見出し画像

少しの工夫で柔術レベルを上げやすくする方法

A 「マスター世代の試合ってハーフガード多いよね?」

ということに対する運動学的な回答は

私 「年齢を重ねると体が硬くなるので、オープンガードの難易度が高い」

というのが一つ

私 「視野や視覚などの能力も年齢とともに低下するので、相手を固定するガードが好まれる」

というのが一つ

省エネ

私 「心肺機能もキツいから、スイープした流れで動きの少ないプレッシャーパスに行ける」

というのが一つです。


序論

この記事はハーフガードを取り上げるものではありません。

そこそこ長くブラジリアン柔術をやっていると、年齢を重ねることで筋力やパワーが低下するのは感じやすいです。

動かれるとついていけない

(アダルトの動きやべぇ〜!!!)

普段の練習で若い選手と組み合うことがあれば、そのパワフルな動きに圧倒されることも多々あると思います。

しかし、筋力、パワー以前に

  • 相手の動きが見えてない

  • 動きに反応できない

  • 思考に体が追いつかない・・・

といった、一般的にイメージされるフィジカル能力ではない部分で劣っている可能性の方が高いです。

柔術に限らず、多くのスポーツには

  1. 認識

  2. 判断

  3. 行動

という流れが含まれます。

相手の動きを認識(視認、知覚)できなければ、判断して行動することはできません。

ゆえに、あらゆるスポーツにおいて非常に効率の良い補強は何かと問われれば、認識の部分を強化することになります。

そこで大事になる一つが視覚情報であり、ビジュアルトレーニングを取り入れるアスリートもいます。

視力や視野は運動に関係なく、年齢を重ねることで低下します。視覚の能力については年齢に関係なく、生活習慣や運動の影響を受けます。

この記事では、ビジュアルトレーニングを網羅することはできませんが、柔術をやる上で知っておくと良い視覚に関することをまとめます。


結論

昨今は練習やウェイトトレーニングの前後に、呼吸やリリースツールを使って体をほぐす人も増えたと思います。

同様に目に対しても、ほぐしを入れることで、パフォーマンスが向上する可能性があります。

と言っても、剥き出しの内蔵である目をゴリゴリする訳ではなく

  • スマホやPCの画面を注視する時間を減らす

  • ホットアイマスクで目の周りを温める

  • 周辺視を活性する運動を行う

などです。

本格的なビジュアルトレーニングだと様々な能力にアプローチしますが、上記のものなら専門的な知識がなくても実施できます。


視力と柔術

柔術をやってる人の中には視力が低い人も少なくないと思います。

実際に視力は低いけど、試合で素晴らしい成績を残してる選手を何人か知っています。しかしながら、ハーフガーダーに偏ってる傾向はあります。

一般的に視力といえば・・・

視力検査

みたいな感じだと思います。

これで得る数字は静止視力です。他に視力といえば

  • 動体視力

  • 深視力(奥行)

  • 立体視(3D)

  • 瞬間視

などがあります。

これは物体を見た時にいかに鮮明に見えるかというものであり、視覚は視力の情報がもとになります。※

※静止視力が低い、乱視、極度の優位眼など視力に大きな問題がある場合は、ビジュアルトレーニングではなく検眼士や眼科の専門となります。


視覚と柔術

普段の生活で自分の目の動きを見ることはないと思います。

視覚も複数あり

  • 注視

  • 周辺視

  • 目で動く物体を追う

  • 目を寄せる、離す

  • 体を動かしながら物体を見るetc…

などがあります。

柔術では、シチュエーションによって視覚も変化しているはずです。

たぶんガードの方が大変

例えば、自分がオープンガードで相手が左右に動きながらパスを仕掛けてくるならば、体はやや固定で目が大きく動いてると思います。

逆に自分がパスする側なら、あまり動かない相手を自分の体を上下左右に動かしながら目でとらえるといった感じになります。

柔術の技術にも得意不得意があるように、視覚の能力にも得意不得意がありあります。

ビジュアルトレーニングでは、視覚の評価の後に競技に必要な(あるいはその人の不得意な)能力を向上させていきます。


中心視野

上のツイートにあるように、相手の動きを一点集中で見てしまう人は柔術では不利になります。

どんな柄?

例えば、このペンの先っぽを見たり、ボディにあるイラストを見るためには、集中視野が有効になります。

見える?

しかしながら、集中視野では動く物体をとらえるのが難しくなります。もちろんこれは画像なので、視野は関係ないですが、ペンがあれば試してみてください。

(おそらく、いまスマホやPCの画面を覗き込んでるでしょう?)

日常でペンを振って見ることはないでしょうが、現代においてはデジタルデバイスを注視する癖が中心視を強固なものにします。

そのまま柔術の練習をやっても、パフォーマンスは上がっていかないはずです。


周辺視

人の視野は片方100度ぐらいあり、実は体の真横より少し後ろまでなら見えます。ただし、加齢で狭くなります。

周辺視は、鮮明に物体を見ることはできませんが、動くものを素早く察知できます。

なので、競技中に相手の動きを早く察知したければ、集中視ではなく周辺視でボ〜と見る方が有効です。※

パスの簡単なコツは相手の死角に入ることです。

シッティングが一番簡単で、ハーフも背中が空いてます。オープンガードは左右に動きながら背中を浮かすか、お尻の下に潜るのが手っ取り早いです。

兎にも角にも、フェイント以外でずっと一点を見るのは非推奨です。

※認識には経験からくる予測も含まれるので、視覚だけが大事な要素ではありません。


ハーフガーダーのメリット

  1. 認識

  2. 判断

  3. 行動

という流れがあるので、自分がガードをやっているときに、相手が動き回ると認知タスクがキツくなるわけです。

しかし、人間の感覚器官は視覚だけではありません。前庭覚や体性感覚があります。

相手に密着してしまえば、良くも悪くも目からの情報は少なくなります。その分は体性感覚に頼ります。

密着すればこっちのもん

ハーフガードだけではなく、トップのチェストロック、ボディロック、スタンドのタックルなど・・・柔術は組技ですから体性感覚はビンビンに必要になります。

マスター世代にハーフガーダーが多くなるというのは、視覚の低下を補う意味でとても有効だと思います。

いつもオープンガードをやってる人で、相手の動きについていけないって人は、ハーフガードや密着の攻防を練習して体性感覚を磨いてみることをおすすめします。


周辺視の活性

実は私自身、過去に練習中にスマホを凝視していた時期がありました。今となってはとても後悔しています。

スマホの全てが悪とは言いませんが

  • 集中力を削ぐ

  • 集中視を癖づける

という点では、悪影響を無視できません。

もし練習直前、練習中にスマホを見ていたり、練習場にスマホを持ち込んでいるならば、それを止めることから始めてください。

レンチンで使用できるホットアイマスクは目の周りの筋肉をほぐすのに有効です。夏場以外は・・・

姿勢や動作の制御において、視覚の影響は大きいです。目の周りがガチガチに固まると、首や肩周り、姿勢を維持する筋肉に無駄な緊張が出てしましまいます。

脱力ができない状態ではパフォーマンスを発揮するのは難しいです。

次いで周辺視の活性ですが、専門的なものではなく簡単にできることとして

  • お手玉 & リアクションボール

  • すりあげ腕立て伏せ

あたりをおすすめしときます。

お手玉 & リアクションボール

ジャグリングができれば素晴らしいですが、難しければ二つの玉を上に放ってキャッチするだけで良いです。二つ投げることで、集中視ではおえなくなります。

リアクションボール

少しスペースがあるなら、床や壁を使って不規則に動くボール(600円〜1500円ぐらいで買える)を使ってキャッチボールをしてください。友達いない系柔術家でも楽しめます。

前述のように集中視は動きを追うのが不得意なので、予測できない動きに対して周辺視が活性します。このボールはコスパ良いです。


すりあげ腕立て伏せ

目から入る情報で、景色の流れをオプティックフローと言います。

例えば、スマホの画面を集中してみてると景色は流れてないですよね?

対して、外を歩いたり、走ったりすることで景色が流れます。見る対象が相対的に動くので、集中視では追えなくなります。

これを強く出せるのがが、顔を床スレスレで動かす運動です。

すりあげ腕立て伏せやソロドリルのジャカレクローリング(四つばい歩き)などは、練習前に導入しやすいオプティックフローを強く出せるおすすめの運動です。

まとめ

運動感覚において視覚は強く、依存傾向になりやすいです。

現代においては、生活習慣により自分が思っている以上に視覚への依存があります。

認知タスクはあらゆる競技に含まれる為、好ましくない視覚依存からの脱却や必要な視覚へのトレーニングはどんなフィジカルトレーニングよりもパフォーマンス向上に有益だと考えられます。

柔術においては、視線を一点に集中したまま動く癖のある人が不利になるこも多いので、集中視を抑制する工夫をしてから練習を行うことで上達しやすくなると思います。

Yusuke Yamawaki

スキ&シェアしていただけると嬉しいです。

収益はより良い記事を書くための勉強代とさせていただいてます。お気に召しましたらご購読お願いいたします。

ケガしない為のコンディショニング記事まとめ


いただいたサポートは柔術コミュニティのために使わせていただきます。