チビチビのねじねじ

お話を作っていきたいと思っています。 ご笑覧頂ければ、幸いです。

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夜明け/夕暮れ

冬。夜明けでも、月がくっきりとしている季節。ホテルの窓から見える西の月は、濃紺の空に白く浮かんでいる。朝の気配はあるが、まだ空の色は、夜の名残をとどめている。 俺は髪を手で梳きながら、ベッドに座る。疲れすぎると、空っぽになるものだ。心も体も。何も俺を捉えることはできない。 俺は、成功したミュージシャンだ。大きな箱をいっぱいにし、たくさんの目と歓声を独り占めし、音で人を虜にしてきた。それが、目的であったはずなのに。 今は、全ての熱を失ってしまっている。今、動いているのは惰

    • 夏と秋の結び目

       疲れすぎているのか壊れかけているのかわからないまま、夜が明けた。  眠れなかった。俺はため息をつきながら、起き上がる。カーテンを開けると、まだ薄暗い。枕元を見る。午前5時。だいぶ日の出が遅くなっている。体が重い。心は何も感じない。また今日も、いつ終わるかわからない仕事量と罵声を受けに職場に行かなければならない。  窓を開ける。夏の空気ではない。少し柔らかな空気。俺は思わず外に出ていた。  Tシャツに短パンにサンダル履き。ふらふら歩く俺はまるでゾンビだ。それでも体が命じ

      • アフォガードラブ

        かわいい君を好きになるんじゃなかった。私はため息をついてしまう。 冬の夜ふけ。二人は小リスのように睦みあって、くっつきあって眠る。そんな時、私は綿菓子にくるまれているような気分になる。甘くて、溶けてしまいそうなピンク色の雲。 なぜ君は私を選んだのだろう。聞いたら、君はふわふわと笑って、それでもちゃんと答えてくれる。それは、わかっているんだ。 けれど、私は尋ねない。なんだか、聞いたら、魔法が溶けてしまいそうだから。(意地悪な言い方をすると、私の君への幻想が壊れてしま

        • 飛び跳ねて飛び跳ねて

          目が痛くなるブルー 朝から晴れ渡った空 現在の立ち位置の夏は 恐ろしく暑い セミの求愛は激しく 元気に鳴いている 目が痛くなるブルー きらきら輝く海 現在の立ち位置の夏は 生命力がMAX 夏の日差しは激しく 目が痛くなるほど それでも今日は 風が吹いている 神さまの息吹かと感じるほど 慈愛を感じる 吹き抜ける風は 私の心を鼓舞する 萎れかけた気持ちが 奮い立つ どこかに慰撫は潜んでいて 不意に 優しく私を見つけてくれる それに気付けた幸運 夏の朝

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          もっと混じってぐだぐだに

          くっきりと分かれているものなんて この世界にはない けれど 人間はあまりにも 愚かで お馬鹿さんだから その理を 理解することができない だから この世の端っこだけを削り取って そのちょびっとのかたまりを シャーレに入れて 分類して ラベリングして ああでもない こうでもない としたり顔で わかったふりをして くっきりと分けてしまう 純粋な鉱物なんてないし 光り輝く永遠なる宝石なんてない あるよ まばゆいばかりの光も 1ミリも許さない闇も だけど それは

          もっと混じってぐだぐだに

          コーヒー&ハニー

          今日も朝から蝉が鳴く 今日も元気に蝉が鳴く 窓を開ければ風が吹き抜ける 灼熱の夏の一瞬のオアシス 今日は風がある朝 少しでも息がつけるのはラッキーだ ギンガムチェックのシャツ 風がそよぐスカート 気分が上がる服を着て 憂鬱な朝を吹き飛ばそう 氷をカラカラ コーヒー&ハニー 甘いアイスコーヒー ブルーのペディキュア 白のサンダル さあ 出かけよう

          隠れる?隠される?

           うだるような暑さ。蝉の狂ったような鳴き声。焼け尽くすような日差し。盛夏の午後。  小さなワンルーム。不似合いな大きなベッド。あの人との密会場所。ただ絡みあうだけの不健全な場所だ。  眩しすぎるので、カーテンを閉める。暑すぎるので、空調を強める。ひんやりと薄暗い。なんて2人にお似合いの場所。私は自嘲する。  あの人は私を隠してるつもりなのでしょう。けれど、私は密かに笑う。私はあの人の影に隠れている。疲弊してる時は飛び立てない。ただそれだけ。  揺られて揺らいで甘やかさ

          隠れる?隠される?

          first love

          遠い昔の思い出 潮の香りと巻貝 夏の思い出 鮮やかなブルーと どこまでもクリアな水飛沫 それだけが思い出される ジンジャーエールは スパイシーで甘い 失った恋のひとつ その時は 痛くてしゃがみ込んで もう立ち上がれないと思っていた けれど 何度も恋をして 同じだけ 恋を失った 美しい思い出ばかりではない 怒りも 憎しみも 無関心も 練りこまれたどす黒い塊が 心の倉庫に積まれている 失ってしまえば なくなってしまえば 痛い 悲しい 自らが別れを望んだとしても

          かささぎの休息

          涙雨であふれる天の川 かささぎたちが羽を広げる 一夜の恋人の逢瀬を叶えるため 恋人たちの歓喜と悲嘆 かささぎたちは 毎年そっと立ち会う 見て見ぬふりはお約束 かささぎたちは 天の川をたゆたいながら 今宵の天気を占います 今年は 雨で揺らぐことはなさそう かささぎたちは ほっとする 恋人たちは 天の川を2人で駆けることができそうだ 2人きりの逢瀬がどれほど貴重か かささぎたちは知っている かささぎたちは ひょいと片目をつぶり 言う 「今年はゆっくり休めそうだ」

          君の大きな瞳

          雨が降る降る しとしと降る降る すべてが湿気で覆われる すべてが雨粒で覆われる 僕たちは大きな水槽の中で 泳ぐ金魚 窓から見える世界は 水の中で揺らいでいる 君の茶色い大きな瞳に 映るドット 君の鼻の上に散らばる 愛らしいドット そっと君の頬に触れる 君の茶色い大きな瞳に 映る僕 その僕は 本当の僕より 美しく見えた 驚いて 君の茶色い大きな瞳を 覗きこむ その中には 君の優しさだけが 潜んでいた

          それは手放した悲しみ

          雨が降る 夏が来る先駆け グレーの空 窓にはドットとストライプ 水滴の向こう側に見えるのは 水槽で揺らぐ世界 バスに揺られて 外を見れば 過去の痛みを思い出す それは手放した悲しみのはずなのに それは忘れていた悲しみのはずなのに ぼんやりと浮かび上がるのは 過去の亡霊? それとも 単なる感傷? 揺らぐ 揺られる

          それは手放した悲しみ

          柔らかであること

          夢の中だったのか 現実だったのか わからないけれど ひらひら ひらひら 数匹の蝶が 戯れていた 黒い蝶 アゲハ蝶 瑠璃色の蝶 ひらひら ひらひら しなやかで 柔らかく 包むような 柔らかさ 真綿のような 柔らかさ とかく 柔らかなことは 侮られがちだけれど 柔らかであれば 折れない 割れそうな お茶碗も ふわっと 受けとめることができる とかく 世界は 剛腕 強弓 を望むけれど (力の支配は分かりやすく簡単だ!) 快刀乱麻は 所詮 一瞬の快楽

          水蜜桃

           ある初夏の日の話。窓を開け放てば、風が吹き抜ける。夏がまだ生まれたての頃は、まばゆい日差しと神様の息吹のような風が共存することがある。それは奇跡のような瞬間。  「おはよう。」  あなたは、ぼさぼさ頭のまま眠そうな顔でダイニングキッチンにやってくる。  「おはよう。」  俺は、しっかり目覚めた顔でコーヒー豆を挽く。手動のコーヒーミルでゆっくりゆっくり。  あなたは、頬杖をついて俺の手つきを見ている。半分眠っていた顔に少しずつ生気が現れてくる。俺は、休日の朝のあなたの顔

          ふわふわ

          お気に入りのワンピース ふわふわでひらひら この空と同じ 淡いスカイブルー 踊れば 裾がひらめく 光はきらきら クロシェハットには黒いリボン 海はゆらゆら プリズムが反射する ティンパニが跳ねる 初夏のソーダは 初恋の味 くるくる回るストローは わくわくの証 拾った白い巻き貝は 少女趣味の宝箱 下手くそなウィンクは きゅんとくるモード

          かすかな晴れ間

           荒れた天候から1日たった。雨はあがったが曇天だ。新緑の美しい晴れ間を恋しく思う。すっきりしない気持ちを抱いているから、なおさらどんよりしている。  毎日生きるということは、やっぱり大変だ。ひどい悲劇や壊滅的な絶望がなくたって、すり減っていく。そして、いらいらやとげとげが溜まっていく。優しさや手助けだってもらっているのだけれど、それは都合よく忘れている。無意識のうちにもっともっとと求めている。批判と非難と不満でぱんぱんに膨らんでいる。軽く突くだけで爆発しそうだ。  「何が

          万年眠い

          いつも 頭に霞がかかる 長く 深く 眠ることができなくなって どれくらい? 老化現象 眠るにも 気力と体力がいる できないことが 増えていく プライドだけが 高くなる つまらない つまらない なんか いつも すっきりしない でも 不機嫌や不満を 顔に貼り付けていたくはない だって 若かりし頃 そんな大人がいやだったもの ネンコウジョレツ? ネンチョウシャヲウヤマエ? それは 自然に生まれるものさ むりくりな強制は 所詮 歪な連鎖を生むだ