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2000文字のシナリオ『ピクルス・ピクニック』


今回のお題
・酸性
・ピクニック
・面談


●タイトル
『ピクルス・ピクニック』

総制作時間
3時間

あらすじ
女子高生の優子は、たいして仲良くないクラスメイトの芹亜とピクニックに行くことになった。
ピクニックの最中に、芹亜から三者面談で親と喧嘩したことを明かされた。
落ち込んでいた時、優子のピクルスを食べて元気が出たのだという。
それからずっと気になっていてピクニックに誘ったらしい。
一緒にピクルスを食べて、将来の夢について語り合う。
無二の親友になれる気がした。

登場人物
・立花優子
17歳。桜星川女子高等学校2年A組。
背が高くて、目つきが鋭い。髪が長い。
一部の女生徒から熱が高まっている王子様ポジション。
あるいは、気高い王女様とも言われている。
性格は温厚で、みんなにピクルスをおすそわけするお茶目な性格。
将来の夢はピクルス専門店。

・武東芹亜
17歳。桜星川女子高等学校2年A組。
線が細くて、声も小さい。色が白い。
友達が多いタイプではなく、一人でいることも多い。
けれども熱中したことには一直線な一途さも持っている。
将来の夢は声優。

本文

//セリフ文字数は25字×3行です。
//背景:教室

【教師】
明日から、三者面談だ。
高校を卒業した後のこと、
しっかり考えておくように!

//SE:ざわざわ(クラスメイトのおしゃべり)

【優子】
卒業後かぁ……。

//演出:暗転
//背景:空

【優子】
あの子からピクニックに行こうと誘われたのは、
数日後のことだった――。

//演出:フェードアウト
//背景:駅

【優子】
お待たせ。待った?

【芹亜】
あ、立花さん……。
いえ、待ってなんてないです。

あの、今日は来ていただいて、
ありがとうございます!

【優子】
優子でいいよ。
クラスメイトなんだし。

【芹亜】
あ、じゃあ、優子さんで。

【優子】
うん。おっけー。

【優子】
(芹亜ちゃん。
同じクラスなんだけど、
あまり喋ったことないんだよなぁ。

なんで今日は遊びに誘ってくれたんだろ。
しかも、二人きりでピクニックなんて。
うーん……ま、楽しそうだし、いっか)

【優子】
じゃあ、行こっか!

//演出:フェードアウト
//背景:草原

【優子】
ふぅ、けっこう歩いたね。
ピクニックなんて小学生以来かも。

【芹亜】
私もです。

【優子】
ね、気になってたんだけど、
どうして私とピクニックなの?

【芹亜】
ふひゃ……ダメでしたか?

【優子】
いや、ぜんぜん。
むしろ、大歓迎だけど。
でもさ、ろくに喋ったこともなかったでしょ。

【芹亜】
えっと……。
そ、それはランチの時間に、お話しします。

【優子】
おお、もったいぶるね。
じゃあ、その時に聞かせてもらおうかな。

さて、そうと決まれば……。
ランチまでにもうちょっと歩こうか。

【芹亜】
はい!
えっと……れっつごーですね。

【優子】
ごー!

//演出:暗転(時間経過)
//背景:草原

【芹亜】
この辺で良いかな。
じゃあ、ブルーシートを……よいしょっ。
よし、敷けましたよ。

【優子】
ありがとー。
はあ、やっと座れるよぉ。
けっこう疲れたなぁ。

……ん、でも、
芹亜ちゃんはあまりお疲れではない様子?

【芹亜】
あ、実は毎日ランニングしてて。
あと、腹筋とかも。

【優子】
へえ、ちょっと触っていい?

【芹亜】
はうっ!
そ、それはちょっと!
人に自慢できる体ではないので。

【優子】
いやいや、芹亜ちゃんは自慢できるよ。
細いし、お姫様みたい。

【芹亜】
……優子さんの方がお姫様。
って、そんなことよりランチにしましょう!
作ってきたので食べてください。

【優子】
すごいなぁ、これ手作りなんだ!
じゃあ、いただきまーす!

もぐもぐ……ん~!!
うまい!!

【芹亜】
よかった。
あ……。

あの、優子さん。

【優子】
ん、どうしたー?

【芹亜】
これも食べてみてくれますか?

【優子】
これって、ピクルス?
ふふふ、私、ピクルスにはうるさいよー。
じゃあ、いただきまーす!

んぅ、おいしいけど。
これって……?

【芹亜】
はい。
優子さんがくれたピクルスの味を再現してみたんです。
あの……できてましたか?

【優子】
うん。私好みの味でびっくりしたぁ。
でも、どうして?

【芹亜】
ええとですね……実は、
このピクルスが私を救ってくれたんです。

【優子】
ピクルスが?
どういうこと?

【芹亜】
おかしい……ですよね。
でも、あの時……、ほら、三者面談があった日です。

私、意を決してお母さんに打ち明けたんです。
将来の夢を。

でも、お母さんに大反対されたんです。
それがショックで……。

その時、優子さんのピクルスを食べたんです。
すごく美味しくて、涙が出ました。

【優子】
(そういえば、作りすぎたピクルスを
クラスのみんなにわけたことがあったっけ。

そっか、このピクルスの味は、
あの時のピクルスなんだ……)

【芹亜】
今日は優子さんにお礼が言いたかったんです。
でも、大勢の前だと言いづらくて。

【優子】
それで、ピクニックか。
うん、なるほどねぇ。

芹亜ちゃんの将来の夢って、
聞いてもいいかな?

【芹亜】
えっと……声優です。
私、映画が好きで、だから吹き替え声優になりたくて。

【優子】
声優さん!
うん。芹亜ちゃんの声きれいだし、ぴったりかも!
しかも映画吹き替えかぁ。渋いねー。

【芹亜】
優子さんはありますか?
将来の夢なんて。

【優子】
ピクルス専門店!
私の作ったピクルスを味わって欲しくてね。

【芹亜】
優子さんのピクルス、おいしいですもん。
そっか、そうなんだ。

【優子】
芹亜ちゃんは笑わないんだね。
他の連中はみんな笑うのに。

【芹亜】
え、嘘なんですか!?

【優子】
いや、本気だよ。
でも、みんな冗談としか思ってくれないんだ。

【芹亜】
私はすごく素敵な夢だと思います。
私のは現実的じゃないから。
自分でも、なれるかどうか不安で……。

できます……かね、私に。

【優子】
思っている何かになれるかは運次第だしね。
でも、やってみようよ。
とことんまで。

それで頑張ることに飽きたら
違うものをお酢に漬ければいいんだよ。
きっと美味しい物が出来るから。

【芹亜】
とことんまでか。

……ふふ。
優子さんって、なんでもピクルスなんですね。

【優子】
おや、私のことわかってきたね。
さ、ランチを食べたらもうちょっと歩こうか。
そんで未来のことを話そう。

【芹亜】
そうですね。
はい! 歩きましょう!

//背景:夕焼け空

【優子】
こうして、私たちは夕暮れまで歩いた。
歩いて見えた景色はどれも違って見えて。
きっといつまでも忘れない。

隣にいる彼女の顔は、さっきよりも輝いていた。
それはピクルスの力なのかも。
なんてね。


終わり


総文字数 2109文字(演出指示含む)

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