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② がりや記  

  

 さむがりや がいて
ぶるぶるふるえて窓を閉めると
あつがりや
がいて だらだら汗をながして
 窓を開ける
             見たがりや がいて
               窓の中をのぞいたら
               女のひとは着替え中
         でこわがり  だから叫びだし
 たすけたがり がいて
  どうしましたか!
と飛んでくる
 隣の奥さんはそれをききつけて
   一軒となりの奥さんに
しゃべりたがり

また隣りのおばあさんはなんでも
噂を知っている情報通で
    しりたがりやだし
          おじいさんはお経をあげて
           来世を説く
            信じたがりや

窓の下をいつも通る高校生の
男の子はお友達からもらったと
いつもお菓子をくれたがり

ありがとうってうけとるとき
いつもそっとひっつきたがり
   わたしはいやがり かれはさみしがりやだから
話相手をほしがり夜明けの海の
テトラポットで猫と遊んで過ごす    
一方通行でもいいからとなつこくなる
 ひとりよがりがいて
     それをわかっているふりをする

きみ とことん いいかっこうしたがり  
       つまりは究極の ひとりよがり
     こもりたがり   かくれたがりがいて
   おもしろがりがいて あまのじゃくもいる  死にたがりやの森もある

            勝ちたがりやがいて
              遠くへいって
              ひとなのに
                ひとをつかまえて
                 売り買いをして
                 ひとに命令して
                 うばいとっては
                 いばりたがりが
               ふえて ふえて
                     
        鉄の玉を火花でとばしっこして
            殺したがり
          戦争をしかければ
           国から国へと通信は発達して
                
         目立ちたがりは
           都会をめざして
             ひしめきあい

              せまい土地のうえで
               あれ ほしい
                これ  ほしい
              とものほしげに
              となりをきょろきょろ
               ひととおなじに
                        とプチブルが
                          ふえて ふえて
                 もっともっと
             ほしがりやばかりになり
  だが 大陸では
        ながい歴史のうちに
           めんどうくさがりが
  ふえてふえて
    夏になると海と山へいって日がな
     ねそべりたがり
      人々は故郷をはなれ
         さらに遠くをめざし
          あっちもこっちも いきたがり
              だから交通が発達して
                 空飛び陸はしり
                海を渡る鉄の塊が
                        ふえてふえて
                        けものたちをおいつめ
                        じぶんたちのかんきょうを
           おびやかしていることからは
                  目をそらして耳ふさぎ
             知らんかおしたがり
               なぜならみんな
              儲けたがり
            原罪が
      ふえてふえて
        
このでんで つまるところ
        がりやは猿をヒトへと進化させた
          という詩が残された
            だがくだんの詩人は 
 こんきょのない 迷信をうったえ 
       いいふらしたがっていたという
ああねっからの 
    がりや ダッタノダ


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