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明日羽ばたけない私

毎日のごはんがあなたを助ける

私の大好きな小説、太陽のパスタ豆のスープ、の一文。一つ前のポストで、あれだけ生きるとはなにか、とかいたけども私は、生きることは食べることだと思う。

生きることと食べることは間違いなく繋がっている。ストレスと過労で不健康な食生活をしていた時は疲弊が著しかったし、食事改善をしている今はわりと健康的で、4ヶ月目にして5キロほど減量した。

この本の主人公、明日羽は婚約破棄に見舞われた。彼女も泣きながらごはんを食べていたけど、実家を飛び出し、自身で生活を整えるようになり、新たな自分と出会う物語。

何かをもっている友達と何もない自分を比べ、ドリフターズリストという名のやりたいことリストにしがみつく。そして毎日キッチンに立つ。

何も持っていない私もまた、毎日キッチンで包丁を握る。なんのためでもなく、自分のために。明日羽と私はきっとどこか似ている。

婚約相手だった譲さんは洗濯機が回っている様子を見ることが好きだ、とあった。実家暮らしであった明日羽には理解できなかったが、一人暮らしになって、つまりは時間があることだと気づく。

今までの私には理解できなかった。それでも電子レンジの横に座ってぼーっとクーラーの風を浴びていたとき、こういうことか、と最近思った。

時間がないときのごはんはやはり質素である。インスタント食品の時もあるし、お弁当に冷凍食品を入れることもある。それが必ずしも悪というわけではないけど、やっぱり時間をかけ、お金をかけ、手間をかけ、おいしいものを食べたいといまは思う。

私は食べることが好きだ。作ることも好きだし、ごはんをテーマにした映画やドラマや小説も好きだ。

理由はきっと、あたたかいからだ。

料理の基礎もわからない。お金だってあまりかけられない。キッチンの狭さはピカイチだし、調理器具だって十分ではない。

それでも私はあたたかい気持ちになりたい。そんなふうに思い、ごはんをつくり、食べる。

今はいろいろな食器を一枚だけ買い、一人分のごはんをつくり、盛り付ける。そんな日々だけど、いつかは誰かに食べさせてあげたい。

そんな日々を願い、私は明日もキッチンに立つ。


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