チビチビのねじねじ
偏愛ものを語っています
冬。夜明けでも、月がくっきりとしている季節。ホテルの窓から見える西の月は、濃紺の空に白く浮かんでいる。朝の気配はあるが、まだ空の色は、夜の名残をとどめている。 俺は髪を手で梳きながら、ベッドに座る。疲れすぎると、空っぽになるものだ。心も体も。何も俺を捉えることはできない。 俺は、成功したミュージシャンだ。大きな箱をいっぱいにし、たくさんの目と歓声を独り占めし、音で人を虜にしてきた。それが、目的であったはずなのに。 今は、全ての熱を失ってしまっている。今、動いているのは惰
目が覚めた。今日も泣きながら目覚めた。目の際に涙が溜まっている。冬の朝。目元がひんやりする。隣で眠っている妹を起こさないようにそっと起き上がる。 洗面所で鏡を覗きこむ。腫れぼったい目。赤くなった目。まだ失恋から立ち直れない。私はため息をつく。なんの気力もわかない。私は顔を洗う。 急に連絡がつかなくなった。すべてブロックされた。どうして?何があったの?私に気持ちがなくなったのは分かったけれど、納得いかなかった。 私は彼の自宅の前で待った。それしか話をする手段がなか
THE SPELLBOUNDのLiveに行ってまいりました。 BOOMBOOMSATELLITESのキラーチューンたちも素晴らしかったのですが、最新のTHE SPELLBOUNDの楽曲たちも素敵でした。 過去も現在も等しくあって、未来も感じさせるいいライブだったなあと思いました。 ツインドラムの迫力、小林さんと女性ゲストボーカルさんの混ざり合った声は美しくて強かった! なんて言えばいいのか、ハードでタフな現実があるからこそ、それに拮抗する楽曲を作り届けたいと
夜中目が覚める。心臓がどきどきしている。生え際に汗をかいている。喉がからからに渇いている。悪夢を見たらしい。目覚めた瞬間にどんな夢か忘れたが、私は恐怖に満ちていた。心の底から怯えていた。 私は半覚醒のまま家を歩き回り、全ての戸締りを確認していた。玄関のドアのチェーンをかけ直し、カーテンの影から外を見て不審者がいないか目を凝らした。 ふらふらと暗闇を恐怖の中、私は歩き回っていた。そのうちにはっきりと目が覚めてきた。理性が戻ってきた。私は部屋の電気をつける。キッチンに行
私を馬鹿にしてもいい 私を侮ってもいい 私の価値は私が知っている 私の魂は私が磨いている 誰にも口出しさせない 誰もが人を貶めようとする 誰もが人を虚仮にしようとする そんなに人のことが気になるの? そんなに人のことが気に障るの? どんなに人を蹴落としても 自分が浮かび上がることはない そんな賽の河原の石積みなんてしない 私は私 君は君 人は人 ただそれだけ いいとか悪いとかではなく ただそれだけ 鼻で笑われることは日常茶飯事 見下されることは日常茶飯事
湿度が少なくなって、涼しい空気。でも日差しはきつい。10月の晴れはまぶしいけれど、気持ちがいい。 朝起きて、カーテンと窓を開ける。風が通る。秋の風は乾いていてひんやりとしている。水を沸かして、コーヒーを淹れよう。ようやくホットコーヒーが飲みたくなる季節になってきた。コーヒーの香りがたちのぼる。休日の朝はのんびりゆったりできるから好きだ。 「おはよう。」 悠人が眠そうな顔で起きてくる。その足にまとわりつくように黒のトイプードルがついてきている。 「おはよう。り
残暑を洗い流す雨 窓の外はぼんやりとしている 薄暗い朝 海は空と呼応し もう秋だよと叫ぶ 灰色の海はうねる 時が過ぎ去る寂寥と 暑さが去る安堵 混ぜこぜになった気持ちは 憂鬱と安寧が裏表 雨が降る 季節のターン
こんなに暑いのにあんなに空が高い。9月も終わりに近いのに、残暑が厳しい。 とはいえ、夏の殺人的な光線ではない。光は少し薄くなった。午後の日差しはすぐに傾き、長い影を伸ばす。 そんな秋の午後。夏の間はどこにも出かけたくなかったけれど、外に出ようかという気になった。日傘か帽子か迷ったけれど、日傘にしよう。 歩けば汗ばむ。やっぱり暑いなと思いながら空を見上げる。トンビが空を旋回している。高く低く。あんなに空高く飛んでいるのに下界を見て、目がくらんだり怖くなったりしないの
月が生まれ変わる夜 無月の夜空は静かだ 秋の夜 月も見えずひとり それでも 次の夜には 一筋の月が見える そして 月は 夜ごとに満ちていく 満ちて 欠けて 消えて 現れて 繰り返し 繰り返し 神秘の歌は 終わらない 新月の夜は静謐 新月の夜の寂寥 揺らいで 揺られて 巻貝の中に閉じこもる 潮の満ち引きに囚われる
疲れすぎているのか壊れかけているのかわからないまま、夜が明けた。 眠れなかった。俺はため息をつきながら、起き上がる。カーテンを開けると、まだ薄暗い。枕元を見る。午前5時。だいぶ日の出が遅くなっている。体が重い。心は何も感じない。また今日も、いつ終わるかわからない仕事量と罵声を受けに職場に行かなければならない。 窓を開ける。夏の空気ではない。少し柔らかな空気。俺は思わず外に出ていた。 Tシャツに短パンにサンダル履き。ふらふら歩く俺はまるでゾンビだ。それでも体が命じ
かわいい君を好きになるんじゃなかった。私はため息をついてしまう。 冬の夜ふけ。二人は小リスのように睦みあって、くっつきあって眠る。そんな時、私は綿菓子にくるまれているような気分になる。甘くて、溶けてしまいそうなピンク色の雲。 なぜ君は私を選んだのだろう。聞いたら、君はふわふわと笑って、それでもちゃんと答えてくれる。それは、わかっているんだ。 けれど、私は尋ねない。なんだか、聞いたら、魔法が溶けてしまいそうだから。(意地悪な言い方をすると、私の君への幻想が壊れてしま
目が痛くなるブルー 朝から晴れ渡った空 現在の立ち位置の夏は 恐ろしく暑い セミの求愛は激しく 元気に鳴いている 目が痛くなるブルー きらきら輝く海 現在の立ち位置の夏は 生命力がMAX 夏の日差しは激しく 目が痛くなるほど それでも今日は 風が吹いている 神さまの息吹かと感じるほど 慈愛を感じる 吹き抜ける風は 私の心を鼓舞する 萎れかけた気持ちが 奮い立つ どこかに慰撫は潜んでいて 不意に 優しく私を見つけてくれる それに気付けた幸運 夏の朝
くっきりと分かれているものなんて この世界にはない けれど 人間はあまりにも 愚かで お馬鹿さんだから その理を 理解することができない だから この世の端っこだけを削り取って そのちょびっとのかたまりを シャーレに入れて 分類して ラベリングして ああでもない こうでもない としたり顔で わかったふりをして くっきりと分けてしまう 純粋な鉱物なんてないし 光り輝く永遠なる宝石なんてない あるよ まばゆいばかりの光も 1ミリも許さない闇も だけど それは
今日も朝から蝉が鳴く 今日も元気に蝉が鳴く 窓を開ければ風が吹き抜ける 灼熱の夏の一瞬のオアシス 今日は風がある朝 少しでも息がつけるのはラッキーだ ギンガムチェックのシャツ 風がそよぐスカート 気分が上がる服を着て 憂鬱な朝を吹き飛ばそう 氷をカラカラ コーヒー&ハニー 甘いアイスコーヒー ブルーのペディキュア 白のサンダル さあ 出かけよう
うだるような暑さ。蝉の狂ったような鳴き声。焼け尽くすような日差し。盛夏の午後。 小さなワンルーム。不似合いな大きなベッド。あの人との密会場所。ただ絡みあうだけの不健全な場所だ。 眩しすぎるので、カーテンを閉める。暑すぎるので、空調を強める。ひんやりと薄暗い。なんて2人にお似合いの場所。私は自嘲する。 あの人は私を隠してるつもりなのでしょう。けれど、私は密かに笑う。私はあの人の影に隠れている。疲弊してる時は飛び立てない。ただそれだけ。 揺られて揺らいで甘やかさ
遠い昔の思い出 潮の香りと巻貝 夏の思い出 鮮やかなブルーと どこまでもクリアな水飛沫 それだけが思い出される ジンジャーエールは スパイシーで甘い 失った恋のひとつ その時は 痛くてしゃがみ込んで もう立ち上がれないと思っていた けれど 何度も恋をして 同じだけ 恋を失った 美しい思い出ばかりではない 怒りも 憎しみも 無関心も 練りこまれたどす黒い塊が 心の倉庫に積まれている 失ってしまえば なくなってしまえば 痛い 悲しい 自らが別れを望んだとしても