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きっかけよりも

2021.11.10

今、この文章は病院のベッドの上で書いています。

いや、

厳密に言うと、病院のベッドサイドテーブル、食事用の簡易な引き出し式ボードの上で書いています。入院に伴って仕事の色々をストップしてもらい、私に負担ないように調整してもらっているみたいで、ありがたい話でしかありません。でもこうなってみて思い出したのは、2011年に大病をしたことを踏まえ「ライターってもしかして病床でも続けられる生業かもしれない」と思ったのがライターになろうと思ったきっかけだったということでした。(普段の仕事はライター専業というわけではありませんが)当時のイメージは、本当にベッドの上でパソコンを叩いている感じだったのですが、そこは、まあ。(それは今私の身体が比較的元気な証拠かもしれません)

ちょうど入院前から、恩師というかずっと私の心の師である佐藤友美さんの著書『書く仕事がしたい』を読んでいます。佐藤友美さんを知ったきっかけはtelling,でされている『本という贅沢』という連載でした。

ある本の書評が良くてすぐ購入したのですが(めちゃくちゃ想定読者)次のオススメを楽しみにしているうちに、紹介される本はもちろん、さとゆみさんの文章そのもののファンになっていたのです。普段、会社員の仕事とは別に、音楽評のようなものをごにょごにょ書くことがあるのですが、文章を読んでその対象物に興味を持ってもらうことが一番したかった自分にとって、数多あるあんまり読む気のしない音楽評(これについては別途、ちゃんと向き合っているし、自分の問題と思っているところはあります)とは別の、読みたい音楽評の手がかりになるような気もしていました。そんなタイミングで運よくさとゆみさんのライター講座が開催されるというので飛び込んだのが2019年のこと。

『書く仕事がしたい』発刊にともなった、編集者田中里枝さんとの対談記事は、そのライター講座でクラスメイトだった塚田智恵美さんが担当されました(個人的に智恵美さんの文章のめちゃくちゃファンでもある)。


きっかけの話ばかりして「ライターになろうと思ったきっかけ」と言ったけど、今もまだライターになろうと思っている最中のようで、ライターなのか!?と迫られるとごにょごにょしてしまう。

『書く仕事がしたい』の中でさとゆみさんは、書く仕事をするためにはまず「書く仕事をすると決め、腹をくくること」と書かれています。そのことは、ずっと自分が先延ばしにしてごにょごにょし続けてきたことだなとも思う。時間のある入院生活、この本ももう充分読み切ってもいい頃なのに、私はわざと読み切らず、少し読んでは脱線して別のことを考えて、ノートに色々書き込みながら日々を過ごしている。きっと、読み切ったころには腹をくくっていないといけないから。それはきっかけの話よりうんと重要。

『書く仕事がしたい』という、切実で誠実なタイトルを毎日目の中に入れながら、どうやって誠実に読了しようかと、考える入院生活です(すぐ退院なのでご心配は無用)。