「日本は安楽死できない」(教育が崩壊していく:その1)

 国が貧しくなっていく、税収が下がっていく、国債発行も難しい。そういった経済状況に陥っていくと、公共サービスが低下し、社会インフラの維持が難しくなります。多くの貧しいアフリカの国々は、正にそういった状況に陥っているわけです。

 国が貧しくなっていくとどうなるのでしょう。まず、公務員の給料が減らされます。面白いもので、貧しいアフリカの国々でも、国会議員の給料は減らされません。むしろ、事実として、一院制だったのを新たに参議院を作って二院制にしたりと、国会議員の数を増やしています。また、驚くべきことに、貧しいアフリカの国々の大統領や首相の給料は、日本円にして億を超えているところも多く、大統領職や首相職を辞した後にも手厚い年金が保障されていたりもします。

 国が貧しくなると、一般の公務員の給料は間違い無く減らされるのですが、そういった公務員の中でも、いの一番に給料を減らされるのは、大方、教員、学校の先生です。

 貧しいアフリカの国々であっても、外交、防衛、警察、税関、中央省庁といった、機能不全に陥ると国家そのものの維持があっという間に困難に陥る可能性のある国家機関、すなわち、機能不全に陥るとその負のインパクトがすぐに顕在化するといった、「迅速な負の効果」をもたらすセクターに関しては、いかに貧しい国々であっても、簡単に給料を下げることはできません。

 他方、小学校、中学校、高校といった学校の先生の給料はあっさりと減らされてしまいます。なぜなら、仮に子供達が教育を受けることが出来なくなったとしても、短期的に国家運営を揺るがすような「迅速な負の効果」をもたらすことはないからです。

 教育は子供への投資であり、未来への投資であり、将来の国家を形作る、長期的な国家ビジョンの礎だと思います。しかしながら、「今が良ければそれで良い」、「とりあえず今を切り抜けられればそれで良い」、「自分さえ逃げ切れればそれでよい」といった考え方が支配的になってしまうと、長期的な課題である「子供の教育」が犠牲にされてしまいがちなのです。

 貧しいアフリカの国々の学校の先生は、毎月、日本円にして、1万円とか2万円とか、驚くほど安い給料で働かされています。しかも、給料の遅配も頻繁に発生します。ですので、アフリカの学校の先生達は、頻繁にストライキやデモを起こしています。そして、子供達が、安心して学校で教育を受けることが出来ない、といった悪循環に陥っています。

 となりますと、貧しいアフリカの国々でも、子供に良い教育を受けさせたいと強く望む、ある程度裕福な家庭では、大枚をはたいて、子供を私立学校に通わせることになります。そういった私立学校は、アメリカンスクールやフレンチスクールのようなインターナショナルスクールが中心になっています。そして、そういった私立学校の学費は、小学校でさえ、年間100万円~400万円程となっております。これ、アフリカの話です。

 国が貧しくなると、国公立の学校を維持することが困難になり、高いレベルの教育は高い学費を必要とする私立学校にのみ集中することになります。国が貧しくなると、教育格差が、初等教育から如実に顕在化してきてしまいます。(了)


 

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