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絵本の裏側 1

なぜ絵本をかくことになったのか。
絵本作り初心者らしく、格好悪くさらけ出してみようと思います。

スケッチのおじさん

その頃、仲良くなって、たまに訪ねてはおしゃべりをするおじさんがいました。おじさんは、市場の一角で1坪くらいの小さなアトリエを開いていました。
1坪といっても、広場にテーブルを置いたり、ワゴンを持ち出したり。閉まっていると1坪、という場所でした。

アトリエは、「スケッチ」といいました。なぜだかいつも「スケッチ」だったか「アトリエ」だったか、名前がわからなくなるのでした。

あるとき「スケッチ」の由来を聞いてみました。

「スケッチをするときには、描こうとするものを嫌になるほど見るでしょ?その見るってことが大事なんだよ。世の中何でも、よく見なくちゃいけないからね」

それを聞いて、私はすっかり「スケッチ」と覚えたのでした。

絵本書けば?

そのおじさんに、趣味でかいた貝や魚の絵を見せることがありました。
ふんふん言いながら見てくれました。「もっと貝と一体化するんだよー」とも言われました。
ある日、絵を見ながらふとそのおじさんが言いました。

「あんた、絵本でもかけば。」

え、絵本?
おじさんは、冗談も真面目なことも、全部ホントっぽく話す名人でした。

文通

当時、私はなじみのない場所へ引っ越したばかりでした。引越しをきっかけに、遠くの友人と手紙のやり取りをしていました。

おじさんに絵本と言われたのと時同じくして、一枚のはがきが届きました。
その最後にひとこと。

「くみちゃん、絵本なんてどう?」
私をよく知る友人からのはがきでした。

そうか、絵本か…
頭のなかで「絵本」という単語が大きく膨らみだします。
ほとんど同時だったことに加えて、ふたりの言葉はなんだか大事にしたい。そんな気持ちもありました。

みかん100㌔

それからというもの、頭の隅に「絵本」をしのばせながら、過ごすようになりました。
書くとしたらどんな話か。どんな道具でかいたらいいか。
暇なときに構想を練ったりもしました。

ある日ぷらぷら図書館へと行きました。
お知らせやパンフレットが置かれる一角に、「絵本コンクール」のパンフレットを発見します。そんなコンクールがあるのか。
しかも…?

最優秀賞、ミカン100キロ!

応募することに決めました。
締め切りと目標ができて、がぜんやる気が湧いてきます。

ミカン100キロ、もらったらとにかく冷凍しよう。

こうして、絵本をかき始めました。

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