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街かどの教育学〜番外編・道徳(読解)

今日、授業の中で突然「道徳的な会話をしよう。」と提案があった。生徒は小学生で話すことがとにかく好きな子だ。

その題材が何かといえば「テキストに描かれた老人が何歳か当てる」というものだった。

その老人はある村の村長で、白髪でひげも生えているが体格はガッチリしていて作中での会話はとても威厳たっぷりだった。ただし年齢は明らかにされていない。

その子にしてみればただの当てっこゲームのつもりだったのかもしれない。とはいえここで道徳という言葉が出てくるとは予想もしていなかったので、その道徳的な会話にのることにした。

自分は90歳、その子は70歳。

この70歳の根拠がとても興味深い。

理由をたずねてみると「白髪だから60歳は超えていると思った。年寄りに見えるけどちゃんと会話できてるし、周りの人をおさめるくらいだから立派な人。80歳を超えると村長というのは難しくなるのでは(認知症の懸念)。」ということだった。

優秀だと思う。
見た印象と話の流れを根拠に具体的に考え、しかも認知症のことまで踏まえることができている。

何より最後の一言が強烈だった。

「ね、答えがないでしょう?」

誰かに聞いたかどうかは別としても、答えがないものについて考えることが道徳だということをよく理解している。
答えがないというのは探しても見当たらないというより、意見が分かれることについて考えるということだ。
その時あらゆるものを参照し、自分の主張の根拠として利用していく。

こうして主張を作り上げ、相手が納得できるよう説明する。

完全にその子のほうが一枚上手だった。



道徳とは自分の経験と意見と他者の経験と意見との相違点から接点を見出そうとするところにある。

トロッコ問題のようにそんなぎりぎりの判断を迫られるまでもなく、あらゆるところに道徳のヒントが散りばめられている。むしろ身近なところにあるからより道徳的なことだと思う。


この子の驚くべきはこうした考えができること以上にその成長にあるのだが、それはいつか紹介できたら良いと思う。

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