なでなで
まりちゃんが泣いている。声を殺して泣いている。
夜中。ひとりで声を震わせて泣いている。誰もいないと思って泣いている。
胸が痛いよ。僕がいるよ。声が届かない。
なぜまりちゃんが泣いているのかはわからない。けれど苦しくて痛くてやるせないのはわかる。まりちゃんの心はぱっくり割れて血が出ている。
どうして、まりちゃんに優しくしてあげないの?まりちゃんを撫でる腕を、抱きしめる腕を持っているのに。
僕には理解できない。僕がヒトならいっぱいぎゅっとするのに。
まりちゃんはいっぱいいっぱい頑張ってるのに。まりちゃんはとってもとっても優しいのに。
どうしてそれを当たり前だと思うんだろう。
僕のとれた腕を縫い付けてくれる手。
僕に話しかけてくれる温かい声。
「私の話を聞いてくれてありがとう。」
僕に言うんだ。
僕に話してくれてありがとう、だよ。
けれど、今夜は何も言わずに泣いている。傷が深すぎるんだね。
まりちゃんは泣き疲れて眠ってしまった。涙の跡が痛いよ。
僕はまりちゃんの夢の中に入り込む。いっぱいいっぱいなでなでしてあげるよ。
それしかできないのが、悲しい。
inspired by スピッツ「コメット」
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