合図

丘の上の君は
丸い窓辺で絵を描いている

夢の中のあの人を
忘れないように

愛し方がほんのすこしだけ
似ていたから

青い君
白い首筋
足元を林檎が通り抜ける

あの人が
くれた
サイズの合わない靴

履けないまま
かかとをならして
痛いな
擦り傷

だから
まだ
横顔のままで
あなたを抱きしめて

心地よいリズム
伝わるのは片側かもって

控えめに鳴っている
目覚まし
こめかみが痛い

すこしだけ無骨な白い手を
なぞるようにして

キスをしよう
変わらない日々

こんな毎日が
続くように

小さな白い隙間に
音符を並べて

控えめな声で
伝えよう

春が笑って
くしゃみする

君の背中に
タンポポが咲いたら

それが始まりの合図



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