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現状打破のキャバクラ

久しぶりにらんま1/2を見た。子供の頃はコメディ要素が強く 、少しエッチなアニメという印象であった。
20年の空白期間を経て、改めて見ると面白い。特にセリフが秀逸だ。

「お金貸してくれたら奢ってあげる。」
ヒロインあかねのセリフだが相手から借りたお金で相手の食事を奢るというのがすごく斬新だ。初デートで女性が僕に言ったとしたらその感覚に強烈に惹きつけられるだろう。作者の高橋留美子のセンスには驚かされる。
もう一つ。またもあかねのセリフで

「このままだとこのままよ。」

この記事を書くきっかけにもなった言葉だ。聞いた瞬間
「ああ、このままだとそりゃこのままだよなぁ」と少し諦めに近い感情を覚えた。自明なことだが、深い。いつもと同じ食事、交友関係、思考に留まっているといつもと同じ朝を迎えてしまう。私にはぼんやりとなりたい姿があるが、そこに近づけない現状に強烈な不満がある。近頃私はそんな停滞感を身体の奥底に重く抱え、身動きが取れないでいた。私は「このままでいること」をあきらめた。つまり、これからは「しない選択」を続けることにした。

とある吹雪が吹き荒れる日。男友達と車で繁華街へ向かった。この無視できない停滞感を壊すべくキャバクラに行った。
なぜキャバクラか?それは私の研究対象である性的欲求とビジネスにダイナミックに関わるからだ。
「キャバクラ=モテない人が行く」と僕は決めつけ、嫌悪していた。しかし、「遊びの最終地点はキャバクラ」と言った地元の先輩の迷言が忘れられなかった。つまり関心はあったのだろう。

高校の後輩が札幌で黒服をしていた。普段なら私から連絡することはないが、アポをとり、連れとその日のうちに向かった。ちなみに北海道でいうニュークラは本州でいうキャバクラ、北海道でいうキャバクラとはセクキャバ(お触りあり)を示すという。今回はニュークラであった。

連れのうんこを近くのミスタードーナッツで待ったあと、すすきの中心にあるビルへ向かった。
エレベーターに乗り、3階で停まった。ドアが開くと、そこにはドラマで目にしたきらびやかな世界が広がっていた。明るすぎるほどの照明に大きな噴水とシャンデリア。そして何よりセクシーな女の子たち。後輩が現れた。5年ぶりにあった彼に当時の芋臭い様子はなく、夜の世界の軽やかさを身につけていた。
「Junさんお久しぶりです。今日は絶対楽しませます。」
礼儀正しさは変わっておらず、いくらか安堵した。私はどんな特別な対応が待っているのかドキドキしながら彼の後についていった。しかし、案内された席は一般の席だった。
野球部在籍時に彼の面倒をみたことを思い出した。エースピッチャーであった僕は自分のノウハウを惜しみなく教え、彼はベンチ入りの当落線状から見事控えピッチャーとして背番号を掴んだ。「自分がしてあげた」と思ったことを他人は大抵忘れている。僕もほとんど忘れているから仕方ない。
失意の思いを股間にしまい、優しい顔で僕は「ありがとう」と礼を言った。
キャバ嬢が席につくまでの少し時間がゆっくり流れた。
他の客には好感は持てなかった。30〜50代ほどで常連の様だった。品のない顔つきでグレーな仕事をしていそうな雰囲気があった。敬愛する作家の伊集院静であれば、「男として形が良くない」と言うだろう。そういえば氏の著書で銀座のクラブの話が出てくる。その影響を受け、私はここに来たのかもしれないと思った。そして形の良い私ならこの場でモテると確信した。
後輩ではない別の黒服がドリンクのオーダーをとった。私はウイスキーのロックを注文した。
連れと話していると突如私たちの両脇からエチエチな女の子が座った。
「こんばんは〜。まみです。」と隣の女性が言った。目は大きく、胸が強調されたボディラインに沿った衣装を着ていた。なんと素晴らしいデザインだろうか。女性の特有の美しい曲線が露わになり、その曲線を手でなぞりたかった。一瞬欲に飲まれそうになったが、男として形の良い私は踏みとどまった。
彼女は夜の仕事を始めて2年と言い、徹底してプロであった。
私のことを褒めすぎず、遠ざけすぎず、絶妙な距離感であった。
まみさんが
「ドリンク頂いてもいいですか?」
「どうぞ。」と私が言うと机の上のiPadを取り出し、1人でに注文した。値段は分からなかった。
「最初にドリンクを勧めた方がいいんですか?」
「その方がスマートだと思います。」
なるほど。キャバ嬢が席についたらドリンクオーダーがマストと深く記憶した。
プロの方との時間は興味深かった。
彼女はこの空間を楽しくなるようデザインしてくれる。ウイスキーがなくなれば、すぐに新しいアイスに替え、お酒を入れステアする。そしてグラスの水滴を拭き、私の前に出す。
私がお手拭きを使いテーブルに置けば、きれいに畳み直してくれる。その洗練さは日々の努力があったからだろうと推測できた。
全く口説けそうもなかったので彼女の経歴や客層など聞いてみた。20分ほど経ち、黒服が彼女にアイコンタクトを入れた。彼女は営業用のLINEを交換し、去っていった。
そして次の女の子が来た。あやねさんと言い、モデル体型で夜の仕事を高校卒業から始めて5年になるという。
比較対象ができたため、より丁寧に観察することができた。正直あまり楽しめなかった。まみさんと決定的に異なるのが自分の話したいことを話していたことだ。関心が自分に向いているため、僕(客)の変化に気づけない。僕は彼女に関心を失い、彼女は自分のことを楽しそうに話している。それではどんどんズレた関係になり、心地よい空間にはなり得ないだろう。そして後輩の働きぶりを聞いた時、黒服を下に見ている点も気になった。
3人目はマリンさんというムチムチ体型で胸がとにかく大きく、元気が良い癒し系だった。おじさんには堪らないだろう。僕も性的趣向でいえばタイプだったが、会話、所作がありきたりでチープに感じた。まず名前を褒める。そして仕事。お休みの過ごし方など。僕以外にも通用する予定調和な展開だった。つまらなかったのでプライベートで会おうと誘ったが、華麗に流され、最後のライン交換もなく別れた。
4人目は入店してから1週間の女の子であった。
ガールズバーで話しているようだった。

楽しい時間は終わった。もっとお話ししてあげてもよかったが、私たちを吹雪の中へ放り出された。

後日後輩に会うとやはりまみさんが在籍60名中人気がトップの方だという。No.1キャバ嬢と謳った女がメディアに出てくるが、トップでいることは中々に難しいことであり、人間的な魅力があるのだなと少し感心した。

キャバクラ。男の性欲をうまく換金するその巧みさはすごい。そして女の子を集客し、キャバ嬢へ育てるための仕組みが圧倒的に出来上がっている。
キャバ嬢に対するインセンティブが大きい。同伴、LINEでの営業もその分彼女たちの収入になる。
特に同伴がすごい。キャバ嬢は同伴料、指名料を店からキャッシュバックされる。店側は客入りが少ない時間帯に集客でき、機会損失を防げる。客は半プライベートでキャバ嬢との時間を楽しめる。なんと三方良しだ。であれば、プライベートで客と会うメリットは全くないじゃないか。

結論キャバ嬢は口説けないが新たな世界は拓けた。
「このまま」に小さな変化があった休日であった。

私は変態です。変態であるがゆえ偏っています。偏っているため、あなたに不快な思いをさせるかもしれません。しかし、人は誰しも偏りを持っています。すると、あなたも変態と言えます。みんなが変態であると変態ではない人のみが変態となります。そう変態など存在しないのです。