見出し画像

大津PAで出会ったエンブレムが開く車 forさわやか


柵越えとウェルカムゲート

朝6時ごろから準備を始めて8時過ぎ、友達の家を出発して最寄りのバス停に歩く。
京都・烏丸四条で乗り継いでバスでさらに40分。
ヒッチハイクのスタート地点である桂川PA付近にあるバス停に10時前に着いた。
向かう先は桂川PA。このパーキングエリアからヒッチするは3回目だがバスルートは今回が初めてだ。

「こっち方面は覚えてないけど反対方向は柵越えしたんだよね、どうだったっけこっち側は」

大阪方面行は柵越えしたけどこっちはどうだったかな。
まあいっか。決して侵入できないところではなかったから。

前に同じ方向にヒッチした時はボード掲げて1時間半だったからどれくらいかかるかな。
「あ、道こっちか。」とか緊張の一切ない余裕な気持ちで歩いていた。

対して、初めてヒッチハイクをする連れの友達は「緊張する!」とか「柵越えるとかあるの?!」と初めてらしい心配を口にしていた。
(なんかこっちの記憶の曖昧さで振り回してしまうのも申し訳ないかも・・・。)

そんなことを5分も話しているうちにあっという間にパーキングエリアのウェルカムゲートが見えてきた。

(あれ―こっちは外部からの人をウェルカムゲートなんていう熱烈な歓迎で出迎えてくれるのか)

なんかちょっと残念さを感じて「柵越えする?」と冗談ぽくしてポールを結んでいる鎖を右脚を振り上げて反対側に運んだ。
(自分でやっておいてくだらな)
「あれ、こっちは違うんじゃない?」

「ほんとだ、この先業務用の道じゃん。全然関係ないじゃん。」

そんな茶番をしつつ声かけするにあたっての準備を始めた。

まずはヒッチハイクで声をかけるにあたって人が集まりやすい場所を説明した。
それはゴミ箱とトイレの前。

実際に乗せてもらった人の中には休憩はトイレにしか行かないと言う人もいるくらいだからお店の入り口とかよりも人がいる。

そして自分達は距離がそこまで長くないので「浜名湖」と最初から目的地を掲げて声をかけるようにとか、
声のかけ方とかを教えた。

作戦を入念練って終わらせた。

人に頼みごとをする姿勢

遠征帰りらしいジャージ姿の学生グループや赤いワッペンをそれぞれ体の見える所に着けている老人のグループ様。
いろんな人が目の前を通り過ぎていく。

乗せてくれそうな人に目星をつけていつものように声をかけていった。

20組くらいに声を掛けていたタイミングで目の前の駐車場に青い車がバックで駐車してきた。
面白い。車のエンブレムがパカッと開いて後部カメラになってる。
多分これしっかり閉まるタイプだ。
これ作った人賢いなぁ。
なんてどうでもいいこと考えてた。
駐車を完了させたのかバックライトが消えた。
予想通りエンブレムが車体に収まっていく。

さぁ気を取り直して、声掛けしよっと。

「大津までで良かったら乗せてあげようか?」
声がしたのは青い車の一部始終を眺めて5分くらいたったくらいだろうか。
その男性の声は声掛けをしていた背後から突然かけられたものだった。
パーマを程よくかけて、一言でいえばかっこいい人だった。
「良いんですか!?」すかさず振り返ってそう返した。

声をかけてくれたのは20代後半位の若いカップルだった。
しかし声をかけてくれたはいいものの、大津までと短距離であることを心配していた。
だが心配は無用、こちらからすれば短距離でも前に進めるのはありがたい。
静岡まで行く、通過する人に会える可能性が高まるからだ。
それを説明して乗せてもらえることになった。

そして驚いた。
付いて行った先はさっき駐車する時にエンブレムが開いてカメラが出てくるあの青い車だった。
自分の眺めていた車に乗り込むとは思ってもなかったから衝撃だった。

「荷物は後ろに乗せて〜」
その優しさに甘えて二人分の荷物を置いた。
自分たちは後部座席に座り大津までのあっという間の時間が始まった。

道は順調に流れ、幸先いいスタートを知らせてくれるようだ。
そして乗せてくれた二人は琵琶湖西のペンションに行くらしい。

道中の桂川PAで休憩しに来たところ、ヒッチハイクをしている自分たちを見つけたという。
最初は乗せるつもりはなかった言い回しだったがが、
自分たちの他の人に対する姿勢を見てこの人たちなら乗せても良いと判断して声をかけてくれたという。
車内は黒で統一され、清潔感のある車内だ。

(ペンションに行くことや車内の内装、お話しされている雰囲気から察するに会社の社長さんもしくはかなりそれに近い役職の人なのだろう)
となんとなく想像を掻き立てる。

自分は運転席の後ろ側、友達は助手席の後ろに座った。

早速自分たちの旅の理由を説明した。
「私、初めてさわやかに行くんですよ。しかも初めてのヒッチハイクで」

「そうなの!?私たちも行っちゃう?」

「あ〜なんか知ってる。友達がさわやかハンバーグ食べたって写真送られたことある」
車を走らせ始めた運転手の男の人が言う。

「ヒッチハイク初めてか〜。ほら、現在っていろんな人がいるじゃん。だから見た目がチャラそうだとこっちも乗せたいとは思わないじゃん。」

(ほんとおっしゃる通りよ...)

「でもそーたくんはそんなチャラそうな服装でもないし声掛けてる時の姿勢も礼儀正しかったのもあって乗せることにしたんだよね」

(自分たちの姿勢を傍目に見ていたんだ。)

(広島県の三次から大阪に帰る時に降ろしてもらった、福山SAで見かけた同業者は半日捕まらなくてここに居ると言ってた。その人はお腹が少し服からはみ出していてお世辞にも清潔とは言えない格好だった。)

「で、二人は付き合ってんの?」

「いや、付き合ってるとかではないです。」
自分が言って
「付き合ってるとかではなくてお互いに普通の友達です。」
と友達が返す。
「なんだ、てっきりカップル二人でヒッチハイクしてる度胸あるやつらかと思ったよ」

「私は別にお付き合いしている人がいるんですよ。お二人はどうなんですか?」

(男女ヒッチハイクでこの質問はもはやお約束だよな)

「俺らはしっかり付き合ってます」
「わたしたちはこんな感じだけどね」

途切れることを知らない会話をしている間にもう大津SAの入口に滑り込んで行った。


あの時乗せてくれた二人の名前をまだ僕たちは知らない


「せっかくだから写真撮っていい??」
運転してくれた男の人が言った。
琵琶湖畔を望めるテラスで通りかかりの人に声をかけて撮影してもらった。
「インスタに写真送ってもらってもいいですか?」
友達が聞いていた
「もちろん。」
別れの気配を感じてすかさずスタンプを渡す準備をした。
「あ、最後に30秒ほど時間をもらってもいいですか?」
「いいよー」
いつものようにスタンプを準備する。
乗せてもらった桂川PAは既に押印済みで前日からあまり押す気にならなかった。
その代わり、仕事終わりに京阪の出町柳駅のスタンプを押していたのでそちらをわたした。
「わたしもチョコレート渡そうと思って持ってきてるのでよかったら…」
そういって友達もチョコを二人に渡していった。

(あれ、待てよ。このままだとこの人たちの名前知らないままだぞ・・・)
「すみません、最後にお二人の名前を教えてもらってもいいですか?」
「そうじゃん!!」
「たしかに名前言ってなかった!」

本線に戻っていく、さっきまで自分たちが乗っていた青い車を二人で見えなくなるまで手を振ってお見送りした。
ありがとうございました。

以下、印影と写真

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?