20歳、「クリスマス限定のケーキをどうしても食べたい」という友達

 クリスマスが近くなってきたときだった。

 突然、高校からの友人達のLINEグループが動き出した。
元々は同じ部活の同期だった人達の集まりで、住んでいるところが近い者同士で3年ほど前からよく会うようになった。メンバーは5人ほどで、定期的に集まって近況報告をしたりする。

LINEグループが動き出したのは、そのうちの1人、ささみ(仮名)がこんなことを言い出したからだ。

「クリスマス限定の美味しいケーキをどうしても食べたい」


 私はびっくりした。ささみは、高校時代からとにかくgoing my way かつ、生きているなら何でもいいというサバイバル系ガールだと私はこの日まで思い込んでいたからだ。
 こんなささみは見たことがなかった。気づいたら彼女は、今まで私が見たことがないほどに計画的かつスピーディーにクリスマス会の段取りを決め、みんなが集まれるように幹事をした。そして、1人県外にいて来ることができないピーマン(仮名)には、「クリスマス仕送り」をしようと提案したのだ。他の友達も乗ってきて、当日は何食べるだの、仕送りに何を入れようかと決めるのに盛り上がった。

 私は、この時、ささみがとても幸せそうに見えた。
ケーキこれにする?ピザは?チキンは?とか、クリスマスっていう行事に乗っかって、楽しみを自分で作っている。それは、なぜかその時の私をすごく安心させてくれた。こういうの、最近少し忘れてたなあ、とも思った。
 そして、当たり前かのように、ささみがいいなと思ったもの(とびきり美味しいケーキ)をみんなに提案してくれるのを見ることができる自分は、とても幸せだなあと心の底から思った。


 大学3年生。冬。12月。嫌でも卒業後が目にちらつく。
「生きるのって、もしかしたらそんなに簡単なことじゃないかも…」そんなことを思うようになってきて、正直焦る。自分で選んだその日その日の選択が、本当によかったのかなんてさえ考えてしまって鬱々としてしまう時が増えていた。

 でも、ささみのおかげで、自分はすごく幸せだなと思えた。だって、こんなかわいい願い事が詰まった集まりを開こうなんて言ってくれる友達に、私は恵まれている。


 私も、何気なく友達に、こんなワクワクするお誘いをしてみたい。

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