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【掌編小説】羽二重餅がでてくる物語

ハーっ ハーっ

ドンドンドン

キュッ キュッ

「ディーフェン ディーフェンス」

ハー ハー キュッキュッ

ドンドンドン

俺は今、全てを出して戦っている。

高校生活最後のウィンターカップを目指して。

ドンドン キュッキュッ

シュッ 

パサっ


ピーピー 

パチンっ

「ナイスシュートっ」
「鈴之助、ナイス」

「とうぜんだ!このまま行くぞ、一気に」
「おっ!もちろん、目指すはウィンターカップ」

俺は完璧と言われてるが、俺は完璧なんかじゃない。
そう呼ばれる事は悪い気はしないが
俺はずっと努力をしてきた。
小学校の頃、姉の櫻子が習っていたミニバスを見に行った日から今日までずっとバスケをしてきた。

雨の日も、風の日も
真夏の暑い日も。

俺はこの日のためにバスケをしていた。

「鈴之助っ」

俺は、パスをもらいドリブルで1人、2人
また、1人を抜いて・・・


シュッ

点を取る。俺は点を取る。

その為にこのコートを全力で走る。

したたり落ちる汗。
上がる呼吸。
今にもオーバーヒートしそうな心臓。

走る。走る。走る。

いつ動かなくなってもいい。

そう思いながらまた点をとる為に走る。

そんな時、人ってのは脳内にアドレナリンが流れ
ハイになる。
俺はこの時間が好きだ。
俗に言うゾーンってやつだ。


この時間、全てのものが止まってみえる。

あれも、これも何もかも。

パーンっ

「ナイス、カット!このまま一気にいけぇ」

また、点をとる。

だが、監督には嫌な予感がしたらしい。

そう、ゾーンによる代償。

これはゾーンにより一時的に身体能力を上げる
事により後からくる身体的疲労だ。

それを監督は気付いていたのだ。

はぁ、はぁ、はぁ

心臓が破れそうだ・・・

ピーピーっ
「タイムっ」

それに気づいた監督がタイムをとり俺を呼んだ。

「監督、なぜ今止めるんですか?」

すると監督は、
「おまえ、【ハーフタイムまでもつ】か?」
と言った。

俺は、わかっていた。
自分が持たないって事に。
だけど、最後の、最後の、コイツらと最後の・・

目が覚めると第4クオータの残り10秒だった。
9.8.7.6.5.4.3.2.1
試合は終わった。
俺たちは負けたのだった。

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※それから

泣いた。
俺がもっと強ければと

涙を拭き腫れた目を隠しながら帰ると
そこには羽二重餅があった。

すると、姉の櫻子が俺に言った。

「羽二重餅好きでしょ!?」って
               おわり

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あとがき

この物語も音声配信アプリstand.FMでの企画
姉の櫻子と弟の銀の助が櫻子の友達のトモコに
羽二重餅をお土産で渡すと言う内容。
僕は、いつもこのstand.FMでの企画は、
企画テーマを勘違いすると言ったお茶目なところがある。。
今回のテーマである「羽二重餅が出てくる物語」
と言う事で、「羽二重餅」からなぜだろう?
「ハーフタイムまで持つか?」と言うバスケの
情景が出てきた。
それは、まさに黒子のバスケをNetflixで見たからに違いない。。
ただ、ゾーンってフレーズが使いたかったんだと思う。。本当なら、奇跡の世代も使いたかった。
でも、今回の主役は羽二重餅。
高校生活最後の試合で負けてしまった弟。
悔しくて、悔しくて。。
それを、察した姉が試合結果を聞かず弟に言った
言葉。
「羽二重餅、好きでしょ?」
その後、銀の助は食べたか食べてないかは分からないが、恐らく食べてたと思います。
だって、
「羽二重餅が好きだから」

         おやつちんみのユウのほう
今回企画してくれてありがとう!



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