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転職物語Ⅱ上 「ビズリーチ」使ってみた

新卒で入った銀行をやめ、まがりなりにも文章を書く仕事を始めた。職務内容も楽しいし、人も悪くない。ワークライフバランスも問題ない。

しかし、ある一点に不満が募っていた。金の問題だ。

実は転職してからというもの、生活の収支のバランスが取れないまま半年くらい過ごしており、貯金が底をつきかけていた。さすがに月17万円だとちょっときつい。元銀行員でありながら家計の収支のバランスが取れないというのは笑いごと以外の何事でもないわけだが、何とかせねばとの思いで2度目の転職に至ったのだ。

前回の「転職物語」では淡々と流れを追いながら書いたので、今回の転職物語②では要点だけを記すことにしようと思う。前のものより体系化されていない点はご容赦願いたい。

今回の転職理由は「金がない」からである。職務内容について何ら不満はないので「文字を書いて食っていける」場所で給与を上げようと考えた。

書類の通過率は前回同様低い。24歳にして転職回数が2回目(3社目)であり、1年2カ月での転職が続くとなると、企業にとっては「コイツは本当に定着するのか」と心配になるようだ。至極全うだ。私が人事でもそう思う。

幸い、会社も就業時間についてうるさく言う会社ではなかったので(そのかわり、残業代の支払いもテキトーである)、「病院」「立ち寄り案件あり」「私用」「腰痛」などと様々な理由を駆使して時間を工面できた。

応募の時点で「物は試しだ」と思い、使ってみたのがビズリーチである。

簡単に言うとヘッドハンターがいろいろと案件を送ってくれ、企業から直接「面接しよーぜ!」と来るサービスだ。なかなかヤリ手の人が転職する際に使う媒体らしい。私はヤリ手でもなんでもなかったが、使ってみると結構面白い。以下に、個人的に感じた特徴を記そう。

①営業がしつこいため、他者による承認欲求が満たされていく
②ヘッドハンターと案件は1対1。ゆえに不採用となった場合はそれ以降の繋がりはかなり薄い。リクナビやマイナビなどの「キャリアアドバイザー」とは立ち位置が違う。簡単に言うと面倒見はよくないということである
③登録しているだけで何故か自信がつく
④会社レベルのスカウトであれば役員面談や社長面談からスタートというケースもある(らしい)
⑤たまに間抜けなヘッドハンターもいる

①営業がしつこいため、他者による承認欲求が満たされていく

登録するや否や、大量のヘッドハンターから「ぜひ一度お話を」「こんな案件があるのですがいかがですか」「私には3人の息子がいます」といった、公私の区別もない連絡が次々に届く。

こういう連絡を受けると人はいい気分になるもので何も結果は出ていないのにも関わらず自分に対する有能感が募っていく。承認欲求が満たされる中で「話を聞いてやらんでもない」という気持ちになってしまうのである。

もちろん、自分の関心がある案件かどうか、はたまたその会社が自分の志望を汲んでいるのかどうかなど、多様な視点からコンタクトを取るかどうかを判断することは必要だ。


②ヘッドハンターと案件は1対1。ゆえに不採用となった場合はそれ以降の繋がりはかなり薄い。リクナビやマイナビなどの「キャリアアドバイザー」とは立ち位置が違う。簡単に言うと面倒見はよくないということである

簡単に言うと、ヘッドハンターと案件が1対1で紐づけられているのだ。A社の総合職の案件のヘッドハンターがX氏だとして、あなたがX氏を通じてA社に応募する。あなたがA社に落ちるとX氏とのつながりも断絶する、という感じだ。

一般的な転職サイトの「キャリアアドバイザー」なんかは転職終了まで面倒を見てくれることもしばしばだがヘッドハンターはそうではない。キャリアアドバイザーがウェットな関係性だとすれば、ヘッドハンターは殺伐としたドライな関係性だと思えばわかりやすい。


③登録しているだけで何故か自信がつく

これはCMの効果もあろうが、ビズリーチに登録しているだけで「自分はハイクラスなのでは」と錯覚できる。これが意味のない自信につながるので、面接の際に声が大きくなるというポジティブな効果を誘因する。

ある意味での選民意識みたいなものなのだろうか。こういう自己効力感みたいなものを上手く演出するのは、人をポジティブな方向に向かわせるときに大事な仕組みだ。


④会社レベルのスカウトであれば役員面談や社長面談からスタートというケースもある(らしい)

どんな企業かは知らないが、一部の企業からのスカウトが既に役員スタートというケースもみられる。人手不足の時代ではあるが、社会人3年目の人間に社長面接スタートとは恐ろしい。逆に何か秘密があるのではと勘ぐってしまうほどだが、面接に何度も行くのが面倒ならば行くのも一手かもしれない。


⑤たまに間抜けなヘッドハンターもいる

あるヘッドハンターが案件付きで私にメールを送り、それっぽいものがあったので連絡したところ、「面談に来てほしい」と言われた。時間もないので電話でどうにかならないか、と言ったところ「直接会わないと案件の紹介は出来ない」と言ってきた。であるならば、なぜ私宛ての最初のメールで案件の紹介ができたのか。法律の問題があるのだろうか。いまだによくわからない。


じゃあ、実際に使ってみてどうかというと、ヘッドハンター経由で送ることで書類の通過率が少しいい(かも)というのが実感だ。私は転職サイトで有名なマイナビに、ヘッドハンター経由とマイナビ経由で2度実験的に応募したが、ヘッドハンター経由では何とか面接にこぎつけたものの、個人で送ったものは書類でハネられた。

場合によっては、その企業の偉い人とつながりがある、というケースもあるようで、「頼めば入れられるよ」的な態度を取るヘッドハンターもいる。私も大層な自信だと思い「ちょっと入れてみてくれよ」と思いながら受けたのだが、結局最終面接で落ちた。最後の最後は自分の意志や哲学が問われるのは変わらないものだと改めて実感したのである。(つづく)

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