見出し画像

したいなりたい

ファッションとは何か。
その定義は難しく、特に、人々の間で流行している服装を指すが、髪型や化粧、香水などもファッションの範疇になる。
さらに広く見れば、音楽などの文化やライフスタイルまでも含まれる場合がある。

ファッションとは大きく偉大であり、纏った服装、髪型、化粧、香水などによって自分や他人を大きく変える。

靡かない


髪を切った。

後頭部から肩、背中にかけて伸びた黒くて長い綺麗な髪の女の子

それが私だった。

そんな私を見て、
ある子は私の髪を見て綺麗だねと言う。
ある子は私の髪を見て似合うねと言う。

黒くて長い綺麗な髪、私らしい髪型

私らしい髪型はいつしか私の象徴として、
私として鏡に映した。

綺麗、清楚、似合う、私らしい

かけられた言葉の数々が私を靡かせる。

腰まで伸びた長い髪に自分を支配され
髪は私を誰かにとって私らしく染めていく。

誰かにとっての私
わたしにとっての私

他人の期待や好奇心でつくられた私の髪が背中に重くのしかかる。

褒め言葉が嬉しくなくなったのはいつからだろうか。

頬の側を生暖かい湿気混じりの風が吹いて、短い髪が小さく揺れる。

線路を跨いだ先から私の名前を呼ぶ声が聞こえる。

誰からか、どこからか、分からない。

ただ聞こえてくる方を見て、目だけを笑わせ会釈する。いつも通りに

終わると、電源のついていないスマホに目を向けて指を動かす。

「カミイイネー」

何度も聞いたことのある褒め言葉

私ではなく私の髪に向けられた褒め言葉がいつも通りまた私の耳に清々しく入っては私を綺麗に染めていく。

向かい側のホームを見ると誰かが手を振っているのが見える。

私は右手に持ったスマホに視線を落とし、無視をするのは失礼かと思い、手を振り返そうと左手に持ちかえる。

左手に移す瞬間、真っ黒な画面には短い髪の自分が映る。

昨日までいた黒くて長い綺麗な髪をした女の子はもういない。

勢いよく顔をあげてあたりをを見渡す。
自分ではない誰かを探して、

顔をあげた反動で額に残っていた汗が耳横まで滴れるのに私は気付かない。
たしかに私の名前を呼んでいた誰かを探して、もう一度線路を跨いだ先を見る。

線路を跨いだ先に目線が重なり、私と同じ制服を着た男の人がこちらを向いて何故か嬉しそうに笑って手を振っている。

耳横に滴れた汗がマスクの顎下を濡らして、
ようやく私は自分の汗に気付いた。

ポーチからハンカチを取り出し、
水気を取ろうとマスクを外して見ると、

マスクの内側についた赤いリップがこちらを向いて笑っていた。

ファッション


男らしい格好
女の子らしい格好

人の価値観や周りに左右されて自分を見失ってはならない

人は簡単に自分を見失う

時間の流れ、関わる人の変化、他人からの一言

様々な外的要因が他人を自分を良くも悪くも覆す

したい
なりたい

同じ人なんていない
全く違う人もいない

好きな自分で

人は誰しもがなりたいようになれる

ファッションは自分を変える。
どんな自分にもならせてくれる。
今までとは違った私を見つけてくれる。

明日は何を着ようか、

#ファッションが好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?