深夜の海
海は死の表象
パンフレットにそうあって、海に行こうと思った。
草の響き
雨は降って、やんでいた。
電灯がつく商店街を歩く。
取り壊された寮の前を行く。
車の並ぶ旅館の裏を過ぎて。
漁火通りに着く。
漁火はない。
雲がよく出ていてよかった。
街の灯りが空いっぱいに伝って明るい。
砂浜の形は覚えている。
そこに段差、向こうから周って
潮が引いていく。
テトラポットは埋まっている。
突き出たところに腰を下ろす。
海はそれなりに波立っている。
マスクを外す。
砂粒をひとかけ吸い込む。
この海に触れたことはなかった。
立ち上がって歩み出る。
波の音はそれなりで
ふるさとを歌う
波の音と声が聞こえる
数歩近づく
the lord’s playerを歌う
波の音と声が響く
歩き始める
sleepを歌う
声が波打つ
瞬間、光がちらつく。
浜辺に人が降りてくる。
会ってしまう前に
砂浜から出る。
コンビニでチキンを買う。
なんとなく、そう決めていた気がする。
道々、齧りながら戻る。
草の響き
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23:15 00:15 11.01.2021