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時間の切り売り(Chapter1-Section4)

 ダクト清掃で得た収入で、一抹の不安が解消された。マズローの5段階欲求によると、食事や睡眠といった「生理的欲求」と「安全欲求」の確保ができた後に「社会的欲求」が生まれるらしい。この土台が脆弱だと、就労意欲は削がれてしまう。
 仕事に就いてやっと、その成果に対する見返りとして「承認欲求」が生じる。近年、SNSがこの承認欲求を満たすツールになり、実に安上がりな承認欲求に仕立ててくれた。自己肯定感の低い人ほど、「いいね」欲求が高くなるらしい。出世したくない、責任のある仕事に就きたくない。そんな若者も増えているらしい。

 さて、手にしたお金でコッペパン1つ。半分だけ口にした。財産を守るためのリュックを購入。ついでにパンツとタオル、石鹸も買って、10日間履きっぱなしだった下着をやっと替えることができた。

 4日目の研修を終えるも、日中の業務は女性が優先され、男は夜勤しかないと言われた。支給された警備服と誘導灯をリュックにしまい、青梅街道の道路工事現場に出向いた。
 何かしら指示されたが、東北弁がまったく理解できず。日本語が通じないので困った。何度も怒られながら、誘導灯をしっきりなしに回して朝を迎えた。額の汗を拭うと指の先が真っ黒。排気ガスは、鼻の中も真っ黒にした。
 彼らも同じ。東京に出稼ぎで来て、故郷に残した嫁や子どもに仕送りをするのに必死に働いている。不慣れな若造に苛立ったのかもしれない。
 
 ボクが幼い頃、背の高い荷物を背負った行商のおばちゃんがけっこういた。60~80キロあるんじゃなかろうか。野菜を売っていたと思う。キャベツ1キロで、60個~80個。1つ100円で売れたら、6000円~8000円。労力に見合う対価なのかは知らない。
 内職をしている人もいた。量の割に1つあたりの単価の低くさに驚いた。単純作業は賃金が低い傾向にある。今も変わらない。

 お金を稼ぐ基本的な手段は「時間の切り売り」。
 より高く時間を売る為(買ってもらう為)に、親は大学に通わせる。教育費用は投資対効果が見込まれ、リターンを得られるようする事が親心となる。医者の子は医者といった構図がこのようにして生まれる。
 アメリカに移住した東アジアの人は、一代で財産を築ける医者や弁護士になるよう子に願う。いずれも投資対効果の高い職業。高校までが義務教育で、公立高校では学費は無料で教科書も無償で貸与される。
 一方、我が国の義務教育は中学までしかない。高校に引き上げないのは、最低賃金で働く労働者を一定の割合で確保したいのでしょう。
 2020年度のデータによると、中卒の割合は約14%。この推移が30年間変わってないとしたら、相当な社会的弱者を排出している事になります。この「社会の底辺」と呼ばれる領域に近年、技能実習生といった外国人労働者が担うようになりました。
 
 「時間の切り売り」は、サラリーマンにも適用されます。「総支給額」と「労働時間」を割ると時間給が算出できます。
 一昔前、「管理職」を逆手にとり、未払い残業や酷使して使い捨てるといったスキームが流行りました。ゲームの裏技のように、名ばかり管理職を促したコンサルもあっただろうし、2008年に施行された新会社法にも要因があるんじゃないかとボクは考えています。
 従来、有限会社が300万。株式会社が1000万の最低資本金が必要で、そもそも敷居が高った。事業を起こして社会に貢献するには、それなりの志も要した。それが理論上、1円の資本金で設立できてしまうのだから、問題も起きますよ。
 
 7つほど年下の知人は、大学卒業後に10名以下の中小企業に入社。希望に夢を膨らませ営業職に就いたそうだが、新入社員に課せられたノルマは売上1億。成績が振るわないと上司に叱責され、給与は最低。残業代も払われず、鬱になったと打ち明けてくれた。
 経営者の無茶ぶりに驚きました。「買い手よし、売り手よし、社会よし」の「三方よし」が重要です。特殊詐欺は、「社会よし」にならないから、やってはいけない。また、そういう所に身を置いてもいけない。株も「三方よし」の企業に投資すれば失敗も少ない。
 
 さて、給与は売上の3分の1が相場と言われます。1億を売り上げたら、年収3000万と考えていい。しかし、実態は異なります。社会保障費等の都合もあって3分の1は貰えない。余剰(会社への貢献)は、退職金として貰うのが一般的です。
 
 世界の大学ランキングに連なる「オックスフォード」「ハーバード」「スタンフォード」といった大卒の年収相場が2000万。よって、年収2000万が1つの臨界点なのでしょう。
 もし、2000万を稼ぎかったら、金融業界に入るといいです。トレーダー等がその年収です。それが叶わないなら、自分で運用すればいいのです。
 本来、投資に学歴は関係ありません。ボク自身、偏差値30程度のヤンキー高校出身です。
 中学生の時分、アチーブメント・テストという偏差値の選抜方式があったのですが、「そんなもので、俺の人生は決めさせない!」と腹を立ててボイコット。全校生徒でそれをしたのはボクだけ。「前代未聞だ!」と教師に怒られました。
 学力を計らなかったので、その高校になったのです。中学生の時から変わり者かもしれません。
 
 話を戻します。金融業界にいるトレーダー達は、他人の資本を使って稼いでいます。この他人資本をレバレッジ(てこの原理)にした仕組みに「FX取引」があります。対ドル・ユーロ・ポンドといった通貨ペアにレバレッジをかけて行う外為取引です。
 20年前のFXは、レバレッジ400倍の恐ろしい時代でした。10万で4000万。100万円で4億円の取引ができて、一攫千金が狙えたし、身の破滅も示唆した。「周囲にどう思う?」と聞かれると「絶対に手をだすな」と注意したほどです。
 2006年以降、日本人によるFXトレーダーが世界の注目を集め、「ミセス・ワタナベ」と称され社会現象になりました。日本人ってギャンブル好きなのでしょう。日本のFX取引額が、1京2000兆円ほどあるので、相当マーケットが大きい。
 ちなみにボクは、パチンコや競馬といったギャンブルはしないし、宝くじも買いません。
 
 「投資」と「投機」は似ていますが、「行為」が違うので使い分けられます。株は投資。FX取引は「投機」なのでギャンブルです。
 レバレッジ400倍は、ハイリスク・ハイリターン。問題を孕み、過去に何度か規制が入り、現在は25倍で落ち着いています。
 10万で250万。100万で2500万。それしか取引ができないとも言えます。海外には、レバレッジ無制限や1000倍といったFX会社もあります。ちなみに去年の10月、初めてFXに手を出しましたが、これは次の機会に話します。
 
 前回、「損切りはしない」と書きましたが、あくまで現物取引を前提にしています。信用取引いわゆるレバレッジをかける時は、それこそ「損切り率」を決めておかないと大ヤケドします。

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