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詩集 生きる

誕生

暗い
産道を通り抜け
光りを目指し

わたしは
今日
ここに
生まれた

言葉は
まだ 使えなかったが
泣くことだけは
出来た

やがて
時が経ち
言葉や
歩くことを覚えた

ヒトや
モノを
認識することも
出来るようになった

喜びや
悲しみ
そして
たくさんの人たちに
出会った

また来る
今日は
人生の道しるべ

生きてゆく限り
人生の
物語のページは
更新されていく

まだ見ぬ
人々や
世界と
出会うため

わたしは
生まれて
来たのかも
しれない


歩く

歩く
地を踏みしめるように

歩く
慌てたように

歩く
道が続く限り

歩く
時間に間に合いますように

歩く
目的地へ辿り着くために

歩く
あなたが待ってくれているから

歩く
今日も明日も

わたしは
歩き続けることを
やめない


呼吸

わたしたちは
くり返し
息を吸い
息を吐いて
呼吸をしている

そうして
全身に
地を巡らせ
生きている

生きている内は
絶えず呼吸を
くり返す
まるで
生命の息吹のように

呼吸することは
生きているという証


はじめは
倦怠感だけだった

やがて
全身が燃え上がるような
熱が襲い来る

まぶたは重く
足取りはふらつき始め
呼吸も苦しくなってきた

熱は強さを増し
やがて
立っていることも
ままならなく始める

ああ熱よ
私を苦しめる熱よ

気が付くと
倒れ込むように
寝床へ伏している
私がいた


予期せぬ事で
人は身体や心に
傷を負う

その傷は
無情にも
長引く事が多い

傷を負った時こそ
人は何かに
縋りたくなる

身体や心を
癒してくれる
人や物に

そんな
人や物に
出会えたのなら
幸運である


起点

ここに生まれ
ここに暮らし
ひとつの物語が
始まった

一生のうちに
訪れる
出会いと別れ
くりかえす
喜びと悲しみ

見えない光を
掴もうとして
果てのない
闇を彷徨う

ひとつの物語に
別れを告げたのなら
また新たな物語が
ここから始まる

遥か遥か
長い旅路を
いつまでも
一筋に
心のなかに
続いている


仮面

人は誰しも
見えない
仮面をつけている

楽しかった時
悲しかった時
何かを守る時
何かを企てる時

その 仮面は
無意識に
外れる

仮面が
外れた時
初めて
人の本性が現れる

果たして
良い人?
それとも
悪い人?

自分が
仮面を外した時
他人(ひと)に
どう映るだろうか?


なみだ

かなしいとき
くるしいとき
つらいとき
たのしいとき
うれしいとき
なみだを
ながせばいい

かなしいとき
くるしいとき
つらいときに
ながすなみだは
ちからに かわる

たのしいとき
うれしいときに
ながすなみだは
しあわせに かわる

ないて
ないて
おもいきり
なみだ ながして
じぶんを
りせっと
すればいい


鏡に映る自分

ふと
鏡に映った
自分を見る

その瞬間
衝撃が走る
気力のない表情
だらしない身体
なんと
醜い姿か

鏡に映る自分を見て
ショックを受ける
と 同時に
怒りが混ざった悲しみが
込み上げてきた

気が付けば
わたしは
本能のまま
目の前の鏡に
拳を降りおろしていた

鏡は
中心部からひびが入り
破片が足下へと落ちてくる
わたしの拳は
真っ赤な血が流れだしている
本能のままに
動いたからか
痛みなんて感じなかった

だが
鏡を壊した事で
わたしの中の
靄のようなものが消え去り
拳から絶えず流れ続ける血を見て
醜い姿の自分と別れを告げ
新しい自分に
生まれ変われるような気がした


今在る
この肉体も
やがて
命尽きたとき
焼かれて
骨に還る

肉体があったときの
骨よりも
焼かれた後の
骨は
バラバラボロボロの
ほんの一部だけ

骨に還った後も
あなたの声は
ほんのわずかに
耳の骨に
谺する


日記

一日一日の
出来事を
書き記す

何月何日
晴れ
曇り

立ち止まった時に
ふと 日記の
ページをめくる

振り返れば
何かを
思い出せるような
気がする

明日のことは
まだ
わからない

日記は
過去から現在
あるいは
未来のヒントを
与えてくれるかも知れない

日記を
書くことは
生きている
証を示すこと


こども

こどもは
希望に包まれた天使

こどもは
屈託のない笑顔で
微笑みかける

その笑顔に
何もかもを
許してしまい

その笑顔を
見るために
尽くしたくなるのだ

こどもの瞳は
輝きを放つ煌めくダイヤのよう
こどもの心は
穢れを知らぬ透き通る水のよう

こどもの笑顔は
疲弊した心を癒し
優しい気持ちにしてくれる

こどもよ
あなたの笑顔は
人々を救済する力を持っている

いつまでも
笑顔を絶やさず
どこまでも自由に
飛んでゆくがいい


五感うた

視覚うた

目を
凝らして
視る

あなたの姿を
目の前に広がる景色を
世界の動きを
一枚の写真を

そして
目を背けたくなるような
現実を

それから
少しずつ
視野を広げていく

目という
カメラに
すべてを
収めるために

聴覚うた

耳をすます

あなたの声に
鳥のさえずりに
子どもの泣き声に
響いてくる谺に
遠くからのサイレンに
何かが崩れ落ちる轟に

耳を傾け
何が起こっているかを
察知する

どこかでは喜びが
どこかでは怒りが
どこかでは哀しみが
どこかでは楽しみが

そして
やがて
生まれくる
新しい生命の鼓動に

嗅覚うた

花の香り
香水の香り
線香の香り
ガソリンの香り

人には
それぞれ
好みの香りがある

鼻は
常にアンテナを張り
良い香りを見つけ出す

好みの香りは
心を落ち着かせたり
ふと 何かを思い出させたりする

今日も
鼻は
良い香りを見つけ出すため
アンテナを
張り巡らせている

味覚うた

人には
忘れられない味が
ひとつはあるはずだ

美味しかったもの
不味かったもの

舌は
甘味 酸味 塩味 苦味 うま味を捉え
記憶する

やがて
舌は
記憶した味を
思い出させ

同時に
人々は
その味を
求めたくなる

触覚うた

あなたに触れる
機会に触れる
石に触れる
花に触れる

手から
伝わってくる

この温かさ
この冷たさ
この硬さ
この柔らかさ

わたしたちが
触れるものには
それぞれ違った
感触がある

今日も
明日も
その先も

手は
感触を伝え
感覚を覚え
どんなものであるかを
教えてくれるのだ


こころ

ちかくにいるほど
じつは
こころは
とおいのかもしれない

とおくにいるほど
じつは
こころは
ちかいのかもしれない

ちかくにいるのに
はなれている
こころ

とおくにいるから
ちかづく
こころ

こころ
しずか
しーんとしている

こころ
どきどき
わくわくしている

こころの
なみは
あなたとの
きょり


生きる

生きる
悲しみを糧とするために

生きる
広がる自由のために

生きる
まだ見ぬものと出会うために

生きる
大切なものを見失わないために

生きる
祈りを昇華させるために

生きる
いつか来る未来のために

生きる
いのちと繋がるために

だが
生きていく中で
困難や辛さが
立ちはだかる

しかし
出会えた人や場所が
生きる原動力へと
変わっていく

どんなに
苦しみに苛まれたとしても
幾度と訪れる喜びのために
前を向いて歩き続ける
だから わたしは 生きる


運命

愛する人に
わたしが
出会った時
わたしは
この
運命に
身を委ねよう

死が
わたしを
迎えに来た時
わたしは
この
運命を
受け入れよう

愛する人に
めぐり逢い
愛の喜びを知り
やがて
死が二人を
分かつ時

これが
運命であるのなら
わたしは
地での
思い出を胸に
空へと
旅立とう




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