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絵本の裏側 3

処女作完成から約半年。
なんと、コンクール事務局から手紙が届きます。

再挑戦、なのか

何のことはない、過去の応募者へ宛てた次のコンクールへの案内でした。
それでもその便りによって”絵本”を思い出します。そして葛藤が生まれます。

正直しんどかった製作期間。
消化不良に終わったもやもや感。

再挑戦決心の決め手は、新しい出会いでした。

こんにちは屋我地島

屋我地島(やがじじま)。そこは、私の新しい職場でした。
私はここで自然案内人として働き始めていました。

マングローブや海を案内しながら、屋我地島や沖縄の自然についてどんどん知っていきました。歴史を知り、島の知り合いが増えていきました。その場所に根を張る感覚を知りました。

マングローブの森(本当は林くらいの密度)は訪れる度、新しい発見に溢れていました。数え切れないほどの生き物がうごめいていて、私がいくら関心を寄せても、彼らはちっとも気にすることなく、ひたすら活動を続けています。その様子をただ眺める時間が至福なのでした。

いまとむかし

島の歴史を学ぶ機会がありました。
30年前、50年前、70年前、そして現在の島の航空写真を見比べました。
驚いたことに、今、広大な干潟になっている場所は、かつては海草がたくさん茂っていた場所のようでした。マングローブの生えている範囲やその種類も変化したようでした。島を占める畑の範囲はみるみるうちに増えていました。

私が見ている屋我地島は、昔とまったく同じじゃないんだ。

そんな当たり前のことを改めて思ったのでした。
大きな時間の流れの中で変化はあってしかるべき。でも、なるべくならば、人間の手で害されることなく、生き物たちの営みが続けばいい。
そのためのひとつの手がかりとして、今私が見ている屋我地島の自然を写し取ろうと考えました。

標本みたいな絵本

見たものそのままに描こうと思いました。
気持ち悪いものは気持ち悪く、ごちゃごちゃしているものはごちゃごちゃと。絵本を見て「ちょっと気持ち悪い」とか言われたら、それは嬉しい感想です。

タイトルページには、いつ見た『ふしぎなもり』なのか私自身も覚えておくため「2019年のよへな海岸」と、副題を入れました。
2025年はどんな様子か。
2050年はどんなになるのか。
この絵本を携えて、見に行こうと思っています。

屋我地島はこんな形の島。島の形も結構好きです。

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