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伝わってる?「指示」をシンプルに伝える技術。

こんにちは。東京は暑い日が増えてきてそろそろ夏の気配を感じるようになってきました。コロナ禍にあっても少しずつ活気づいてきたように思います。電車の中は静まり返っていますが、すれ違う人たちからは日常的な会話が聞こえてきます。

私たちは普段こうして何気なく会話を交わしていますが、こうした会話の中には実は様々な方法が用いられており、気づかないうちに活用していることが分かります。しかしこうしたレトリックが邪魔をしてうまく伝わらないことがあるのです。

例えば以下のような台詞はどうでしょうか
「今日はこのあとにご飯を食べてそしたら公園に行くからね。ちゃんと着替えて用意して待っててね。」

これは特に変哲もなく、しかも日常でよく起こりうるセリフですね。実際特に問題なく読むこともできれば、きっと会話の中にあっても不思議ではないですね。

しかしこのなんの変哲もない文章も分解すると以下のようになります。

① 始めにご飯を食べる
② (片付ける)
③ 着替える
④ 用意をする⇐(ハンカチやティッシュを持つ、帽子をかぶる、など)
⑤ 待つ←外?玄関前?
⑥ 公園に行く

いかがでしょうか。こうしてみると先ほどの台詞はスムーズに見えて実は時間軸が入れ替わっており、実に6つもの指示が含まれていることが分かります。

「指示を簡潔にする」というのは案外むずかしいことで、短くしたつもりではあっても実際は短くなっていないということはよくあることです。

以前、冗長である台詞はほぼ聞こえていない、ということをお伝えしたことがありますが、同じことが指示にも言えます。つまり台詞が長くなれば長くなるほどその文章には多くの指示が含まれるようになるので、最初に聞いた指示は忘れ去られ、さらに複雑な時間軸によって順番が損なわれます。

結果として、「何をしたら良いのか分からない。」というパニックが発生する原因となるのです。

それでは指示をする際にはどのような点を意識すると良いのでしょうか。それにはいくつか事なポイントがあります。

(1) 指示の数を確認する(句点「。」を多用する)
まずは何といっても句点を多用することです。「ご飯を食べてね。」「そのあと片付けてね。」「片付
けが終わったら着替えてね。」と、細かく伝えることが大事です。

(2) 適切な量で指示をやめる
先の例では場面を食事の場面で終了しました。着替えて何かする指示は着替えが終わるまで待ちましょう。また、与えられる指示の量は受け手によって変化します。先ほどの例では最後の「着替えてね。」が、ご飯を食べるより先に来ることもあるかもしれません。
初期の段階では1つの指示ごとに正面から顔を見合わせて、伝わったかどうかを確認しながら用意を進めていくのが良いですね。

(3) 時間軸を入れ替えない
時間が前後することを特に苦手とする子どもがいます。冒頭の台詞では「着替えて用意して待つ。」は、本来ご飯を食べたあとにくる行動でした。つまり冒頭の台詞を整理するためには時間軸を整理する必要があるのです。
しかし毎回流れ通りに会話を組み立てるというのは普段から意識できないとかなり難しいことです。この場合、やはり指示を簡潔に1つ1つ行動を確認していくのが良いでしょう。

はっきり伝えたつもりであっても実際は選択肢が子どもの中に用意されている場合があります。これは普段の生活から子どもがどの程度の生活状況を把握しているか確認する必要がありますが、先ほどの「待つ」をあえて選択的にしたのは、こうした一見伝わりそうな点でも迷いが生じる可能性がある、ということを示すためでした。
実際のところ、待っていてくればおおむねどこでも良いのです。しかしどこか指定されないとどうしたら良いのか分からずうろうろし始めてしまうことがあります。
確実に起こりうることではないものの、指示の不足が結果として本来の意図と異なる行動を生起してしまうことはあるのです。

こうしてみると普段の会話というのは実に入り組んでいることが分かります。ただしこれらは会話によって相手を楽しませたり伝えたいことを強調したりするために無意識に使用している方法です。不利明ければ冒頭の台詞で一番伝えたいことは「公園に行く。」ということなのです。ですから時間をずらしてでも敢えて言葉の始めに持ってくるのですね。だから一般的には分かりやすい。

しかし一般的な分かりやすさは必ずしも正確に伝わるとは限りません。言語理解や指示理解が難しい背景には、こうした言葉の解釈に課題があると理解してもらえたらなと思います。

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