さらばクジラ構文: no more than系構文の完全理解ガイド
クジラ構文と呼ばれる複雑な構文があります。こんな感じ。
A whale is no more a fish than a flying fish is a bird.
トビウオが鳥ではないようにクジラは魚ではない
いろいろと謎だらけですよね。noってなんなの、notじゃないの?とか、a flying fish is a birdってどこに「鳥ではない」要素があるの?とか。
これについて原理的なところからわかりやすく説明します。
比較の熟語って結構no使うやつ多いですよね。まあ、多いんですよ。
no more 〇〇
no longer
no sooner than とか
全部バラバラに覚えてゴチャゴチャになっている人も多いかもしれないですね。
クジラ構文含め、これらの熟語はすべてnotではなくnoが使われています。これが重要なポイントひとつめ。これとあと一点が理解できると、一気に全部理解できます。
そもそもnotとnoは何が違うんでしょうか。いくつかあるんですが、ここでは話を簡単にするためにひとつに絞っておきます。次の2つのフレーズを比べてみよう。
not water
no water
違い、わかります?
not waterは「水じゃないよ」ということですね。
This is not water. だったら「これは水じゃなくて油だ」みたいな感じです。
じゃあno waterは?
no waterは「水が無い」ということです。
I have no water. なら「水持ってない!水ゼロ!」
つまりnotは「〇〇じゃない」、noは「〇〇がゼロ」ということになります。
not→〇〇じゃない
no→〇〇がゼロ
これが理解できたらひとつめのポイントはクリアです。
さて、話は変わって比較です。比較にはこんな表現があります。
Tokyo Skytree is 301m taller than Tokyo Tower.
東京スカイツリーは東京タワーより301m高い
This problem is much more difficult than that.
この問題はあの問題よりずっと難しい
まあ、わりとよく見る表現ですよね。
比較級「taller」「more difficult」の前に入っている「301m」「much」は何でしょうか?
これ、どちらも差を表していますね。こんなふうに、比較級の前にはしばしば差を入れます。これが2つ目のポイント。両方理解できました?
no: ゼロを表す
比較級の前:. 差を表す
この2つを併せて考えるとこうなりますよね。
no+比較級=差がゼロ
例えば先程の文、
This problem is much more difficult than that.
これ、難易度の差が大きいということですよね。
じゃあこれは?
This problem is no more difficult than that.
難易度の差がゼロということになりますね。つまりこの問題とあの問題は難易度の差がゼロ。それも「越えていない」という意味で差がゼロなので、どちらとも大した難易度じゃないということになります。
more difficultの反対はless difficultです。
This problem is much less difficult than that.
この問題はあの問題よりずっと簡単
これも難易度の差が大きいということですけど、さっきとは逆です。これもnoに変えると
This problem is no less difficult than that.
難易度の差がゼロ、それも「下回らない」という意味で差がゼロなので、どちらとも相当な難易度ということになるわけです。だんだんわかってきました?
まとめると、no+比較級は差がゼロということ。no more/-erは「越えていない」のでネガティブな意味で差がない、no lessは「下回らない」のでポジティブな意味で差がないということ。あとは何の差がゼロなのか捉えられればいいですね。
じゃあこれはどうでしょう?熟語として扱われることも多い表現です。
I have no more than 100 yen.
これも当然差がない、それもネガティブな意味で差がないということです。何の差でしょう?
金額ですよね。持っている金額が100円だけ。
He has no less than a million dollars.
これはポジティブな意味で金額の差がない。100万ドルも持っている。すごいですね。
じゃあこれはどうでしょう?
A shrew is no larger than a beetle.
shrew: 世界中に分布する超小型哺乳類。
和名はトガリネズミだがむしろモグラの親戚
まったく同じように考えれば大丈夫ですね。トガリネズミとカブトムシは大きさの差が無い。ものすごく小さいですね。
He is no more punctual than weather.
She is no less punctual than the sun.
punctual: 時間を守る
じゃあこの2つは?
やはり同じように考えれば大丈夫です。彼と天気は時間の守り方に差が無い。それもネガティブな意味で。いつ雨が降るのかなんてよくわからないので、彼もいつ来るのかよくわからないということですね。
もう一つは彼女と太陽は時間の守り方に差が無い、今度はポジティブな意味です。太陽はそれはもう必ず決まった時間に昇るので、彼女はそのレベルで決まった時間に来る!
さて、だんだん最初の文に近づいてきました。
A whale is no more a fish than a horse.
A whale is no less a mammal than a horse.
mammal: 哺乳類
moreのあと、さっきは形容詞が入る位置にfishとかmammalとか入っていますが、これはどのぐらい魚や哺乳類か、という「魚度」「哺乳類度」ぐらいに思っておけばいいです。
そうすると上の文は、クジラと馬は「魚度」で差が無い、それもネガティブな意味で差が無い。両方全然魚じゃない。
下の文は、クジラと馬は「哺乳類度」で差が無い、今度はポジティブな意味で差が無い。両方思いっ切り哺乳類ということですね。
A whale is no more a fish than a flying fish is a bird.
flying fish: トビウオ
A whale is no less a mammal than a sparrow is a bird.
sparrow: スズメ
というわけでいよいよ最初の文に戻って来ました。
さっきと同じようにmoreとかlessの後のfishやmammalは「魚度」「哺乳類度」と思っておけばOK。さっきと違うのはthanのあとにa flying fish is a birdというSVが入っているところですね。これは何でしょうか。
これは手っ取り早く言えば「トビウオの鳥度」と思っておきましょう。つまり上の文は「クジラの魚度」と「トビウオの鳥度」は差が無い、ということです。それもネガティブな意味で差が無い、つまり当たり前だけどトビウオは全然鳥じゃないので、それと同じぐらいクジラも全然魚じゃないよ、ということです。
じゃあ下の文は?「クジラの哺乳類度」と「スズメの鳥度」は差が無い、それもポジティブな意味で差が無い。つまり、当然スズメは思いっきり鳥なので、それと同じぐらいクジラも思いっきり哺乳類だ、ということになるわけです。
英語のいろいろな表現は必ずしも原理的に理解しなければならないわけでもないですが、原理的に理解しておくと応用しやすい。たとえば次の文はどう考えればいいでしょう。
I can't say using the Internet is a good thing any more than it's a bad thing.
not+anyはほぼnoと同じ意味合いになります。can't+any moreでno moreと同じですね。ということはこれも差が無い。「インターネットを使うのがいいことだ」というのと、「インターネットを使うのがよくないことだ」というのがネガティブな意味で差が無い。で、これはそう言えるか言えないかの話なので、「どちらも全然言えない」というわけです。
最近の授業で扱ったので、こんな感じに改めて整理してみました。というわけで今回は比較の話でした。
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