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8.飼う覚悟

うちでは今まで、4匹の保護犬猫と、ペットショップで出会ったレオパと柴犬の合計6匹の動物を飼ってきた。

一番最初は雑種の女の子。
友人の乗っていた車を後ろから追いかけてきていたのを保護した子を、母が引き取ってきた。
テリア系の血が強いようで、冬になるとお顔の毛で目が見えにくくなるのが可愛かった。

年々、薄茶色から真っ白になっていき、15歳で虹の橋を渡った。家族全員で「ありがとう」「大好きだよ」と、最後まで声をかけて、感謝や愛を伝えた。
私が鬱になって家に戻ってから数ヶ月、父が単身赴任で海外に行ってしまう2週間前に亡くなった。
きっと寂しがり屋だから、家族がみんないる時に、見送ってもらいたかったんだろう。

甘えんぼうの彼女らしい最期だったと、今は思う。


その次は、地元の保護団体が行っている譲渡会で、女の子の猫を1匹引き取った。

同じ女の子の先住犬と隔離のために、初めの1週間くらいはずっと私の部屋の中にいた。
先住犬と仲良くなるまではあまり時間はかからなかったので、学校以外ではずっと2匹と一緒だった。

学校で嫌なことがあって泣いている時、不甲斐なさを感じている時、悔しい思いをしている時…私の気持ちが沈んでいる時には必ず2匹とも私の部屋に来て、泣き止むまで私の視界に入る場所にいたり、ハグさせてくれたりした。

彼女たちがいなかったら、小学生時代を乗り越えることは難しかっただろう。


そして、その3年ほど後に、同じ保護団体から男の子の猫2匹を引き取った。ばらばらの場所で見つけたがとても仲が良く、出来れば2匹一緒に引き取って欲しいということだった。

片方はビビりで片方は人懐っこいが、違うキャリーに入れると寂しがってにゃーにゃーが止まらなくなる。
でも、一緒のキャリーにギュウギュウ詰めにすると鳴き止むのだ。

「2匹一緒に」というところにこだわって曲げることがなかったあのボランティアの方の判断は正しかったんだと実感した。そして、それと共に、将来を見据え、彼らのためになることを第一にし、一歩も引くことなく説得してくれたあの方には、頭が上がらない。


さて、この時までわたしは、動物を「買う」という行為そのものが理解できなかった。
こんなにもたくさんの犬猫が引き取り手が見つからず、殺処分にまて至ってしまうのに、何故買うのか。どうして生き物に値段がつけられるのか。

たしかに、犬や猫には人気の『血統書付き』がいて、貴重な遺伝子を持った子がいるのも分かる。
日本犬は天然記念物に指定されているし、その血を守り、受け継がせるのも大切なのだろう。

でも、高く売って安く世話をし稼ごうとする悪質なブリーダーが減らず、レスキューされる子もまた多い。
そしてどんなブリーダーさんから買っているのか分からない犬を飼うのはどうなのか。その売り上げで、また悲しむ子が増えるのではないか。
と、不安や不信感が広がるばかりだった。

ただ、今回は違った。
運命の出会いをした。と言っても過言では無い。

先住犬が亡くなってから2年半ほど、わたしはペットロスになった。
もちろん、猫たちは3匹元気にしているし、レオパもすくすく成長した。

でも、何か足りなかった。

ぽっかりと穴が空いていた。耐えきれなくなって、火葬前に切っておいていた耳先の毛を撫でて夜な夜な泣いたことも数え切れないほどあった。

5歳からずっと隣に居てくれた子がいなくなったショックは大きく、鬱はなかなか改善せず、むしろ拍車がかかった。

そしてある時、父に「犬を飼ってもいい」と許可をもらった。私のことが心配だったのもあるだろう。何も言わず、快諾してくれた。

それから愛護団体の譲渡会やペットショップに行き、色んな子を見てきたが、ある1匹の柴犬を見た時、何かを感じたのだ。

女の子で他の子より少し身体が大きく、月齢は3ヶ月。ペットショップにいる中では少し大きめだった。
その後色んな子の様子を見てから、またその柴犬の元に戻った。

そして、ずっとしゃがみながらその子を見ていたら、離れられなくなり、勝手に涙が出てきた。

何か思い出したわけでもなく、その子が「売れ残り」なわけでもなく、今でも理由は分からないが、とにかく涙が止まらなかった。

母に勧められて抱っこさせてもらった時にはもう限界だった。周りのお客さんにジロジロ見られるほど泣いてしまった。その時に感じた。


「運命の出会い」とはこのことなのではないか?と。

こんなに涙が出たのは初めてだった。私がいちばん戸惑った。

そして今、その柴犬は、私が座っているビーズクッションから私を追い出し、我が物顔でクッションを占拠している。

今まで、生体販売しているペットショップは毛嫌いしていた。「生き物に値段をつけるなんてありえない」と。
でも、そのおかげで「運命」を感じ、連れて帰って、幸せな犬生を送る子もいる。
みんなが酷い目にあっている訳ではない。

スタッフさんも動物大好きな方ばかりで、体調管理に関しても知識がある人ばかり。
いい意味で、色々なことを裏切られた。

ペットショップへの偏見や犬の居ない寂しさ、全て埋められ、そして鬱によって10kg以上減っていた体重まで戻ってきた。最後のひとつはちょっと余計だった気がしなくもない。

いちばん最初に犬を飼ってから、もう18年が経つ。
私はきっともう、動物がいない生活には耐えられないだろう。身をもってそれを経験した。
これからどんな子に出会うか分からない。またペットショップで運命の出会いをするのかもしれないし、道端で拾うかもしれないし、譲渡会で出会うかもしれない。

ただ、これだけは確かである。

飼うからには、一生幸せにする。
どんな苦労があっても、絶対に最期まで一緒にいる。
そして、わたしはどんな子も絶対に「繁殖」はしない。レオパでも、犬猫でも。

この記事を最後まで読んでくれた人は、おそらく動物が好きだったり、今飼っている人や、飼おうとしている人もいると思う。
そこで、いま一度確認していただきたい。

飼う前の、または今から飼おうとしている方。
あなたは、最期のときまで責任を取る覚悟がありますか?
何があっても、どんなことをされても、向き合う覚悟はありますか?

もう飼っている人は、改めて考えてみてください。
災害時、介護が必要になった時、自分が世話をできなくなった時…その子を不幸にさせない準備は出来ていますか?


「うちの子自慢」も待ってます☺️

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