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私服でいいよ。

「私服でいいよ。」
この一言に枕はほとほと困った。

本日で他部署での支業務支援が終わった。
事前連絡に「オフィスカジュアル」とあったが、初日は様子見でスーツを選択した。
古巣とはいえ、初めましての方もいらっしゃったので適切な選択だったと思う。
他の方が私服である事も想定の範疇はんちゅうだった。
しかし…
「私服でいいよ。」
「パーカーで来る子もいるし。」
とまで言われてしまうと、流石に翌日もスーツで行くのははばかられた。
枕は仕事を進めながら自宅のクローゼットを思い浮かべ、早々に結論に辿り着く。

着て来れる服がない。


この場面における「オフィスカジュアル」は「無難な私服」を指すだろう。
プライベートをよく知る訳ではない仕事仲間に支障なく披露できる私服と言い換えてもいい。
枕のクローゼットにそんな私服は一着もなかった、本当になかった。

襟シャツは下北沢の古着屋で少しずつ揃えた個性派な子たちしかいない。
スウェットは推しバンドのロゴが入っている。
パーカーは推しバンドのロゴが入っている。
ロンTは推しバンドのロゴが入っている。

八方塞がり、四面楚歌、火を見るよりも明らかに詰みである。
(普段は制服に着替えるから気にしなくていいのに…。)

休憩時間に〇ーユー(アルファベット表記だと分かりづらかった)へ行き、何処にでも着て行ける私服を2着買った。

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