した。
健全になったと思う。

そういえば昨年ごろだったか、都や区の職員が渋谷なんかで外出自粛を町に繰り出してよびかけているというニュースをよく見た。そのとき、政治家の考える対策など「やっている感」でなんとかなっているのだとしみじみ感じたものだ。
そもそも、渋谷なんてのは人が住む町ではなく、いろんなところから外出した結果訪れる町なのである。「本気で外出してほしくない」と呼びかけるなら、もっと住宅地の多い地域の方がいいに決まっているのに、それが渋谷だというから突っ込みどころが満載だ。
「やってる感」を出すにしても、やけにわきが甘いなあと思った記憶がある。


ところで、2回目の緊急事態宣言の時に、ある女性から「自分の知人が、永遠に緊急事態宣言でいい、と言っていたんです」との話を聞いた。

どうやら、その知人は新型コロナで親族をなくされたのだという。冥福を祈るばかりだ。
個人的には永遠に緊急事態宣言で、と言う話だと、それはもはや緊急事態ではないのでは、と感じてしまったのだが、それはまあいい。

そのときふと思い出したものがあった。
MOTHER3というゲームに出てくる、「ぜったいあんぜんカプセル」というものだ。

これは主人公の宿敵がラスボス前の戦いで負けると逃げ込むカプセルで、あらゆる攻撃がきかないという最強のシェルターなのだが、入ったきり二度と出ることができないという特徴も持ち合わせている。
延々と「外出自粛を」「外に出るな」と言っている人間を見るたびに、このカプセルのことが頭をよぎる。

仮に、永遠に絶対的な安全を保障してくれる、快適なカプセルの中で永遠に生活をすることになったら、どのくらいの人がそれを選ぶのだろう。

SNSや電話なんかでつながることはできても、「生々しい、他人との交わり」を捨ててまで、それを選ぶのだろうか…と少し考えてみると、どうにも私の首は縦に振れない。


いっとき、一部の議員が自粛破りといって、宣言期間中でも飲み歩いていたり、クラブに行っていたりしたことがあった。これ自体は実に呆れた話ではある。

が、同時に私は「人間、やっぱり酒とか飲みに行きたいのだなあ」とのんきに考えていた。

思うに、多くの人が交錯する瞬間を求めている。
友も、酒も、情も、肌も、そして時には色もそうだろう。


正直酒に強くない私である。
これまで飲みの席が好きな方ではなかったが、いざなくなってみるとさすがに「たまには…」と欲が出る。

やはりどこかで、酒と人との交わりを求めている自分がいるのだなあと思いが至り、ひとり慰めに、仕事終わりの夜更けにグラスを傾けてみたりして—。

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