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まもる

暇すぎるこの春休み最終週の時間を使って、いまわたしが将来について考えていることを整理しました。プライベートなことも書いてあるけれど、まぁいいかあ。
(暇すぎてめちゃくちゃ長い記事になりましたが、悪しからず…)

(大前提として、わたしは医学部4年生(来月から5年生)です。)

わたし、お医者さんになりたい

まず、最初に医師になりたいと思ったのは、小学二年生のころです。医師だった祖父が亡くなったときに、漠然と「お医者さんって格好いい、お医者さんになりたい!」と思いました。ただ、小学校高学年になるにつれ、算数に苦手意識を覚え、「算数が出来ないとお医者さんにはなれないらしい」とどこかで聞きつけ、中学校に上がるころには諦めてしまいました。

中学校3年間は、たいしてなりたい夢もなく、ただ学校の中では勉強ができるほうだったので、なんにでもなれると信じて疑いませんでした。アンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓十五の君へ~」にあこがれて書いた、二十歳の自分に向けて書いた手紙にも、同じようなことが書かれています。

そんな感じで、なにも決めずに上がった高校一年生では、二年生以降の文理選択でだいぶ悩みました。頭を使いたかったわたしは、文系に行くなら法学部に行きたかった。ただ、理系に行く方が手に職を付けられるという両親の刷り込み教育の結果、最終的には、国語の成績が一番良かったにも関わらず、理系に進みました。

じゃあ理系に進んだ時、わたしがなりたいものはなんだろうと思ったとき、理学部はすぐ消えました。わたしは物事そのものを深く突き詰めて考えることが苦手だったからです。それよりも、いま世の中にある知識や情報を使って、考えていきたかった。医療系に進むなら、医師一択でした。最後まで残っていたのは、工学部です。飛行機を作る人になりたかったからです。


その後、大学受験の前後でいろいろあり、結果として医学部に来ました。
医学部受験の面接では、どこの大学でも「小児科医になりたいです」と言っていました。

その理由として挙げたのは、よくある「妹の病気」です。

身近にあった小児科医

川崎病という病気をご存じでしょうか。
わたしの手元の教科書には以下のように書いてあります。

主として乳幼児にみられ, 皮膚・粘膜・リンパ節などが侵される原因不明の急性熱性疾患. 全身の中小動脈に血管炎がみられ, 特に冠動脈炎による動脈瘤の発生が問題となる.
・乳幼児に好発する(4歳以下が約85%、1歳頃がピーク). 男女比約1.3 : 1.
・年間患者発生数は1万人を超えている(川崎病全国調査).

イヤーノート 2024 内科・外科編

もっと詳しく知りたい方がいれば下記の国立成育医療研究センターのサイトをご覧ください。さらにガイドラインなどに飛べます。

川崎病はすなわち、小さなこどもが罹る疾患です。わたしの妹は2歳のときに川崎病と診断され、近所のクリニックの先生から紹介状を貰って大きな病院に1週間ほど入院となりました。迅速な診断と、紹介先の適切な治療のおかげで、妹は命を救われ、後遺症もなく、いまでは元気に生きています。

ただ、わたしの妹は、わたしの一歳年下なのです。彼女が2歳の時、わたしはまだ3歳。覚えているはずがありません。

実はわたしは、この話を、中学校3年生の時にはじめて親からされました。そのとき、「当時、妹の診断が遅れて、治療も後手にまわっていたら、妹はいま生きていないんじゃないか」とかなり衝撃を受けながら思いました。そして、わたしが生まれたときからお世話になっている近所の小児科医の先生を強く意識し、わたしもあんな人になりたい、こどもを救える医師になりたいと思うようになりました。


いまでもそう思います。ただ、こどもが減っているいま、自分の将来も気になります。腕がない医師は淘汰されていくものだとも思います。わたしが憧れた、いわゆる「近所のお医者さん」である小児科医の需要は減っていくでしょう。

だから、成人を対象とする内科を目指す気持ちもすこしだけあります。外科より内科の方が、わたしとしては勉強していておもしろいからです。ただ、急変が起こりそうな循環器の勉強がわたしとしてはおもしろく、将来の仕事にできるかどうかはまた別問題で…。

だから、いろんな場所で小児科医に対して将来はどうですかと聞いて回っています。仕事はなくなりませんか、と。

いろいろなお話を伺った結果、それでも今日時点のわたしは小児科医になりたいと思っています。内科全般の勉強がそれなりにおもしろいわたしにとって、小児の総合医である小児内科医は絶対おもしろい。その中で、将来、専門性(小児循環器、小児腎臓、小児血液、小児内分泌など…)をさらに磨いていくとしても、とにかく小児科に進んでみたい。こどものために働きたいと思います。


ドラマ 【PICU 小児集中治療室】

ところで、PICU 小児集中治療室というドラマをご存じですか?

わたしはこのドラマの放送時、途中まで見ていたものの試験が忙しすぎて離脱してしましました。ただ、最近TVerで過去回の再放送をやっていたので見ていて、いろいろ思うところがあり、今回のnoteを書くに至りました。

ちなみに、およそ2週間後(2024年4月13日(土)21:00~23:10 放送)、このドラマのスペシャル版が放送されるようです。

わたしはいま北海道にいないし、北海道で働く予定も今のところないのですが、このドラマには考えさせられるものがあります。

このドラマは小児救急の話です。広大な面積を誇る北海道では、救急搬送の遅れは、そのまま患者の予後不良を意味します。そこで、医療用ジェットを運用し、患者の搬送を一刻も早く行うことで、北海道にいる55万人の小児を救おう、というのがドラマの主題です。

中でも、わたしの心に残った部分を書き留めておきます。

①新しい医療が入ってきたときに、勉強する必要があること。
ドラマの第一話で、ご高齢の先生が、自分よりも若い先生の意見を熱心にノートに取っておられるシーンがありました。医師は「生涯学び続ける」とよく言われますが、こういうことなのかもしれないなと思いました。
失敗しても、間違えても、あるいはそれをやらないことがベストなのかもしれないが、それでも、誤ってしまったときに、つぎにそのミスを犯さないように勉強することが、医師にとって何よりも大事なのだと。
自らを都度省みながら、成長していく。
それは生涯、変わらないし、結局のところ最も大切なことなのかなと思います。

小児のチーム医療には、親御さんも入ってくること。
チーム医療とは、医師主体の医療ではなく、看護師、薬剤師、PT、OT、MSW(メディカルソーシャルワーカー)などの多職種が連携して医療を施すことです。ただ、ドラマで、親御さんもチーム医療の一員なんだということを聞き、大きくうなずいてしまいました。
確かに、医療知識は医療従事者の方が多いだろうと思います。ただ、治療の方針を決める際に、患者さんおよびそのご家族のお考えを尊重しなければならない。そのことをいつまでも忘れないでいたいなと思います。

わたしが見ている小児医療

最後に、いまのところ私が病院で見てきたこどもたち(新生児科)について述べたいと思います。

わたしが病院実習ではじめて見たこどもは、小児科の患者ではありませんでした。自分のことを思い返してみても、別に小児科のクリニックにばかりかかっていたわけではなく、耳鼻科や眼科、皮膚科などには行っていました。そして、小児病棟ではないこどもたちは、みなそれなりに元気でした。

ただ、新生児科をまわったとき、NICU (Neonatal Intensive Care Unit:新生児集中治療室)、GCU (Growing Care Unit:新生児回復室)を含め、一般的な小児病棟にも重症なこどもたちがいました。ご家庭の事情で、おうちに帰れないような子もいます。たくさん管に繋がれている子もいます。

じゃあ、その子たちはかわいそうなのか?

わたしはそうは思いません。いや、かわいそうなのかもしれない。それは確かにそうなのかもしれない。

でも、わたしはそれよりも、「希望だ」と思いました。NICU、GCUに居るこどもたちは、必死で生きようとしています。中には出生前から疾患が分かっており、ベッドを空けておいてもらって、帝王切開で娩出後、すぐにNICUに入った子たちもたくさんいます。
病院の同じフロアには、正常分娩で3,000g前後で生まれ、まるまるとして、お母さんから直接母乳を貰える子たちもいるのにも関わらず、あの子たちは小さい子では数百グラムでこの世に生を受け、そしてみんな、両親にすぐ会える環境にはいないのです。

数百グラムで生まれた子たちは、肺をはじめとする臓器が生まれてきた時点で低形成です。それでも、みんな必死です。わたしは、約300gで生まれてきた子が、2,000gまで大きくなっているのを見ました。全員がそうはいかないのかもしれないけれど、いまの医療では救える命があります。悲壮感ではなく、希望をもって、赤ちゃんみんな生きています。

そういう子たちが、なんとかお家に元気で帰れるよう、医師や看護師を中心としたメンバーが赤ちゃんたちを応援しながら育てているのです。赤ちゃんたちが人工呼吸でも点滴をされながらでも、生きていこうとする姿は、わたしにとって希望以外の何物でもありません。

確かに美しい話ばかりではありません。生きて帰れない子もいるし、家族がその子を待っていない場合もあります。だけど、スタッフみんなが希望をもって医療をしている環境は、強いと思ったし、わたしはそういう医療がしたいと思っています。

おわりに

このnoteを、例えばお医者さんだったり、特に小児科医の先生がもし読んでいたら、恥ずかしいな。この人何もわかってないじゃんと思われるかもしれない。

でも、それでもいいのかもなと思います。まずは、医学生のわたしが小児医療に対してどんな考えを持っているのかを残しておきたい。そのうえで、将来どんな道を選んだとしても、そのタイミングでの考えがアップデートされればいい。

そんなふうに思います。来月からの医学生5年目もがんばります。

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