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突然シャワーを浴びながら泣きたくなる

突然泣きたくなる事がある。どんな時にと言われるとよくわからないんだけど多分何かで心のタンクがいっぱいになった時。

そして今日がちょうどその日。タンクの中を出してみようと思う。
タンクの中には不安がたくさん入っている。この不安なんだけどちょっと整理をしてみる。すると何より大きいのは、私の中にある『言葉たらず』からやってくる不安。
私は基本的に人と付き合うのが苦手だ。そうは見えないと言われるけれど……基本的に人付き合いが下手な私の人付き合いはそれを自覚してテクニックを磨いただけだ。

人と話す時は、とりあえず褒める。
始まりで困ったら血液型か天気の話をする。
わかってる事でも会話に困った時はわからないと言って相手が得意そうな事を質問をする。
褒めてお礼を言う。
憧れを表す。
どうにもならない時は自分が不安なんだと言う話を何か見つけてする。
話ができる様になっても理論で勝てそうになった時は、わからないふりをして決して勝たない。
それでもどうしても困ったらトイレに行く。

多分これをすると困ることは少なくなる。
いわゆる雑談というのは、どれだけ頑張っても出来ない。こればかりは才能なんじゃないかと思う。雑談ができる人は、人に興味があって人が好きなんだと思う。私は、あまり他人に興味はないし人間が好きではないのでどうしても雑談というものができない。正直雑談するぐらいなら無言な方が楽なんだけど一緒にいる人は、無言が行き詰まるようなのでそういう時は席を外す。なので私はいつもちょっとだけ孤立する。そのくらいがちょうどいいのだ。誰かと仲良くなると余計なことを喋って不安になるのだ。意思は口に出すと突然私のものから相手のものになる。不思議と相手の気持ちがそこに勝手に入ってきて別物になったりする。そんなつもりはないのにという様な形になって人に伝わったりする。だからあまり人と接するのは好きじゃない。

不安になる時は、少し人と近づき過ぎてしまった時だ。得意でないのがわかっていながらつい近づいてしまうと余計なことを言ってしまう。ついわかってもらえたようなそんな気になってしまう。つい仲間に入れてもらえた様なそんな気持ちになっていい気になってします。余計なことを言ってそれが間違って伝わってないかと思ってしまうのだ。そうなってしまうともう不安に苛まれ、そして相手の一言を深読みして不安になる。そのスパイラルが始まり逃げ出せなくなる。
だからあまり人と深く付き合うことは向いてないのに……といつも思う。そういう時は、いつもなら気にならないことも気になり始める。いつもなら気になってないのに気になるものだから最近運が悪いと思い始める。だから余計にいい事がない。とドツボにハマるように不安が重なっていく。

不安は抱えきれず溢れ出す。湯水のように溢れ出すマイナスな思考は、自分の中にどこまでも浸透し大きくなる。もう不安に囚われ不安のみになってしまう。だんだん身体もそれに反応しドキドキが止まらなくなる。それでも時間は過ぎていくので会社に出てはいつもの自分を演じると家に帰ってどっと疲れる。その頃必ず自分を守るために私がやることが、大きな声で歌いながら歩くと言うこと。誰からどんな目で見られようとも声を出して歌う。これは、私大丈夫というのを自分に言い聞かせているのだ。いわゆる1人から元気というものだ?

そしてシャワーを浴びたある日涙が溢れてくる。何をやってるんだろうって思うんだ。私は、なんのために何をしてるんだろうって思うんだ。自分を出してしまうと、どんどん自分じゃない気がし初めて、どんどん周りと合ってない自分が取り残されてる様な気がして、自分を出してしまうと一人ぼっちになってしまう。何やってるんだろうって、真剣になったことを後悔するんだ。だから人との距離は近づき過ぎちゃいけないのにって……
一人暮らしの私は、部屋で泣いたところで誰も見てる人がいるわけじゃないのに、不意にシャワーの水が涙となって一緒に流れ、なんとなくなかったことにしてくれる様な気がするのだ。

もし部屋で泣いてしまったら、もう無かったことにはできない。現実として受け入れないといけない。そうしたくなくて、大丈夫きっと大丈夫、まだ取り返しかつくから….と自分に言い聞かせてシャワーで泣いてしまう。流れるのは、同じ水だもの。きっと見間違いだって思えるもの。


心のタンクの中には、もっとたくさんの物が入っている。不安だけじゃなくてもっとたくさんのものが。それでもそれを開けてしまって、直視するとなんとなく戻れない気がするんだ。今の私に……知らないからこそ、いいこともある。というかちょっと疲れたのもある。そう言い訳して、これ以上はほじくり返さないことにする。いつの日かそれをまた整理する日がくるはずだから


#小説 #エッセイ #短編  

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