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ハイライト! 2020新作映画~3月編

鑑賞した2020年新作映画(劇場鑑賞)の中から、
ハイライトとなる作品を、毎月気ままに備忘録&ご紹介。(一部ネタバレを含みますので、予めご了承下さい)

3月はコロナウィルスによる外出自粛にもさらされ、
あまり多く劇場に観に行けてませんが、以下ラインナップです。

『初恋』

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2020年2月28日日本公開/115分/日本

あらすじ

新宿の歌舞伎町。身寄りのない葛城レオ(窪田正孝)は才能あるプロボクサーだったが、格下の相手に負け、試合後の診察で自身の余命がわずかだと知る。希望を失い街をうろついていたレオは、ヤクザと関わりのある少女のモニカ(小西桜子)を追っていた悪徳刑事の大伴(大森南朋)を殴り倒し、ヤクザと大伴から追われることになる。(引用:シネマトゥデイ)

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『初恋』の、ここが良かった話
三池 崇史監督最新作。ヤンジャンかヤンマガかスピリッツか…どっかの青年誌で連載してそうな、漫画的外連や、娯楽みに溢れた一本。

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 主人公達に、ヤクザ、警察、中国マフィア…各陣営のキャラ立てがうまく、特に染谷君とベッキーちゃんは、主役を喰う勢い。

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ポンコツヤクザ染谷が物語を面白おかしく転がし、ターミネーター・ベッキーが、スクリーンで、とにかく大暴れ。この二人が映るだけで、画面がとにかく「保つ」んです。

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 劇場出た後、偏差値が下がる感じがすれば、それはきっと映画を健全に楽しめた証。東映任侠映画の2020最新アップデート版として炸裂する、三池節。てらいのない荒唐無稽の極みを、是非味わってほしいです。

『黒い司法 0%からの奇跡』

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2020年2月28日日本公開/137分/アメリカ

あらすじ
黒人に対する差別が横行している1980年代のアラバマ州。黒人の被告人ウォルター(ジェイミー・フォックス)は、身に覚えのない罪で死刑を宣告されてしまう。新人弁護士のブライアン(マイケル・B・ジョーダン)は、彼の無実を証明するために奔走するが、陪審員は白人で、証言は仕組まれ、証人や弁護士たちは脅迫されていた。(引用:シネマトゥデイ)

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『黒い司法 0 からの奇跡』の、ここが良かった話
歴史と振り返るには、あまりに最近の出来事。80年代の実際の冤罪事件、差別とでっちあげの推定有罪。人権も法も、あまりに無下に軽々と歪められていた、当時のアメリカ・アラバマ州。

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冤罪の死刑囚たちのために闘う主人公、弁護士ブライアンを務めるのは、『クリード』シリーズで知られるマイケル・B・ジョーダン。

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共演には、無実の死刑囚ジョニー・Dことウォルターを、オスカー俳優ジェイミー・フォックスが演じる。またブライアンと共に、黒人死刑囚を助けるための法律事務所で働く女性エバを、オスカー女優ブリー・ラーソンが演じる等、実力派が集結。

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今作ではリングでなく法廷に立ち、弁護士として不条理と戦う、マイケル・B・ジョーダン。

どんな映画でも、彼の懸命でひたむきな姿には毎回目頭を熱くさせられますが、知性と情熱、そして誠実さを湛えた今作での弁護士役は、まさにハマり役。マイケル本人の「人の良さ」が、滲んで見えてくる、そんな演技。

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劇中、彼の説く「貧しさの反対は富ではなく、正義」という言葉は、今作の作り手達の“世界への願い”のようで、胸に響いて、ずっと残り続けています。オバマ元大統領の2019年ベストも納得。「良心と信念」の戦いと呼ぶにふさわしい傑作です。

『ジュディ 虹の彼方に』 

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2020年3月6日日本公開/118分/アメリカ

あらすじ
ミュージカル映画のスターだったジュディ・ガーランド(レネー・ゼルウィガー)は、遅刻や無断欠勤を重ねた結果、映画のオファーがなくなる。借金が増え続け、巡業ショーで生計を立てる毎日を送っていた彼女は、1968年、子供たちと幸せに暮らすためにイギリスのロンドン公演に全てを懸ける思いで挑む。(引用:シネマトゥデイ)

『ジュディ 虹の彼方に』の、ここが良かった話
「オズの魔法使い」「スタア誕生(54年版)」で一世を風靡したハリウッドスター、ジュディ・ガーランドの晩年。

19年公開の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のように、当時を知らない世代に「彼女は生きていた」と、伝えてくれる一本。

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幼く、儚げで。危なげで、力強く。美しく、愛嬌たっぷり。オスカー主演女優受賞、R・ゼルウィガーが、ジュディ・ガーランドの「魂」を宿す、超熱演。この作品で、ジュディが大好きになる、そんな圧倒的な魅力に溢れる演技は絶対必見です。

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そして、クライマックス。ハリウッドに翻弄され続けた、子役時代のトラウマから、彼女がほんの僅か、解放されてく様には、落涙を止められない。

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命を燃やすラストステージ。子供の頃に憧れた、なりたかった夢の自分に、一瞬でも彼女はなれたのか。映画史上こんなにもケーキを食べるシーンで、愛しく切ない気持ちになったことはありません。素晴らしい脚本・脚色。これまた、傑作でした。

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』

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2020年3月13日日本公開/123分/アメリカ

あらすじ
人気のテレビシリーズに出演し、瞬く間にスターになった俳優のジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)が、29歳の若さで亡くなる。やがて謎に包まれた死の真相が、11歳の少年ルパート(ジェイコブ・トレンブレイ)との間でひそかに交わされていた100通以上におよぶ手紙によって明らかになる。(引用:シネマトゥデイ)

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』の、ここが良かった話

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文通を交わす主人公の2人を中心に、互いに癒しも傷つけもする登場人物たち。私たちを取り巻く人間の多面性や、繊細で危うい人間関係のバランスが、絶望でなく希望を込めて描かれます。

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世界中の誰もが、基本的には「孤独」で、自分勝手で、寛容さも不寛容さも併せ持つ。その時々で「他者」と分かり合えたり、分かり合えなかったりする、本編の繊細なストーリーテリングの妙は、お見事。

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只、繊細な話運び・登場人物描写の一方で、中盤以降の音楽演出が明らかに抑制を欠いてたのが、本当に残念でした。

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もっとミニマルで淡白で良いのに、音楽づかいがノイズとなって、映画に提供されるエモーションに乗りたくても乗れないシーンや、げんなり冷めさせられてしまったシーンも多々あり。

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映画の冒頭、アデルの名曲「Rolling in the Deep」を使ったオープニングが秀逸だっただけに、個人的に、とても惜しい一本となりました。


『彼らは生きていた』

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2020年2月21日日本公開/147分/アメリカ

あらすじ
第1次世界大戦中、戦車の突撃や激しい爆撃、塹ごうから飛び出す歩兵など、厳しい戦闘が続いていた。だが、死と隣り合わせの兵士たちも、時にはおだやかな様子で休息や食事を取り、笑顔を見せる。(引用:シネマトゥデイ)

『彼らは生きていた』の、ここが良かった話

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第一次大戦のイギリス兵達の視点を紡いだ、ピータージャクソン渾身のドキュメンタリー。戦争が社会の一部で、日常の一部だった時代の圧倒的リアル、本物の映像。多くの戦争映画が霞む傑作です。

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100年以上前の白黒映像が、色づき現代に蘇る瞬間は、鳥肌。

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『1917』の神話的語り口に対し、こちらは戦争を日常の地続きで想像させる、等身大の「生きて帰りし物語」。

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10代の少年達が、ただ仕事に就くように、あまりに普通に戦場へ行き、戦い死んで、生き残った者が日常へと帰る。

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決して特別じゃなかった戦争の「身近さ」や「生活感」が伝わるのは、まさしく実録の成せる業。これは後世に伝えて遺すべき、教材化必須の一本でした。

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以上、3月鑑賞のハイライト作品でした。

ちょっぴりエンタメ界隈、余談。

コロナウィルスによる影響で、東京五輪も延期決定となり、春以降の劇場最新作も、悉く公開延期が続いていますね。

3月末時点で、当初初夏〜夏にかけて公開されるはずだったタイトルも、軒並み公開延期という判断を各配給会社とっています。

私自身、エンタメ業界の一斉自粛、各種案件のキャンセルに次ぐキャンセル等で、経済ショックをモロに受けている立場でもあります。

コロナショック以降、ハリウッドの映画産業はフィジカルからデジタルへの移行を加速させています。

特にハリウッド映画の新作配信は、これまで興行組合の利権(ビジネスモデル破壊)も絡んで、SVOD配信事業者のオリジナル作品以外は、極めて限定的で、二の足を踏んでる感もありました。

しかしコロナによる劇場閉鎖で、新作が映画館スルーで、そのままデジタル配信(劇場を介さないマネタイズのスタイル)が一気呵成に進み、いよいよコンテンツホルダー・コンテンツメーカーは「生存」をかけて、劇場とゆうチャネル選ばなくなってきそうです。

振り返ると2019年の全世界映画興行が「一つの時代の節目」として、ラインナップ的にも、成績的にも、いくとこまでいった「区切り感」があるのは、なんだか良く出来すぎてますね。

個人的には、映画は劇場鑑賞派なので、一刻も早い事態の終息を願うばかりなのですが、コロナ以前/以後で、エンターテイメント産業を取り巻く環境は大きく変わることに、業界関係者も、変化対応が求められてきそうです。

今回はここまで。

画像引用
(C)2020 「初恋」製作委員会
(C) 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
(C) Pathé Productions Limited and British Broadcasting Corporation
(C)THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN INC., UK DONOVAN LTD.(C)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

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