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ただコーヒーとクロワッサンを食べたいだけだったのに
おいしいクロワッサンが食べたい。やはり焼きたてが一番おいしいのだろう。
そう思い立ち、喫茶が併設されているパン屋さんを探して行ってきた。ドリンクとクロワッサンのモーニングセットがあるパン屋さんだ。
朝食にはちょっと遅く、お昼にはちょっと早い10時半。クロワッサンと一緒にコーヒーを飲みたいと、今朝は起きてからヨーグルトしか食べていない。さすがにお腹が減って、クロワッサンだけでは足りそうにない。
そこで第1候補のお店が満席だった場合に備えて選んでおいた、第2候補のパン屋さんに急きょ変更することにした。こちらのパン屋さんだと、クロワッサンサンドがある。
お店に入ると席は8割ほどが埋まっていた。お好きな席にと言われたが壁際の奥の席は全て4人掛けである。これからお昼になるにつれ、お客さんが増えることを考えると1人で4人掛けを占領するのはさすがに心苦しい。通路側の端にある2人掛けの席に座り、メニューを見る。
モーニングセットは写真で見る限り、クロワッサン、チョコデニッシュ、トーストから選べるようだが、フランスに本店があるお店だからか、メニューはフランス語だ。フリガナも振られているが、フランス語をカタカナ書きにしただけなので、結局何か分からない。
トーストだろうか。でも万が一、トーストでなかったら。結果、パン・ショコラにした。これは見ためからも、名前からもチョコデニッシュで間違いはないだろう。
つづいてサンドイッチが載ったページを見る。クロワッサンだけでなく、フランスパンにハム等をはさんだものがある。
ここで自分の胃袋と相談である。チョコデニッシュもあるとはいえ、私のお腹は非常に減っている。お腹の鳴る音が近くの人に聞こえてしまわないか、と心配になるくらいである。
クロワッサンが食べたくて来たが、クロワッサンはなんと言っても軽いパンである。こんなことを言っては何だが、ぎゅっと握りつぶしてしまったら一口で食べられるほど軽いパンだ。いくらおいしくてもそんなに軽いパンでは、今の私のお腹は満たされない。
これに対してフランスパン。たとえハム等をはさんでいなかったとしても、しっかりお腹を満たしてくれる重量感である。おまけに私はフランスパン好きである。フランスパンの存在を知ってしまったのに食べずに帰ったら、家でずっと後悔するだろう。
こうして私は本来の目的もそっちのけ、食欲のままにフランスパンを選択した。名前がこれまたフランス語で難しい。ジャンボン何とかという名前だったが思い出せない。生ハムにレタス、トマトがはさまれたものだった。
お店の人を呼び止め、注文する。
まずはモーニングのページを開き、「このパン・ショコラと」と指でさし、続いてサンドイッチのページを開き「このジャンボン〇〇を」と頼んだ。店員さんが注文を繰り返したあと、「××は単品で宜しかったですか?」と訊いてきた。
××ってなんだ?
パン・ショコラとは言ってなかったからジャンボン〇〇のことか?でも単品って何?
ドリンクセットがあるってこと?
でも、モーニングにドリンクはついているし。
あ、フランスパンが大きいからハーフと丸々1本ということか?
「はい。大丈夫です」
確信を持てぬままそう応えると、店員さんは去っていった。
さて、本でも読みながら待つか、と思い本を取り出したところで早々とパンが運ばれてきた。
そうか、パン屋だからショーケースに並んでいるパンを持ってくるだけなのだ。
本をしまいパンが置かれるのを待った。二つのお皿にパンが一つずつ盛られている。ごゆっくりと言って、伝票を置いていく店員さん。
え?飲み物は?
ここでようやく気がついた。そういえば私、飲み物を何にするか伝えていない。単品でいいかの確認は、きっとモーニングセットではなくパンのみでいいのか?の意味だったのだろう。
店員さんに声をかけ、勘違いしていた旨を伝えてドリンクも頼むことにする。
モーニングセットのドリンクって何があるのだろう?通常はコーヒーか紅茶だ。カフェラテがあるかはお店によるだろう。ここは無難に、確実にありそうなコーヒーにしよう。
「アイスコーヒーとかってありますか?」
訊いてみる。当然あるだろうと思っていたのだが、店員さんはすっと立ち去りメニューを持って戻ってきた。
「こちらがドリンクメニューです」
なるほど・・・。こちらもフランス語だ。
が、横に小さく日本語も書かれているのを発見した。よかった。アイスコーヒーがある。
「カフェグラスでお願いします」
「はい。ミルクかレモン、もしくはストレートにされますか?」
え?ミルクは分かるけど、レモン?フランスではレモンをコーヒーに入れるのか?
うん、まぁ爽やかさが増しそうだしな。さすがはフランス、おしゃれだ。でも、今日は普通のコーヒーにしておこう。ミルクだけをお願いする。
飲み物が揃ってから食べ始めようとパンを食べずに待っていたら、待つというほどの時間も経たずに飲み物が運ばれてきた。
でもなんだか色合いに違和感がある。なんだ
かちょっと薄そうだ。それはまるでアイスティーのように。
先ほど訊かれたことが頭をよぎる。ミルクかレモン。それはよく紅茶を頼んだ時に訊かれる質問だ。
あれ?アイスコーヒーと日本語訳が書かれたところを読み上げたつもりだったけど、間違っていたのか?
いや、薄いコーヒーは紅茶のような色合いだから、飲んでみるまでは分からない。わずかな期待を胸に、ストローをさし飲んでみる。
うん。アイスティーだ。
なんでだろう?カフェグラスってアイスコーヒーのことじゃないのか?
残念ながらメニューは下げられてしまって、確認できない。そっと伝票を見てみることにする。カフェグラスと書かれていたら、フランスではやはりアイスティーをそう言うのだろう。
折りたたまれた伝票を開いてみると、そこには堂々と
アイスティー
の文字が。いや、そこは日本語なんか~い!
謎の関西弁が出てくる。伝票を日本語で打つなら、メニューも日本語でいいじゃないか。
心の中で悪態が止まらない。
え~。じゃあ結局、カフェグラスはアイスティーが正しいってこと?
気になりすぎて調べてみた。
カフェ・グラス=アイスコーヒー
テ・グラス=アイスティ
いや、めっちゃ似た単語!
どうやら私の発音が悪すぎて、店員さんには「カフェ」が「テ」に聞こえたようだ。そういえば私は話し始めの声が小さいのか、よく聞き返される。カフェの「カ」が聞き取れず、きっと「フェ」だけが聞こえて「テ」と認識されたのだろう。
うーん。英語も話せない人間にとって、フランス語は難易度が高すぎる。パンや飲み物を頼むことさえままならないなんて。経験を積んで、注文くらい余裕でこなせるようにならなければ。
さて、残念ながらコーヒーを飲むことはできなかったが、パンはおいしかった。
特にフランスパン。カリっとし表面に小麦の香ばしさ。そこに生ハムの塩気が絶妙にマッチしている。細めのフランスパンなので、口を大きく開けずに食べられるのもいい。他のサンドも全制覇したいおいしさだった。
カフェグラス。発音を練習して、また来よう。
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