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冬の京都旅

大人になってから、冬になると京都に行きたくなる。京都の冬はとてつもなく寒いけれど、冬だからこそ感じられる風情がある。

酒飲みな私としては、先斗町で飲み歩き、飲んでほてった体を鴨川で冷ますのがとっても良い。人気のない夜のさむーい街を散歩するのも、どことなく風情がある。

冬に京都に行く機会が多かったけれど、清水寺に八坂神社、二年坂や錦市場での食べ歩き…と、ザ・京都観光!って感じの観光しかしたことなかった。

今年ふたたび京都に行く機会があったので、今度はどっぷり仏像の世界に浸かってみよう!と思いたち、寺巡りメインの京都旅行が開幕した。

三十三間堂

まず、向かったのが三十三間堂。1001体の千手観音立像で有名なお寺である。

入るやいなや千体を越える仏像の破棄に圧倒される。そりゃそうだ。千体という数の圧力だけではなく一体一体が悟りを開く一歩手前といったお偉いお方なのである。例えるなら、大谷翔平が千体並んでいるような迫力。

しかもこの千手観音、頭に顔が11個、手が42本ある。てことは本堂の中に11000以上の顔がある。それは圧倒されて然るべき迫力。

さらに千手観音の前で強面を向ける二十八部衆像。毘沙門天が有名だけど、全員観音様を守るスーパーエリートたち。みんな怖い顔してるけどお目目に水晶がはめ込まれてて(玉眼)、キラキラきゅるんなお目目なのが可愛い。

観音様は鎌倉時代に、湛慶という仏師を始めとする慶派、その他円派、院派など多くの仏師にによって作られた。寄木造と言われる平安中期から広まった比較的あらたしい手法である。

その技術の細かさたるや。40本の手には苦しむ民を救うためのさまざまな道具を持たれている。非常に繊細な木彫りの技術。

なんと修復に50年もかかったらしい。こんな素晴らしいものを今の時代に見れることに感動する。

私も得を積んだら千手観音みたいなオーラが出るのかな〜来世で人間になれるかな〜と邪なことを考えながら三十三間堂を後にした。

六波羅蜜寺


続いて訪れたのが六波羅蜜寺。ここはかの有名な『空也上人像』を見たく訪れた。

思えば歴史の教科書に写真が載ってたような気もするけど、大人になってから改めて空也上人像を見て思わず笑ってしまった。

仏像が口からにょろにょろこんにちはしてる!しかも六つ!!

発想が素敵すぎる、絶対見に行きたい!と思って待ち遠しかった。

いざ六波羅蜜寺に到着すると、でっかい十一面観音像がお出迎えしてくれた。本堂の前にいらっしゃる姿はよく来たな〜と言いながら拝観者を歓迎してくれてるみたい。

観音様の足元をくぐり抜け、まずは本堂にお参りして挨拶する。

そして空也上人像が待つ展示室へ向かう。口から六体の仏像が出ている彼と対面した。
めちゃくちゃ細かい技術!一体一体の小さい仏像を形作っているなんて細かくて繊細な技術!

そして空也上人の表情が何とも言えず良い。遠くをぼんやり見つめ、非常に落ち着いた目をしている。

空也上人像の口から出ている六体の仏像の正体は、南無阿弥陀という念仏らしい。
空也上人がまさに念仏を唱えている様子を表した仏像。

上人が生きていた時代は、令和の新型コロナウイルスが蔓延した時代のように、疫病が蔓延した時代だった。苦しい時代に、念仏を唱えれば誰もが救われるという教えのもと、空也が道、橋、寺などを作り社会事業に貢献しながら市の聖として人々に慕われていた姿をよく表している。

ちなみに、六波羅蜜寺の六波羅、という地名は髑髏原(どくろはら)から来ているという説がある。昔からあの世とこの世を繋ぐ場所、と言われていたことが由来だとか。

一条戻橋


もう一つ、あの世とこの世の境目と言われていた、「一条戻橋」を訪れた。

平安時代に活躍した漢学者の三好清行が息を吹き返したという逸話から、あの世からこの世に戻る場所として名付けられた橋である。

他にも、近くにある晴明神社という神社に祀られている安倍晴明が、かつて式神を使って橋占(はしうら)をおこなっていたなど、奇妙な逸話が多い場所だ。

一条戻橋を訪れた頃には、辺りはすっかり暗くなんとも不気味な雰囲気。

「あの世」側に行ってはいけない!と言わんばかりの赤信号がまた不気味…。
ちゃんとこの世に戻ってこれて一安心の、ドキドキ京都旅行だった。

三十三間堂や踊り念仏の空也上人の仏像の世界に、陰陽道の世界に、いろんな世界を覗き見できた京都旅。
また近々行けますように。

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