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圧倒的心身の強さ『SISU/不死身の男』

『SISU/不死身の男』を観ました。
当初観る予定はなかったのですが、面白いらしいとSNSの感想でみかけたので それならばとチケットを購入。
公式で“犬は無事です”動画が出てるのも印象に残った理由の一つです。お茶目だな。

あらすじはこんな感じ。

1944年 第二次世界大戦末期、ソ連に侵攻され、ナチス・ドイツに国土を焼き尽くされたフィンランド。凍てつく荒野を旅する老兵アアタミ・コルピ(ヨルマ・トンミラ)は、愛犬ウッコを連れ、掘り当てた金塊を運ぶ途中でブルーノ・ヘルドルフ中尉(アクセル・ヘニー)率いるナチスの戦車隊に遭遇、金塊も命も狙われるハメに。アアタミが手にしているのは<ツルハシ1本>と<折れない心SISU>だけ。それでも戦場に落ちている武器と知恵をフル活用し、ナチス戦車隊相手に、機銃掃射を浴びても、地雷原に追い込まれても、縛り首にあっても、挙句の果てに戦闘機にツルハシ1本で食らいついても、絶対に死なない!それどころか、機関銃を撃ちまくる敵には埋めてあった地雷をぶん投げ、一撃で爆殺。戦場にたまたま落ちていた武器と知恵で次々とナチス軍を討ち破る。
彼こそはかつてソビエトとの冬戦争に参加し、家族を殺された報復として、たったひとりで300人ものソビエト兵を殺した<伝説の兵士>だった。
アアタミはいかにして戦い、そして生き抜くのか――。そしてアアタミの目的地とはー?

映画『SISU/シス 不死身の男』公式サイト (happinet-phantom.com)


いや〜〜〜〜〜面白かった!!!
『ジョン・ウィック』や『Mr.ノーバディ』を初めてみた時の興奮と似ています。
公式曰く、観終えた後 己の心に“たぎるもの”、それが<SISU>だ! ということなので、私はこれまでも無意識のうちに<SISU>をたぎらせていたんですね…!!

注意すべきこととしては、たしかに犬は死にませんが やや酷いめには遭います!!!!! あと犬以外で死ぬ動物がいます!!!! 人は予想通りじゃんじゃか死にます!!!!!

あと急に大音量で爆発音がしたりするので、そういったものが苦手な人も注意が必要かもしれません。特に映画の大きな音が苦手と言うわけではない私ですが、地雷が爆発する音などにはビクッとしました。
結構全身でびっくりしたので、左右に人がいなかったのは幸いです……。
なんとなく「この後爆発しそう……」と予想できていても驚くタイプの人も気を付けてください。私はそれでした。

※以下、本編のネタバレを含みます。

SISUとは

翻訳不可能とされるフィンランドの古き良き精神。あえて言うならば、想像を絶するほどの意志の強さ、何があっても折れない心。(中略)母国の独立を守り抜いた偉人達が大切にしてきた、反骨精神である。

映画『SISU/シス 不死身の男』公式サイト (happinet-phantom.com)

英語にも日本語にも、とにかく他言語には翻訳できない言葉だそうです。フィンランドの人たちにとっての“生き方”や“誇り”とも言えるでしょうか。明確な定義がないとも言われているそうなので、人によって少しずつとらえ方が異なっていてもいい、強くも優しい考え方に感じます。

にしても犬と馬と焼け野原で暮らす金塊掘りのおじいちゃんがSISU魂を持った“一人暗殺部隊”と呼ばれる実力の持ち主だなんて誰が思う???

伝説の男 アアタミ・コルピ

台詞がぜ〜〜〜〜〜〜んぜん無い。びっくりするくらい無い。叫んだり息切れしたり苦しそうに唸ったりはするけど台詞という台詞は本当に、全然無いです。
だからって観ている側が困ることもストーリーに支障が出ることもないんですが、マジで喋りません。記憶が間違っていなければ最後の一言くらいしか喋ってません。
なのにアアタミから目が離せないし印象に残っているシーンはたくさんあるんです……ヨルマさんの惹き込まれる演技…………すごい……ていうかシンプルにかっこいい………

アアタミがなぜ金塊を掘っていたのか、どこへ運ぼうとしているのか、なにもわからないまま話は進んでいきますし最後もよくわからないまま終わります。
最初は誰かに渡しに行くのかと思いましたが家も家族も失っていて、命令違反ばっかりの彼を軍は手放したということなので、自分のためだったのかも。そうは見えなかったんですが……うーん、わからん。しかしそれもまた惹き込まれる理由の1つなのかもしれません。謎の多い人物って気になっちゃいますよね。

最強おじいちゃんすぎる

最初に殺される軍人がま〜〜〜〜あっという間に死ぬ。顔の横からナイフで一突き。あれだけすんなりナイフが通ったってことは耳のあたりをわざと狙ったのか、アアタミの力が強いだけなのか。後者の説得力が増すんだよな見終わった後だと。

このおじいちゃん、地雷原駆け抜けるし、地雷投げるし、軍用犬に捕まらないためならガソリン塗れの己を燃やすし、水中にめちゃくちゃ長くいられるし、水中で気配殺して軍人殺せるし、縛り首にされたのに生きてるし、麻酔なしで体に埋まった銃弾をナイフ使って取り出すし、出血が止まらない傷に土擦り込むし、ツルハシ一本で空飛ぶ飛行機に乗り込みます。

ちなみに地雷を投げるってなに? と気になった方はぜひ本編をご覧下さい。地雷って投げて使えるみたいなんです。

ツルハシは友達

日本版ポスターに“ツルハシ1本でナチスを討つ”って書いてあるんですけど、ほぼ偽りないです。1部ナイフ使ったりもしてるけどほぼツルハシ1本。
アアタミじいちゃん、ツルハシ1本と己の体でなんでも出来る。出来すぎる。強い。ツルハシがあれば飛んでる飛行機にだって乗り込めますからね。コナンくんでも見たことないよそんなの。

心のノブが止まらない

さて、終盤、墜落しそうな飛行機からどう脱出するのかと思いきや脱出せず紐で体をくくるアアタミ。ここまではまだわかる。
飛行機は胴体着陸するのかなと思うじゃないですか。だから体がバウンドしないように括ったのかなって。
飛行機、先頭からほぼ縦の状態で落ちて文字通り木っ端微塵。

ちょっとまてぇ!!!!!

いやでも、これは流石に死にましたわ……落ちた場所には泥なのかガソリンなのかそれ以外なのか、はたまた全てが混ざったものなのか、とにかくドロドロの液体。水と違って目も開けられません。
さて、どう終わるのかな……と思ったらツルハシを上手く使って這い出てくるアアタミ。

そうはならんやろ!!!!!!!!

でもなるんですね。
どこからかまたバイク奪っていつの間にか合流したウッコと向かった先はまさかの銀行。なんで? と思ったら怯える窓口のお姉さんの様子など知らない顔で金塊を机上に出し「できるだけ高額紙幣にしてくれ。その方が軽く持ち運べる」の一言。

いやそれはそうだけども!!!!!

マジで死なない

アイノ曰く、アアタミは不死身ではなく“死のうとしない”だけ。“諦めない”からこそ死なないし、大切な馬を死なせ自分が掘り当てた金塊を奪ったナチス軍を殺しにくる。
諦めない心って大事ですね。

愛犬 ウッコ

君は一体何者なの?????
アアタミがどこにいても必ず見つけて追いつく愛犬ウッコ、逆に怖い。それを逆手に取られてアアタミがピンチになったりもするけど君は何も悪くない。
アアタミが敵の飛行機乗っ取って飛んでった時、君は何食べてたの??? 君が食べられるようなものあった???? 臓物でないことを祈るばかりです。
そしてよく飛行機で飛んでったアアタミのこと見つけたね。いくらなんでも匂い辿れなくない???? 辿れるの??? 私犬じゃないからわからないけど辿れるもの?????
気づいたらいなくなってるのに気づいたら近くにいるから、最初はアアタミにしか見えない幽霊か死神的な何かなのかと思ってました。家と家族を失ったっていうので、愛犬も失ったのかなって。でも違ったね。ほかの人にも見えてたね。
ちなみにウッコはヨルマさんが飼っているマジの愛犬だそうです。まさかの共演すぎる。でもそれならあの息ぴったりな演技にも納得です。

馬ぁ!!!!!!!!!! 何も悪くないのに!!!!!!!!! 頑張ってアアタミと重い金塊運んでたのに!!!!!!!! 地雷のせいで!!!!!!
地雷を踏んでしまったせいで悲惨な姿になってしまうんですが、それでも離れる前に感謝を伝えるかのように寄り添うアアタミの姿を見ると、大切な存在だったんだなぁと心がじんわりします。

捕虜の女性 アイノ

地雷避け?に先頭歩く女性が2人選ばれた時、動けずにいた1人と変わってくれたアイノ。自分だって酷いめに遭っているだろうに、強くて優しい女性だ……

最後にフィンランド軍と合流するシーンでわかりますが彼女たちもフィンランド人なんですね。だからSISUのことを知ってる。
登場した時から女性たちの中で1番意志の強そうな表情をしていましたが、SISUのことを知っていたからこそ、アアタミのことに気づいてからはさらに気持ちを強くいられたのかもしれません。

アアタミの協力で車を乗っ取って横付けしたとき、どうするんだろうと思ったら、シート剥がしたそこにはほかの5人の女性たちが!!!!  銃構えて!!!!!  ナチス軍に容赦なく銃弾をあびせていく!!!  
マスクの下で口角がめちゃくちゃ上がっていたのは内緒です。

なんてったって俺!!!  強い女!!!!  好き!!!!

そういえばその前のシーンでアアタミがたくさん銃を持っていました。くれたんですね。おそらく捕虜の女性たちのことは知らなかったと思うので自分が使うつもりで奪っていたのでしょうけど、全部くれたんですね……優しい………しかも全員強い女だ……銃をぶっぱなすことに躊躇いがない………彼女たちもまたSISU魂を持っている……

アアタミがヴォルフを残してバイクで去った時「スパッと殺すかと思ったけど、意外と情がある…?  いやでもヴォルフもなかなか嫌な奴だったのにな…」とか思ってたら煙の奥から捕虜の女性6人が並んで銃持って出てきてテンション爆上がりです。
応援上映だったら「Fooooooooo」とか叫んでました。あと“第6章 皆殺し”が出た瞬間も絶対叫んでました。
そこでヴォルフは死んだと思いきや、女性たちがフィンランド軍のいるところに辿り着くまで奪った戦車の主砲に括り付けられたままというね!!!
盗んだバイクで走り出すどころじゃなかった。

ブルーノ中尉

ラストの飛行機内での銭湯以外、アアタミのことは全部部下にやらせる中尉。階級が上なので命令出来てしまうといえばそうなんですが、明らかに地雷がたくさん埋まっている(しかもどこからかアアタミによって投げられる可能性もある)土地を部下に当然のように歩かせるこの男よ。
7人殺された時点で上官やヴォルフの言う通りUターンしていればよかったものを、どうせ戦争は負けるから生き残るためには金塊がカギだと上官からの命令を無視。ですがおそらく、生き残るためというより私利私欲のためでは…?  アアタミがたくさん金塊を持っているのは既に見ていますから、あれだけあれば遊んで暮らせるぜ!  くらい思ってそうです。
それに終盤、飛行機に乗る前、ここまで着いてきてくれた部下をあっさり銃殺してしまうのをみるに、そうとしか思えない………

意味深に飛行機内の爆弾映されてたからなんかあるとは思ってましたが、最後それと一緒に落とされてや〜〜〜〜〜〜んの!!!!!!!な〜〜〜〜〜にがF**k youですか!!!!  小学生みたいな捨て台詞ですこと!!!!  

ただ、序盤、どうせこの先で死ぬだろうと1度は見逃した老人の進んだ先で、1人殺すにしては多すぎる銃の音がしたのに気づいてUターンしたところをみるに、ただ偉そうなだけではないんでしょうな。実力がある上で横暴だから逆らえない。1番嫌なタイプです。

おわりに

頭を空っぽにして笑ってみられる最高の映画でした。
皆も『SISU/不死身の男』を観て<SISU>をたぎらせよう!

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