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いちごの季節

夏は開店したその時から音楽フェスティバルが次々と開催され、フリーマーケットからピクニックから、お祭りというお祭りが続き、飴の周りに集まるアリのように、太陽の光にわーっと人々が顔と肩と足を出し、肌を焦がしていく。
スカートは太ももの間でペタペタとくっつき、日陰を探しながら若い身体はぴったりと寄り添い互いの汗を手の中で握りしめている。
熱いねぇなんて言いながらボリュームをフルにあげて手足を投げ出し、踊り出すK-POP軍団を眺めた。
いちごをお土産に友人に会いにいく。
電車の中のクーラーはちょうどよく効いている。イヤホンからPublic Enermy が911を皮肉っている。
寝ても寝ても眠いのは春夏秋冬変わらなく、夢の中で航海に出た疲れで小さな欠伸が止まらない。イヤホンを通して聞こえてくる黒人の電話がブンブン飛ぶ蜂のように無視できそうにない。
夏は触手が外に伸びて、自分の中を見つめることが難しくなる。身体を動かしているうちに自分を見つめないのも私の性格の1つだと感じてくる。
人とうまく分かり合えなくて、欲しかったアイスクリームを貰えなかった5歳の私は胸の内で本当はまだ少し怯えながら様子を伺っている。塗り替えるように今年も、リズムと音で言葉を鳴らし、人の目を見る。
「やり続けなきゃつまらないじゃん。」
あの人の言葉を思い出す。

膝の上でいちごが香ってる。

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